80 リャンシャンでのアレコレ
誤字報告いつもありがとうございます。
ヒビキ達がダンジョンを進んでいる頃、はた目から見れば難民かと思うほど大勢の人間たちがリャンシャンの街に到着した。その人数は軽く200人を超えており、一体何事かと門兵は慌てふためいていた。
SIDE:元ゴーマンレッド王国宮廷魔術師団長
「ようやく着いたな、ここがリャンシャンの街か」
元宮廷魔術師団師団員80名とその家族達、約200人での移動は本当に疲れるものだった。まぁ半数以上の師団員が縁戚などを頼りにアキナイブルーの王都に向かったが、自分を含めて80名は魔法の研鑽を求めてダンジョンに来る事となった。
「しかし… 門兵がすごい顔をしているな、まぁ分かるが」
「そうですね師団長、いきなりこの人数では驚かれるのも仕方がないかと」
「とりあえず街に入れてもらわないとな、野営続きで疲労もたまっているだろうし」
「宿は… きっと足りないでしょうね、どうしますか?」
「それは仕方のない話だ、見張りをしなくて済むんだから空いてる土地にテントを立てるしかあるまい。空いてれば良いんだがな」
心配事はまだあるが、とりあえず休息をとるために街へと入れてもらおうじゃないか。
「随分な人数で来たんだな、難民というわけでもあるまいし… この街に来た理由はなんだ?」
「ダンジョンに入るためだ。そのメンバーと家族も来ているのでな、こんな人数になってしまったという訳だ。一応聞くが宿は何軒あるんだ?」
「宿泊費はピンキリだがここはダンジョン都市だ、50軒以上はあるぞ」
「50軒か、ならなんとかなるかもしれないな。入っても構わないか?」
「ああ、身分証の提示を」
さすがにゴーマンレッド王国で発行された身分証は使いたくなかったから、ここに来る途中にあった街で登録したギルドカードを差し出す。
「一応聞くが全員身分証はあるんだな?」
「もちろんだ」
「じゃあ人数が人数だし、アンタが代表という事で受け付けよう」
「助かる」
ふむ、割と話の分かる門兵だな、ゴーマンレッドの王都であればこうもいかない。あの国は王の怠惰と傲慢が部下にも伝染しているからか、まともに仕事をするやつは少ない。賄賂を渡せば別なんだが… とりあえず入って良いというのだから入ろうではないか。
ゾロゾロと大人数で街へと入る。このままダンジョンの視察に行きたいが、さすがに疲れの方がな… 俺でこうなのだから普段あまり動かない家族達はもっと疲れている事だろう、休息一択だな。
全員が入ったのを確認したので師団員を集め、今後の行動について話をする。
「とりあえずここからは各自家族ごと、もしくはグループでの行動とする。宿もそれぞれで頼む。今日はこのまま休息とする予定だが、今日一日で疲れが取れない場合は無理はするなよ、ダンジョンで死ぬ事になる」
「了解しました。師団長はどうするんです?」
「俺も当然休む、それからもう俺を師団長と呼ぶな」
「了解しました!」
ゾロゾロと各自宿を探して行動を開始していく、俺も休む場所を確保しないとな。幸いというか俺には家族がいない、安心のソロ活動だから多分どこでも宿が取れるだろう。別に安宿でも構わないからな。
「さて、俺も今日は酒でも飲んでぐっすりと休むとしよう。出来れば明日から活動したいしな」
国を出て数ヶ月、第二の人生というにはかなりしょぼい気がするけどあのまま駒のように使われるだけの人生よりは良いはずだ。これからは日々の糧をダンジョンで賄わなければいけないが、魔法の練習を魔物に対してするだけだ。日々研鑽しながら安定して稼げるようにならないと、俺についてきた部下達やその家族に偉そうな口はきけんからな… 気合を入れないと!
こうして新たな生活に期待を寄せるのだった。
SIDE:冒険者ギルドリャンシャン支部、ギルドマスター
「ようこそリャンシャンへ、ナイトグリーン王国コノサト子爵の次男… だったかな?」
「初めまして、コノサト家次男のタケノと申しますが… 本日は勇者様の名代として手紙を預かってきました。まずはこちらをどうぞ」
ふむ、勇者の名代ときたか。まぁこの街に来た理由も分かるし、手紙の内容も恐らく見るまでもない内容だと思っている。
手紙を受け取り蝋封を切る。
内容は… やはりな、このコノサト子爵の次男を含むパーティでミスリルゴーレムを狩れるか試したいと。いや、普通に考えても無理じゃないか? 当の勇者パーティですらロックゴーレムを相手に倒せなくて撤退しただろう、それを騎士とはいえ勇者よりも格下のパーティに倒せる訳がない。
そして危惧していた通りヒビキに関する事も書かれているな… 配下のパーティでミスリル収集が可能であれば魔境に寄こせと、それも無理だと思うがな。
「手紙は拝見した。だがしかし、勇者殿の思い通りにはならんだろう」
「それはどういう意味で?」
「どれほどの精鋭を連れてきたのか分からないが、ミスリルゴーレムのいる階層まで到達する事はできないだろうという事だ」
「しかし例のパーティは突破しているのだろう? どう戦ったのか攻略法を聞き出せば出来ないとは思わないのだが」
「あのパーティにはオーガがいる、そのオーガが鉄の棒で殴り壊したと報告が来ているが… それはオーガの力があるから出来る事であり、人間には厳しいと思う。
そしてロックゴーレムの次はアイアンゴーレムが出る、アイアンゴーレムに対しては魔法で倒したと聞いているが、コノサト殿のパーティにそれだけの火力を出せる魔法使いがいるのか?」
「むぅ… ならば一度そのパーティと合同でアタックし、こちらのパーティも80階層の転移陣を利用できるように先導してくれるよう取り計らってくれないか?」
おうおう、恥も外聞も関係ないと言わんばかりの主張だな。つまり寄生して連れて行ってもらおうって魂胆か、冒険者目線で言わせてもらうとあり得ない相談だな。
「残念だがそれは出来ない。そもそもあいつらは受けないだろうしな」
「なぜだ!? 指名依頼にするかギルドからの緊急依頼にすれば強制的にできるではないか! 何度も言うがこれは勇者様からの命令だぞ!」
「たとえ勇者殿の命令だからといってもな、ナイトグリーン支部ならいざ知らずここはアキナイブルーのリャンシャン支部だ。それにな… あのパーティ、正確にはヒビキという冒険者とその奴隷3人なんだが指名依頼も緊急依頼も出す事ができないのだ、ギルド規約によってな」
「なっ!? それはどういう事だ? リャンシャン支部で特別扱いをしているという事か? そういう事であれば看過できんぞ!」
「いや、そういう事ではない。その冒険者… ヒビキはFランク冒険者だから規定により指名依頼も緊急依頼も受けられないんだよ」
「なん… だと?」




