010 幼女シズクVSランクAルーサー
「そうかい。まぁ、いくらランクAといってもオメェは9歳の幼女。おれに敵う道理は……ねェんだよ!!」
ルーサーは、目で捉えられないほどの速度でシズクとの間合いを狭めた。それと同時に、彼はシズクの腹部に右拳をねじ込ませる。
「グッ!?」
シズクは膝をつく。今にも吐き出しそうな痛みが、シズクの小さな身体を襲う。
「友だちを傷つけるヒトは許せねェ、か。なら、相応の実力を身に着けろよ。そうじゃないと、なーンも守れねェぞ?」
膝をつき、今にも倒れ込みそうなシズクだが、それでも気合だけで起き上がる。
しかし、起き上がれば再びルーサーの攻撃がやってきてしまう。彼の動きが全く見えない以上、防御しようもない。
防御体勢に入れないシズクは、またもや鈍痛の走る拳を喰らう。ゲホゲホッ、と咳き込みながら、シズクは呼吸もまばらになっていく。
(なんとかして反撃しないと……)
相手の移動は見えない。だが、ルーサーは確実にシズクへ詰め寄ってくる。その間に、腕へまとった氷の腕で反撃するほかない。
「さて、トドメを差すかね……!!」
──来るッ!! シズクは一か八か、乱暴に腕を振る。
そうすれば、
シズクの拳がルーサーの頬をかすめた。
「……へェ。サンドバッグで終わるつもりはねェと」
三たび攻撃を喰らってしまったが、ルーサーについに攻撃が通った。ルーサーの頬に拳が当たったので、彼は口から血を垂らした。
「だがよォ、もう限界じゃねェか? オメェ、口と鼻から血ィ大量に流れてるぜ?」
「そうかもしれないですね。けど、貴方にもダメージは通っているはずだ」
「口からちょっと血垂らしたくらいで?」
「えぇ……!!」
シズクは、先ほど不良生徒に行ったように地面をスケート場のように凍らせる。ツルツル滑る地面には、相手の足を凍らせる機能も備わっているはずだ。
「足を凍らせて動けなくするつもりかい? 悪くない作戦だが……こうやって空ァ飛んじまえば関係ねェよな」
その宣言通り、ルーサーは空へ跳ねた。これでは足を凍らせられない。
しかし、いつまでも空へいられるわけではないだろう。確証なんてどこにもないが、そう思わなければ正直勝ち目がない。
「ま、そろそろ授業が始まるんで、さっさと終わらせるぞ」
ルーサーは、あくまでも余裕たっぷりだ。さながら余興を楽しんでいるように。
ただ、その態度は当然でもある。同格のランクAとはいえ、シズクにとってはこれが初の戦闘。対してルーサーは、それなりに戦闘をこなしてきただろう。万が一にも負けるわけがない。その余裕が、態度に現れているのだ。
そんな最中、
シズクの脳内に、ある妙案が浮かぶ。もしもうまくいかなければ負けるが、うまくいけば勝てる。まさにギャンブルである。
「……マジか」
ルーサーは、らしくもなく力ない声を漏らす。
腕にまとった氷を、シズクは野球ボールでも投げるようにルーサーに放る。それは、ひとつひとつが相手を凍らせるに充分な威力を持つ。その氷のボールを、シズクは利き腕の右手で
投げまくる。パリンパリンッ、と氷ボールが乱暴に投げられ、ルーサーは慌てて地面に戻る。
だが、それこそが狙いだった。今、地面はスケート場のように凍っている。足が触れれば、それが凍ってしまうのだ。
そして、
ルーサーの足が凍る。彼の足に凍傷の痛みが走る中、シズクは幼女らしい淡白な声で言う。
「自分が実力者だと思ってるヒトは、案外寿命が短いのかもしれませんね……!!」
「クソがァッ!!」
シズクは、足が凍ったルーサーに対し、氷のボールを放り投げる。
そうすれば、ルーサーの身体は凍ってしまうのだった。




