↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の妄想が、なぜか異世界で本物になっていた  作者: 砂利天
第3章 王都地下に眠る循環陣
PR
84/117

第83話:結集する八人

雨上がりの風が吹き抜ける、クロノ・ヴェールの拠点。

部屋の中央に置かれた作業台の上に、一枚の大きな王都全図が広げられていた。


地下から戻ったガルドとシィの報告を静かに聞き終えたバルドが、腕を組んで深く頷いた。


「……なるほどな。敵の幹部は『誰かが箱を触った』って微細な違和感を一瞬で見抜いてやがったか」

「……いや」


俺は首を振り、台の上の地図へと視線を落とした。


「たぶん、あの幹部は箱そのものを見たんじゃない。いつもと違う場所にあることに気づいたんだと思う。僕たちが地下でノードを切ったせいで、予定外の補給が発生した。そのせいで作業員が箱を動かして、古い押し跡からわずかにズレたんだ」


俺の言葉に、ガルドが短剣の柄をポンと叩いた。


「なるほどな……。現場のわずかな配置の変化まで頭に入ってやがるのか」

「ええ。属性の偏りや資材の動きですが……」


奥の棚から厚い帳簿を持ってきたリィネが、真剣な眼差しで口を開いた。


「ガルドさんたちが特定した中継点を経由している部材ですが、過去二か月、小口の取引で別々に購入されています。……ですが、それらは一つの現場だけに運ばれた記録ではありません」


そこへ、リゼリアが薄い羊皮紙を取り出し、王都全図の上に静かに重ね合わせた。

リゼリアが指先に微かな魔力を通すと、羊皮紙がすっと透明に透け、その表面に描かれた幾重もの『地脈』と魔力流路のラインが、下の王都の区画とぴったり重なり合って浮かび上がった。


北東の旧大聖堂。南西の旧水路。そして、北西の廃貴族邸。

羊皮紙に浮かぶ魔導回路の歪みと、リィネの持ってきた仕入れ記録を交互に見つめていた俺の頭の中で、バラバラだった点と点がついに一直線に繋がった。


「……待ってくれ。これ、三つとも別々に作ってるんじゃない」

「どういうことだ、クロノ?」


レオンが身を乗り出す。俺は透明な羊皮紙に示された三箇所を指で叩いた。


「一つの巨大な構造を、三つの場所に分けて作ってるんだ。地下の施工場所ごとに、必要な部材をセットにして中継点から振り分けている」

「なら、一箇所だけ潰しても意味がねぇな」


バルドが険しい顔で呟く。


「一つの拠点を抑えても、残りの場所で施工を強行されるか、別のノードへ魔力を迂回させられるだけだ。それに……三つとも同時に工事が進んでいる可能性がある。潰すなら、三つの拠点を同時に抑えるしかねぇ……だが」


バルドの視線が、地図の上の三つの地点を巡る。


「一箇所ずつ順番に調べる時間的な猶予はねぇ。かと言って、三箇所を同時に調べるには戦力も手も足りなさすぎる」


一箇所ずつでは間に合わない。だが、分散するには手が足りない。

重苦しい沈黙が落ちかけたその時、レオンが事もなげにニヤリと口端を上げた。


「なんだ、簡単な話じゃねぇか。三つ同時に行けばいいだろ」

「……人数、足りる?」


シィが短い呟きを漏らす。俺は部屋の中を見回した。


ガルド、シィ、バルド、レオン、リィネ、ミリス、リゼリア。そして、俺。


「……足りる。今の俺たちは、八人いる」


俺の言葉に、全員の視線が俺に集まった。

単なる人手ではない。それぞれ異なる専門領域を持つ八人が揃っている今だからこそ、三隊に分かれた同時攻略が可能になるのだ。


「班を分けよう」


俺は王都全図を指差し、各々の職能に合わせた編成を提示した。


「まず、北東の旧大聖堂。ここは巨大な古代魔導装置が存在する場所だ。ミリス、リゼリア、ガルド。三人で向かってくれ」

「わかりました。魔導回路の解析と装置の制御は私とリゼリア様で引き受けます」

「おう。古い構造や物理的な固定具の解除は俺に任せろ」


ミリスとガルドが即座に頷く。


「次に、南西の旧水路。敵の作業現場と警備が直接交差する危険なエリアだ。バルド、レオン、シィ」

「おう。撤退の判断と地下の安全確保は俺が仕切る」

「敵の動きは任せて」

「へっ、派手に暴れ甲斐がありそうだな」


三人は、それぞれの役割を確認するように頷いた。


「そして……北西の廃貴族邸」


俺は王都全図の北西に記された印に目を落とした。


「ここは、まだ詳しい現地状況が分かっていない。……俺とリィネで担当する」

「はい。地上の仕入れ記録と資材の運搬経路を照合し、現地での不自然な搬入ルートを割り出します」


リィネが力強く頷く。非戦闘員であるリィネの分析力と、俺の現場での推測。地上の『ハブ』から追う俺たちだからこそ担える役割だ。


王都全図の上に、三つの班が書き込まれていく。

誰も、自分の役割について異論を挟まなかった。


バルドが腕を組み、力強く頷く。


「……決まりだな。準備はいいか」

「「「応!!」」」


夕闇が王都を包み込み、雨上がりの夜の気配が迫っていた。


レオンたちは南西へ。

ミリスたちは北東の旧大聖堂へ。

そして俺とリィネは、北西の廃貴族邸へ。


王都の三つの地点へ向けて、八人がそれぞれの道を進み始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。