35 結末と後始末
誤字報告いつもありがとうございます。
「ご主人、いいぞ!」
「よーし、汚物は消毒だぁ!」
開始の合図が出たのでブルーウォーターステッキを振りかぶる。3分の1って言ってたよな… 大体あの辺かな?
横列でこちらに向かってくる冒険者の一団に向かってブルーウォーターステッキを突き出し…
「放水!」
吐水口の口径が10センチくらいだろうか、その太さの水流が高圧で放たれる。
「ぶはっ!? み、水か?」
「がぼぼぼぼ!!」
「それそれー!」
よしよし、予定通り3分の1くらいの集団に放水をぶつけてやったぜ。しかも結構な圧力だったらしく、一部の冒険者が水圧に負けて転んでやがる。
「よし、次は私が撃つ! グレイはまだ出るなよ?」
「分かっているから早くやれ! もう待ちきれないぞ!」
「それっ! 電撃を喰らうがよい!」
ガシャーン!
クローディアの魔法の発動と共に落雷のような轟音が閉塞的な空間に響き渡る… ってかこれうるせぇな!
「「「あばばばば!」」」
きっちり計ったかのように半分近くの冒険者達が感電して動きを止める、そして… 待ってましたとばかりにグレイとアイシャが突撃を開始した。
「フハハハ! 心配するな、手加減はしてやるぞ!」
「ボクも手加減するよ!」
おいおい、手加減アピールをしているつもりなんだろうけど豪快に殴って蹴り飛ばすグレイにモフモフ尻尾が燃えているかのように光っているアイシャ、それだけやって手加減は通用するかな? しないかもしれないぞ? だってギルドマスターが見ているんだから。
「くふふ、お主ら… 体が痺れて動けんのか? 仕方がないのぅ」
「あぐっ、ちょ、ちょっと待ってくれ」
「はぁ~? 聞こえんのぅ」
「や、やめっ!」
怖っ!? クローディアがマジカルステッキを動けない冒険者達の脳天目がけて容赦なく振り落としている… これぞまさに暴力ってやつだ! でもマジカルビームで撃ち抜くって言ってたけど、さすがにそれは止めたみたいだな。
さて、大人しく見ていれば良いとは言われたが… さすがにこのまま何もしないのはなぁ、俺もステッキで叩くかな、クローディアを見ている限り結構ステッキも頑丈そうだしね。
前線ではすでにフーリガンのメンバーが全員倒れている… まぁ倒れていると言っても放水でしりもち着いたままの格好で感電している冒険者も含んでいるんだが、それらを順番に張り倒して回るクローディア。冒険者の頭を掴んで振り回し、果てはそれを武器にして他の冒険者を攻撃しているグレイ。そして先ほどから燃えるように光っている尻尾を振り回し、それでいて戦闘前に見せた笑顔を崩さないアイシャ… 何この状況、やっぱり俺の出る幕なんてないね。
「そ、そこまで! そこまで! おい、もう止めてくれ! これ以上は死人が出る!」
「なんだと? まだまだ生きてるではないか。俺のご主人を貶めようとしたのだ、この程度で済ましたとあれば今後も同じような馬鹿者が出てくるかもしれないぞ」
「そうじゃ、二度と歯向かおうなどと思わないようしっかりと躾けておかないとのぅ」
「ボク、許さない」
「お。おい! ヒビキとか言ったな、お前さんが主人なんだろう? もう止めるように命令してくれよ、これじゃあ犯罪奴隷としても役に立たなくなっちまうぞ?」
うーん、今止めたら却ってストレスが溜まりそうだけど仕方がないか。暴れてのストレス解消はダンジョン内だけで済ませてもらおう。
「よーし、全員戻ってくれ。俺達の勝ちだ」
「むぅ…」
「主よ、少し判断が早いのではないか?」
「…………」
「いいから戻ってきてくれ、聞いてくれないならダンジョンアタックはもう…」
「「「すぐに戻る!」」」
こんな感じで、なんだかあっという間に終わってしまった初めての決闘は圧倒的な勝利であった。
とはいえ、これってもう俺のバフがどうのってレベルじゃないよね? 基本的にオーガも獣人も身体的ポテンシャルが人間よりも遥かに上だったというだけだ。そしてエルフの魔法も大勢の人間を一度に相手に出来る程の練度であったと。
「フーリガンの全滅により冒険者ヒビキの勝利とする! そしてクラン『フーリガン』は本日をもって解散とし、犯罪の捏造と脅迫、その他色々と疑惑があるので罪人として取り押さえるものとする。捕縛せよ!」
ギルドマスターの合図により、予め雇われていただろう冒険者達によってどんどんと捕縛されていくフーリガン。しかもタコ殴りにあってボロボロなのに治療もしないまま… まぁ治癒魔法は高価だというし、わざわざ治療して反抗されてもまずいしね。
「ではヒビキよ、補償とかの話がしたいから俺の部屋に来てくれ」
「補償?」
「そうだ。ぶっちゃけこいつらの狂言のせいで一番迷惑を被ったのはお前さんだろう? フーリガンのクランハウスから武器防具など色々と押収するからそこから補填を出すつもりだ」
「そうなのか… そういう事なら仕方がないね」
鼻息の荒かったグレイ達も落ち着いたようで、ギルドマスターの部屋に向かう俺の後を静かについてくる。
あ、ようやくアイシャの笑顔が普通の顔になった! なんというか感情が表に出ない笑顔ってすごく怖いからね… 普通に戻ってよかったよかった。
「ふぅ… いやしかし、強いなお前さん達は。まぁオーガに獣人、エルフがいるとなれば当然と言えば当然なんだが」
「まぁ確かにみんな強いと思うよ」
「しかもなんだ? 昨日は50階層の素材を持って来たって話じゃないか、たった4人で50階層到達なんて前代未聞なんだぞ?
それでどうだ? 今までの最高到達階層は52階層なんだが… 超えられそうなのか?」
そんな質問をされたが、俺に答えられるわけもない。なのでチラっとグレイを見る。
「む? ああ深度の話か? 52階層であれば次回に潜った時にでも更新できるぞ」
「うむ、主の力があれば容易い事よの」
「そ、そうなのか。というか主の力ってどういう事だ? 何かやっているのか?」
「ギルマスよ、冒険者の手の内を明かせというつもりか?」
「あ~いや、そう言われればそうだな。まぁ純粋に気になったもんでよ、だからそう睨むなよ」
ほほぅ、今の会話を聞く限り、たとえ相手がギルドマスターでもスキルについては黙秘できるって事か。しかしグレイ、もう睨むのは止めてやってくれ。グレイに睨まれると大抵の人はビビると思うぞ。
「さて、話というのはこんなもんだ。まぁあいつらのクランハウスを捜索するのは明日からになる、当然補填の事もそれ以降という事になるがそこだけは了承してくれ」
「分かった。まぁ俺達はダンジョンに入るから次に戻ってきた時かな」
ですよね? ダンジョンに入りたいんでしょ? キミタチは… まぁストレス解消は大事だからね!




