79 慣れすぎたかな
誤字報告いつもありがとうございます。
「ご主人よ、狩りのついでに階段を見つけておいたぞ」
「マジで? じゃあ96階層はどうしようか…」
「階段が見つかったというならば進んでも問題はないじゃろう、マッピングしてもいいのじゃが今は100階層の転移陣とケルベロスを探す方が先決じゃと思うが?」
「それもそうだな、俺もそろそろ日光浴したいし」
「日向でのお昼寝は気持ち良いよね!」
なんとグレイが狩りの最中に偶然にも97階層へと降りる階段を見つけたという、どこまで狩りに行ってたんだと思うけどナイスだと言わざるを得ないね。
まぁケルベロスについてはいるかもしれないっていうだけで、実際いるのかは分かっていない。いれば狩る! そして毛皮を落とせ! という欲望が生み出しただけの想像でしかないって事だが。
夕食を終え、俺以外は各自武器の手入れをして就寝した。
翌朝、グレイに引きつられて見つけたという階段目指して歩き出す。グレイは走りながら狩りをしていたという事で、階段までの距離はそこそこあったが2時間ほどで到着。
「いや、案外近くにあるんだな…」
「そうじゃの、普段はマッピングしながら端から順に進んでおるからのぅ、時間もかかるもんじゃ」
「まぁね。じゃあサクっと進んでしまおうか」
「うむ」
97階層へ侵入。
また広いエリアの探索となるが、いつもの事だと割り切っていこう。普通であれば、ダンジョン内では気も抜けなくて緊張の連続なんだろうが、幸い俺達にはアイシャという索敵上手がいるからね! 俺がポヤポヤしていても全然問題は無いんだよ。でも毎日が勉強であり鍛錬であると思って頑張っているわけさ!
「あ、ご主人様! 四足歩行の魔物がいるけどオルトロスよりも重そうな足音が聞こえるよ!」
「オルトロスよりも重いじゃと? ではいよいよケルベロスのお出ましかもしれんな」
「ほぅ、オルトロスでは歯ごたえを感じられなかったからちょうど良いな。アイシャ、そいつはどこにいる?」
「そろそろ見えてくると思う」
グレイがギラリと目を輝かせ、前方を睨みつける。いつもの戦闘陣形となり、後方からもクローディアの圧がビシビシと感じるわけなんだが… クローディアまでやる気を出し過ぎだろう! あまり俺にプレッシャーをかけないでくれ!
「む? アレがそうか? どう見ても双頭なんだが確かに今まで出てきたオルトロスよりも大きいかもしれんな」
「ふむ、上位種というほどでも無さそうじゃな。せいぜいリーダー的存在のオルトロスかもしれん… 何なら私が倒そうか?」
「いや、俺がやる」
「全く… この陣形じゃと私に出番が来んではないか。少しは平等に戦果を分かち合おうと思わんのか? グレイよ」
「ぐぬ…」
「昨日主に自由時間をもらって息抜きをしたのではないのか? ここは順番で良いじゃろう」
「それを言うならクローディアも息抜きをしただろう。だがまぁ良い、順番だな?」
「うむ」
しかしまぁアレだ、戦いたがりの2人で困ってしまうが何とも頼もしい限りだな。まぁオルトロスですら単独で狩れてしまうってところでお察しなんだが味方が強すぎる! これだとミスリル集めの時もコカトリスが相手なら物足りないとかその内言ってきそうだな… 何か考えないといけないかも。
なんて考えていると、グレイが大きめのオルトロス目がけて走り出していた。オルトロスもグレイに気づき、牙を剥きながら向かってきているが… やはり俺にとってはオルトロスは強い魔物だな。牙を剥きながら発してくる圧に体が硬直してしまいそうだ。
「ガァァ!」
オルトロスが吼えながらグレイに飛び掛かり、死の大きな爪で殴りかかってくる。グレイは回避もせずに大剣でその爪を受け止め、重そうなオルトロスの全体重すらも受け止めつつ押し返す。
「グルルルル…」
「なんだその軽い攻撃は? もっと本気で来い!」
おおう、グレイがなんだか白熱しちゃってるよ。まるで出来の悪い後輩を指導しているかのように余裕をもって相対しているように見えるが… ちょっと舐めすぎな気もするな。
俺の目で見ると怪獣大決戦のように見えているが、グレイは大して反撃もせずに攻撃を受けたりいなしたりと防御姿勢だ。魔物討伐が順番だとさっき言っていたから、この大きなオルトロスで戦闘を堪能しようとしているのかもしれないな…
「グレイよ、いつまで時間をかける気じゃ! あまり主を待たせるな」
「む?」
「む? ではない! 100階層まで急ぐと言ったじゃろうが」
「そうだったな…」
クローディアが発破をかけると攻めに転じ、ばっさりと大剣でねじ伏せてしまった… なんだ、やっぱり余裕だったか。
うーんなんというか、これはまさかのマンネリ化しているのかな? どのフロアについても何気に容易く攻略してしまうこのメンバー、確かに巨大スライムには勝てる要素が見つけられずに撤退して部屋の外から攻撃したが、それ以外では苦戦らしい苦戦は全然していないかも… グレイがゴーレム相手に時間をかけてもクローディアがすぐさま殲滅したしね。物理耐性のある敵はいたけど魔法耐性のある魔物はいまだに見ていない気がする…
まぁなんだ、日本にいた頃にもよく言われていたが、何事も慣れてきた頃に事故は起きるもんだ。ちょっと気合の入れ直しを計った方が良いのかもしれないな…
「クローディア、自分の力に自信があるのは良いんだけどちょっと油断が過ぎると思うんだ。気持ちを切り替えたいと思うんだけどどうしたらいいと思う?」
「うーん、まぁ私も少々気になっておったところじゃ。アイシャはいつも一生懸命だけどグレイがな… 最近魔物を舐めすぎてやしないかと危惧しておったのじゃ。
それでどうじゃ? いっその事グレイにはコカトリスの肉だけ食わせて、主のバフを一度完全に切ってしまったら反省するのではないかと思うのじゃが」
「ちょっと待ってくれ! ご主人の飯が食えないなんてさすがにそれは罰が重いんじゃないのか?」
「グレイが舐めた戦い方をするからじゃろう。戦闘訓練などミスリルゴーレムを狩る時や自由時間にいくらでも出来るじゃろう? わざわざ先を急ぐ時にやるからじゃ」
「分かったご主人、確かに弱い者を相手にしてるとふざけた戦いをした自覚はある。反省する! だから飯だけは…」
「ああ… まぁ次やったら飯抜きな、それだけ覚えておいてくれ」
「うむ! 任せろ!」
これもテコ入れになるのかな? まぁ真面目にやってくれるなら俺はこれ以上とやかくは言わないよ。舐めプだけはね… 何が起こるか分からないんだから止めて欲しかっただけだから。
そんなわけで、先へと進むことになった。




