第94話:攻略開始
ゴーレムの巨腕が振り回されるたび、地下大空洞に轟音が響いた。
「レオン、バルド! 前線を維持しろ! ガルドが動ける隙を作るんだ!」
俺は仲間たちへ声を張り上げた。
肩関節の動きが鈍る瞬間と、中央装置の魔力変動。その二つには関係があるかもしれない。
だが、まだ分かったのはそこまでだ。関節の金属部材が何のために取り付けられているのかも、中央装置の魔力がどのようにゴーレムへ伝わっているのかも、確かめられていない。
今は、危険を冒してでも現物を調べる必要があった。
「レオン、バルド、シィ! ゴーレムの攻撃を誘導し、ガルドが肩関節へ近づける隙を作ってくれ! 無理に攻め込む必要はない。退避できる場所を確保することを優先しろ!」
「おう、任せとけ!」
レオンが大剣を構え直し、バルドも力強くうなずいた。
シィは壁際からゴーレムの動きを見据え、二人が退避できる方向を確認する。
「次の攻撃を誘導する。二人とも、支柱との距離に気をつけて」
「分かってる!」
レオンが短く応じた。
「ガルドは、前線が作った隙を見て肩関節の構造を確かめてくれ。ただし、危険だと判断したらすぐに離れろ。無理に部品を動かす必要はない!」
「分かった。まずは現物を見極める!」
ガルドは目打ちを握り直し、壁際からゴーレムの右肩を見定めた。
「ミリス、リゼリア! ゴーレムの動作と中央装置の魔力変化を引き続き観測してくれ。ガルドが関節に近づいたときも、変化が起きるか注意してほしい!」
「承知しました!」
「分かったわ!」
ミリスは干渉針を構え、床面を走る導線へ意識を集中させる。リゼリアも魔力の流れを追い、ゴーレムの動作と中央装置の反応を照らし合わせる準備を整えた。
「リィネは安全な位置から、ガルドが確認した部材の形状や規格を、手帳にある記録と照合してくれ。ミリスとリゼリアの報告も整理して、分かったことをすぐに共有してほしい!」
「はい、クロノ様!」
リィネは手帳を開き、これまでに調べた特注継手の形状や規格についての記録を確認した。
「クロノ様、以前の調査記録との照合はできます。ただし、形状が似ているだけでは同一の部材とは断定できません。ガルドさんが確認した特徴と、一つずつ照らし合わせます」
「頼む。分かったことと、まだ分からないことを混同しないでくれ」
「承知しました!」
俺は仲間たちを見渡した。
前線が攻撃を引きつけ、その隙にガルドが関節を調べる。ミリスとリゼリアは魔力の変化を観測し、リィネが物理的な特徴と既存の記録を照合する。
それぞれの観察結果を突き合わせれば、単独では見えなかった仕組みが分かるかもしれない。
ただし、中央装置の側面にある後付け部材については、まだ慎重に扱う必要がある。
(……前世の妄想ノートに書いた『緊急排熱弁』。あの開口部が同じ役割を持つものなら、後付け部材が魔力の流れを変えている可能性がある。だが、構造が同じだと決まったわけじゃない。今は、確認できることから確かめるしかない)
ゴーレムを力任せに破壊することも、中央装置の部材を安易に取り外すこともできない。
まずは守護者の構造を調べ、装置の異常との関係を探る。
それが、今の俺たちにできる最善の一手だった。
「よし……攻略を開始する!」
俺の声を合図に、仲間たちが一斉に動き出した。
レオンとバルドがゴーレムの正面へ踏み込み、攻撃を誘導する。シィは二人の位置と退路を見極め、危険が迫れば即座に声を飛ばせるよう身構えた。
その動きに合わせ、ガルドが壁際から慎重に機をうかがう。
ミリスとリゼリアは魔力の流れを追い、リィネは手帳を開いて、これまでの記録と新たな観察結果を照合する準備を整えた。
重い足音を響かせて襲い来る古代の守護者。
その背後で、不気味な黄色い光を放ち続ける中央装置。
まだ誰も、ゴーレムを確実に止める方法も、中央装置の異常を安全に解消する方法も知らない。
それでも、仲間たちの観察と判断を一つずつ積み重ねれば、突破口を見つけられるかもしれない。
暗闇の地下大空洞で、八人が連携して突破口を探る攻略作戦が始まった。




