005 規格外
青髪ショートヘアの女性は、柔らかな口調とは裏腹に苛烈なことを言う。
「強くなければ、ヒトに非ずってことですか」
「それがMIH学園ってところだよ」青髪ショートヘアの女性は言葉を区切る。「でも、貴方の溢れんばかりの魔力から察するに、強さは持ってるようだね」
ジョンもフロティーも、シズクの魔力が凄まじいと評価した。なぜかは分からないが、少なくともそれは確定事項らしい。
「さて、魔力を計ろうか」
青髪ショートヘアの女性は、ギアヘッドみたいな道具を机から拾う。それをシズクの頭に載せ、キュイイイン……という音が頭を駆け巡る。
すると、
「へぇ……。やっぱり、うちの見立ては当たってたか」
ギアヘッドをつけて数秒後、青髪の女は驚嘆したような態度だった。彼女は続ける。
「ランクA以上は確定だね。うまくいけば、ランクSになれるかも」
「ランク?」
「MIH学園は〝ランク〟で生徒を評価する。それは、DからAまで。極稀にランクSが現れるけど、それに適合した者は滅多にいない。基本的に、ランクAが最上位だと思って良いよ」
「そうですか」
「淡白な態度だね。普通、ランクA指定されれば大喜びするのに」
「目立ちたいわけじゃありませんからね」
青髪女は、フッと鼻で笑う。
「いろんな意味で規格外だね。MIH学園は目立たがり屋ばかりだから、ランクAなんて知ったら〝下剋上〟を狙って大量の生徒に狙われるよ」
「面倒ですね」
「まぁともかく、ランクAで編入だね。ただ、A指定されるには学力が必要なんだよね。ほら、ここ一応学校だからさ」
「勉強はからっきしできないですけど」
シズクは勉強ができない。中2のときの内申も、2から3をウロウロしているくらいには。
「そこは特例ってことにしておくよ。君ほどの才能が、ランクBで終わるのはもったいない」
「……先生、何者なんですか?」
「うち? 昔ランクAだった不登校児さ」
「失礼ですけど、不登校でもランクAになれるんですか? 学力が必要なんでしょ?」
「学校から送られてくるテストを受けてたら、Aに相当するものだと思われたらしい」
「ほへー。なら、国から〝栄養費〟を貰ってたと」
「そうだね。ま、昔の話さ」青髪ショートヘアの女はフッと笑う。「後期入学組は、3日後に通学することになるので、準備しておいてね」
「分かりました」
こうして、シズクはランクA──実質的な最高位評価でメイド・イン・ヘブン学園へ足を踏み入れることとなるのだった。
*
「シズク、評価どうだった?」
「ランクAでした」
「は?」
ジョンの家に帰り、フロティーが何気ない世間話をしてきたので事実を言ったら、彼女は眉間にしわを寄せた。
「おいおい、あたしだってランクBなんだぞ。いくら魔力量が凄まじいとはいえ、異例中の異例だぜ?」
「そんなこと僕に言われても」
「だいたい、アンタ〝新魔術〟も持ってねぇだろ? 学力だって、ランクAに相当するのかよ」
「学力は、青髪の先生いわくなんとでもなるって」
「青髪の先生……ホープ先生か。ほんわかしたヒトだけど、とんでもねぇことしたな」
「ところで、新魔術ってなんですか?」
「話すと長くなるけど、良いか?」
「良いですよ」
フロティーは淡々と語り始める。
「このアンゲルス連邦共和国には、大きく分けてふたつの魔術軸がある。ひとつは〝旧魔術〟で、もうひとつが〝新魔術〟だな。旧魔術はその気になればいくらでも身につけられるけど、新魔術は個人につきひとつだけ。新魔術の強度によっちゃあ、小国ひとつ滅ぼせるくらいのもんもある。父ちゃんの術式がまさにそうだな。父ちゃんの弓矢術式は、アンゲルスどころかアメリカの総軍と闘っても勝てるって話さ」




