↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の妄想が、なぜか異世界で本物になっていた  作者: 砂利天
第1章 闇の組織、始動
PR
16/118

第15話:搬出ルートを追って

その日の夕方。実家の手伝いを終えた俺――クロノ・アルヴァースは、いつものボロ倉庫で黒ローブをバサバサとなびかせて腕を組み、うーんと考えていた。


「うーん……昨日の南地区の保管庫で見つけた『搬出記録』。あそこから荷物がどこへ運ばれたのか、地道に街の業者をしらみつぶしに探すしかないかなぁ……」


俺が格好つけて顎に手を当てていると、古びた扉がギィと開いた。


入ってきたのは、外套のフードを深くかぶった銀髪の『情報屋の少女』だ。

彼女は俺たちの前まで歩み寄ると、小さな羊皮紙のメモをテーブルへ淡々と置いた。


「……調べておいたわ」


俺は目を見開いた。


「えっ!? もう!?」


「たまたま手が空いてたから、ついでに追っただけよ。……今回は情報がかなり込み入ってるから、銀貨四枚。……買うの、買わないの?」


「買う! 速攻で買う!」


俺が銀貨四枚を手渡すと、少女は受け取ってポケットに仕舞い、冷めた声で淡々と説明を始めた。


「南地区の保管庫から出た荷物は、一度、西地区の古い木工工房へ運ばれてるわ。そこで別の平凡な荷車に積み替えられて、王都の外周方面へ向かっていく」


俺は目を輝かせた。


「すごいな情報屋! じゃあ、その積み替え先の工房に行けば本拠地が分かるのか!?」


だが、少女は小さく首を振った。


「そこまでは分からないわ。荷車は王都の外周に向かったところで足取りが消えてる。……そこから先は、まだ追えてない」


「そっか! なら、まずはその積み替え場所の木工工房を見に行こうぜ!」


レオンハルトが感極まったように紫紺の瞳を爛々と輝かせ、深々と頭を下げた。


「……お見事でございます、ボス。あえて未確定の最終目的地を深追いせず、敵の物流経路の中継点そのものを確実に押さえるお心づもり……! 敵の補給線を根元から断つ、完璧な作戦にございます!」


(いや、途中の場所の方が手掛かりがあって見つけやすそうだからだけど!?)


俺たちは西地区の工房へと向かった。


 ◇


――同時刻。王都郊外、地下のアジト。


松明の炎が揺れる石造りの部屋で、『漆黒の導師』の男たちが集まっていた。


仮面の男が、冷たく重い声をひびかせる。


「……南地区の保管庫が調べられた以上、奴ら『クロノ・ヴェール』の次なる狙いは明解だ。我が組織の物流ルート……その『中継点』を狙ってくる」


手下の男が緊張に息をのんだ。


「で、では……西地区の木工工房にも、奴らの手が伸びるおそれが……!?」


「当然だ。……だが、今度の敵は我らの配置すら見抜く『古代の怪物』。普通に待ち伏せすれば、またしても裏をかかれる。……奴らは我々の動向を密かに監視し、尾行している可能性が高い。……監視役を周囲に配置し、奴らの『尾行』を警戒せよ!」


本物の悪党たちは、クロノ・ヴェールが自分たちを密かに尾行し、動きを完璧に察知しているのだと誤解し、過剰な警戒態勢を敷いていたのだった。


 ◇


夜の西地区。古びた木工工房の周辺。


黒服の監視役たちが、物陰から周囲の路地に鋭い視線を走らせていた。


「……警戒を怠るな。必ず近くに『クロノ・ヴェール』の影が潜んでいる……」


男たちが手に汗を握り、ピリピリとした緊張感に包まれていた、その時――。


少し離れた大通りを歩いていたクロノは、ふと立ち止まり、夜空を見上げた。


(……あ。あっちの石橋、月明かりが川面に反射しててめちゃくちゃキレイじゃん……!!)


厨二心が激しく揺さぶられた。

普通に工房へ向かうより、あの綺麗な石橋を渡り、月光を浴びながら川沿いの路地を歩いて向かう方が、圧倒的に「闇の組織のボス」っぽい!


クロノは即座に指をさした。


「レオン。工房へ直行するのはやめだ。あえてあっちの石橋を渡って、川沿いから回り込もう!」


レオンは目を見開いた。


「……! ……あえて遠回りの水上ルートを選ぶことで、我々を尾行しているであろう敵の視線を完全に撹乱されるおつもりですね……!?」


(いや、ただ月明かりの川沿いを歩いた方がカッコいいからだけど!?)


クロノたちは呑気に寄り道をし、川沿いのロマンチックな夜道を歩き始めた。


一方――工房の周りを監視していた敵の監視役は、遥か遠くの川沿いを歩く黒ローブの影を遠目に発見し、顔を蒼白にした。


「……な、なんだと……!? 奴ら……我らの監視網を嘲笑うかのように、大きく迂回して川沿いを進んでいる……!?」


「ば、バカな……! 我らがこの場所に潜伏していることを察知し、あえて『尾行を撒くふり』をして我々の配置を揺さぶっているというのか……!?」


「退け! 奴らはすでにこちらの配置を完璧に把握している! 下手に動けば一網打尽にされるぞ……!」


男たちは慌ただしくその場を離れていった。


 ◇


数分後。

川沿いの散歩を満喫して工房の前に到着したクロノは、ぽかんと口を開けていた。


「……あれ? 誰もいないじゃん」


せっかく考えた「川のせせらぎと共に現れるボス」の登場ポーズも虚しく、拍子抜けするクロノ。


レオンは感無量といった様子で頷いた。


「……見事な撹乱にございます、ボス。我々がルートを変えただけで、敵は尾行を悟られたと勘違いし、恐怖して退散いたしました!」


「いや、マジでただ川沿いを歩きたかっただけなんだけど!?」


ガックリと肩を落としつつ、工房の敷地内を調べる三人。


そこで、物陰から静かに同行していた情報屋の少女が、崩れた荷車の車輪の横から、一枚の古い運送伝票を拾い上げた。


「……これ」


差し出された伝票には、奇妙な『蛇の刻印』と共に、王都の外にある『大商人ヴァルカの交易商会』という文字が残されていた。


「……変ね。この蛇の印、単なる闇組織のマークじゃないわ。王都の表社会で名を知られた大商人……ヴァルカの商会と取引があるみたい」


「えっ!?」


(うわぁぁぁ! 闇の組織だけじゃなく、表社会の大商人まで絡んできたー!)


少女は伝票を見つめ、静かに呟いた。


「……この商会、少し調べてみるわ」


そして、背を向けて静かに歩き出しながら、振り返らずに短く告げた。


「……次の『大商人ヴァルカ』についての情報、知りたかったらまた買いなさい」


「おう! 絶対買うよ!」


「……そう」


少女はそれだけ言って、夜の闇へと消えていった。


クロノは手に入れた伝票を握りしめ、ニッと笑った。


「よし! 次は大商人ヴァルカだ!」


「「ハッ!!」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。