36 噂は遠くへ
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SIDE:冒険者ギルド ナイトグリーン支部ギルドマスター
「おい聞いたか? リャンシャンダンジョンの最高到達階層が更新されたらしいぜ?」
「マジか!? あそこのダンジョンは勇者一行が叩き出した記録だろう?」
「ああ、確か50階層以降からゴーレムが出てきて対処できなくなって引き返したって聞いたが」
「ああ、しかしどんな連中なんだ? その記録更新した冒険者ってのは」
「それがな… なんだか華奢な男と3人の奴隷だっていう話なんだが」
「はぁ? 奴隷3人で何ができるっていうんだよ。荷物持ちでもさせていたのか? いや、しかしそれだと冒険者1人で突き進んだって事になるな」
「その奴隷っていうのがよ、なんとオーガにエルフ、そして獣人だって話だぜ」
「どうなってやがる? オーガもエルフも獣人も簡単に奴隷に出来る種族じゃない上に、買うにしたってどれくらい金がかかるか分かったもんじゃない。それなのに3人も連れていたと?」
「ああ、現地ではボンボンとか坊ちゃんとか呼ばれてるらしいぜ。どこの金持ちなのかは分かってないらしい」
ギルドマスターの護衛依頼から戻ってきた往年の冒険者が、ギルドの受付前で盛り上がっている。
冒険者ギルドナイトグリーン支部は、対魔王の最前線だ。だからというわけではないが、世界中の冒険者の話題というものが常に集まってきているのだ。
「その話、本当なのかい?」
「おっと勇者の降臨か」
「いやいや、話を逸らさないでくれよ」
「あくまで噂だ、確認が取れた話では無い」
「じゃあギルドの権力を使って確認してきてよ。それだけの噂が出るって事はリャンシャンのギルドでは確認が取れてるかもしれないでしょ?」
「まぁそうだな… もしも本当にそれだけの力がある冒険者なのであれば、是非ともうちの支部に来て稼いでもらいたいもんだぜ」
「ああ、この支部にはオーガも結構いるが、あいつらは手を組むって言葉を知らんからな。どうして勝手に… しかも単独で森に入っていくのやら」
「もしも噂が本当であれば、パーティ行動をとれるオーガって事になるのか。そうすると連携もしやすいから戦力としては期待大だな」
「しかしそれだけの奴隷を引き連れている冒険者か… こっちの支部に来てくれと言って素直に聞いてくれるのかが問題だな」
「まぁな… どうしたって癖のあるやつが多いのが冒険者だ、言う事を聞かない可能性もあるよな」
「もしそうなったら僕の名前を出しても良いよ。なんなら勅命にするかい?」
「おいおい、仮にも勇者でありナイトグリーン王国の王子がそんな事をして良いのか?」
「魔王を倒せるなら何でもするつもりだよ。倒せさえすれば… 毎日こんな苦労をして魔物を狩るなんてことしなくて良くなるからね」
「そうか? とても楽しそうに戦っているように見えているが」
「ああ、それにパーティメンバーだって美人揃いじゃないか、全く羨ましい事この上ないね! 王子だからか? 王子だから腕の良い美女が寄ってくるのか?」
「いやいや、彼女達とはそんな関係じゃないよ」
そう言いながらも勇者の後ろには、Aランクであり美女としても名を馳せている女性達が待機している。全く羨ましいこった。
「まぁ確認だけはしておくか、距離があるから往復で1ヶ月といったところか」
「なるべく早くに頼むよ。僕としては早々に魔王をどうにかしたいからさ」
「ああ承知した」
どれ、早速連絡員を派遣するかね。
SIDE:ヒビキ
「ガァァァ!」
グレイが気合と共に振り下ろした大剣が、透き通ったような体を持つ青白い蜥蜴の頭部に当たって一部を砕く。
「グギャァァァ!!」
「グレイどいて! 燃えちゃえー!」
追撃とばかりにアイシャの狐火が蜥蜴に襲い掛かり、その全身を炎に包みこむ。
「トドメじゃ、マジカルビーム!」
たっぷりと魔力の籠ったマジカルビームを受け、その魔物… フロストリザードの巨体はダンジョンに吸い込まれるように消えていった。
よし! これで60階層クリアだぜ!
「ふぅ、中々手ごわい魔物じゃったな」
「そうだね。やっぱり範囲攻撃のブレスが危なかったね」
「うむ、新たな課題が見えてきたな。しかし今後は俺とアイシャで敵視を取り、ご主人の方に向けさせないから安心してくれ」
「いや、バリアがあるから多少は平気だよ。そんじゃ場所を変えて飯にしよう」
「はいっ!」
アイシャが元気良く返事をした。
あのフーリガンとのいざこざからなんだかんだと1ヶ月が経っている。
本当であればあの後すぐにダンジョンに入る予定だったんだけど、一応保険のためにってグレイ用の金棒を探しに街を歩いていたんだよね… そうしたらリャンシャンの街を治める貴族配下の警察的な組織が事情聴取をって事になり、結構な時間を取られてしまったんだ。
その間に例の補填とやらを受け取り、金棒も重さと頑丈さだけを指標に2本購入。それからダンジョンに入り現在に至るというわけだ。
「ご主人、俺はいつものセットで頼む」
「ボクもいつもので!」
「私もそうじゃな… いつものを頼もうか」
「はいはい」
だんだん食べるものが固定化されており、それぞれがお気に入りばかりを食べるようになっているんだよね。しかしグレイだけは相変わらず枝豆コーンサラダ以外を全部という食べっぷりだが。
そして50階層から60階層に至るまでの間に俺のレベルは25になっていた! 50階層到着時にはレベル19だったからね、いかにこの辺の魔物のレベルが高いかを窺わせる。
とはいえグレイ達3人にとってはゴーレムは鈍重な的でしかなくなっており、見つけ次第ボコるという作業のような状態だったため危険はそれほど感じる戦いではなかった。
「しかし何とも不思議じゃのぅ。50階層からずっとゴーレムが出ておったから、60階層のボスもゴーレムかと思っておったが」
「まぁな。しかし途中からがらりと変わってしまったからな… ダンジョンの事は良くわからぬ」
まぁ言われてみればそうなんだよね。50階層までの魔物とか、ゲームでの知識を思い出してもわりかし統一性が見られていたと思うんだけど… 50階層以降については驚くほど突然ゴーレムから爬虫類系に変わってしまったからな。ついでにいえばゴーレムはロックゴーレム以外は出てこなかったし、ゴーレムの別種類はまた違う場所でって事なのかね。




