28 陰謀と新しいステッキ
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:???
「おい、あの連中がダンジョンに入っていったぞ!」
「お、ようやく入ったか。じゃあ後は出入り口で監視をしながら戻ってくるのを待つだけだな」
「ガッハッハ! とは言っても10日くらいは潜ってるんだろ? 余裕じゃないか。そして戻ってきた時には大金とあの奴隷どもが…」
「おっとあまり大きな声で言うなよ? いくら大金をせしめるとはいえなるべくなら分け前は多い方が良い。メンバーの若い連中には少ししか奪えなかったと言って俺達の分を増やすつもりなんだからな」
「クックック… お前も悪だよな」
「お前ほどじゃねーよ、フハハハ!」
赤い髪の男と青い髪の男がカップに酒を注いで乾杯を始める。
「しかし怪我人はどうすんだ? 若い奴の腕でも折るのか?」
「いや、別にそこまでしなくても問題無いぜ。ちょうど今はギルドマスターは街にはいないんだからな、受付嬢程度じゃ俺達の言葉に逆らうなんてしないだろうよ」
「まぁそうだな。俺達もこの街ではちょっとした顔だし、大勢の証言があれば言いくるめるのも楽勝か」
「そういうこった。ああ、あの坊ちゃんは現金どれだけ持っているんだろうな、それが楽しみだぜ」
「まーな。奴隷を売るにしても手間も時間もかかるしな、まぁ売る前にあのエルフと獣人を味見するつもりだが… お前はどっちが良いんだ?」
「あん? じゃあ俺は獣人を味見するが… くれぐれも壊すなよ? 売るんだからな?」
「大丈夫だって!」
クックック、どれだけ嘘に塗れていようと証言者が多い方が勝つんだ。真面目ぶったギルドマスターがいない時にあいつらが来てくれた事には感謝すべきかもしれんなぁ。
しかしあれだけ健康そうな奴隷だ、1人頭いくらで売れるか… まぁ1人500万ゴールドはいけるか。特にオーガの奴隷は高くつきそうだな、ただでさえ戦闘種族で人気があるうえになかなか奴隷として市場に出る事はない。強さに誇りを持つオーガが奴隷になる時は大抵大怪我をして戦闘力が落ちた状態だからな… きっと高額で売れるはずだ。
そして獣人もエルフも奴隷として人気が高い。エルフは見た目だけでは年齢が分からないからなんとも言えんが、あの獣人は良いな! 毛色も良いし若くて元気もありそうだった… く~たまんねぇな!
こうして見張りは部下に任せ、2人は酒を飲むのだった。
SIDE:ヒビキ
「でもさ、ダンジョンの罠って落とし穴ばかりなの? 壁から槍が突き出たり毒ガスが噴いてきたりとかありそうなんだけど」
「む? 壁から槍などという罠は聞いた事が無いのぅ。主のいた世界ではそんな罠が? 怖ろしいのぅ」
「あーいや、なんて言うか… 物語にそういうのがあったから覚えていたんだよ」
なんだ? 魔法はあるし人外種もいるし、ダンジョンもあって転移陣まであるからそういったものもあるかと思ったんだけど… ねぇ? トラップなんていうのは多種多様な仕様で侵入者を阻むもんだから、毒ガスとか転移トラップとかはあるかと思っていたんだがまさか壁から槍で恐ろしいと言われるなんてね。
そしてダンジョン攻略の方が非常に順調だ。アイシャがあちこち動き回って罠を探り、魔物が出ればクローディアが魔法で遠距離攻撃をしつつグレイもそこに飛び込んでいく。本当にグレイの出番が少なくなるほどクローディアがどんどん倒していく… 俺? 邪魔にならないよう立ち回りながら魔石を拾っているけど何か?
「そういえばクローディア」
「む、なんじゃ主よ」
「ギルドで魔石の代金を受け取った時の事だけど、ゴールドって単位は初めて聞いたんだけど?」
「ああ、説明しておらんかったか。銅貨1枚が10ゴールド、銀貨1枚が1000ゴールド、金貨1枚が10万ゴールドとなっておる。まぁ田舎じゃとあまり使われていないから気づかなかったの」
「そっか。じゃあ前回の儲けは48万ゴールドだったから、金貨4枚と銀貨80枚だったって事だな?」
「そうじゃ。冒険者は重くなる金を持ち歩きたがらぬからああしてギルドが預かってくれるのじゃ」
「まぁ確かにね。金貨をジャラジャラさせて魔物の討伐なんてやりたくないもんな」
よかったよかった、これでまた一つ謎が解けたよ。しかし貨幣価値を考えるとアレか、ゴールドだと日本円と同じ価値観で良いのかな? オーラスの街への入場料は銀貨1枚だったし、千円程度の感覚で間違ってないと思う。
後はまぁアレだな… 物の価値が俺の知る物とは違うって事に注意だな、なんせ服に10万とかあり得ないけどこの世界で作るにはそれくらい金がかかると。
まぁせっかくこうして気兼ねなく教えてくれる人がいるんだ、気になったらどんどん尋ねていこう。
こうしてダンジョン探索2日目で45階層に到着したのだった。
ダンジョン探索6日目の多分夕方くらい、ようやっと俺達は50階層に辿り着いた。
途中まで1日2階層進めていたんだけど、下層に進んで行くとダンジョンの内部は複雑化していき、まぁ無理をしないという大義名分のもとじっくりと進んできたのだ。
「それで? アイシャの腹時計では晩飯の時間とのことだけど、どうする?」
「そうじゃの… まぁ腹が減っては最高の力は出せまいよ。飯にして休息の後にボス部屋に入るべきじゃな」
「うむ、すでに俺のレベルを超える魔物しか居ないからな、ご主人の言う通り安全策で良いだろう」
アイシャは… うん、全力で頷いてるね。まぁ晩飯時だと教えてくれるくらいだから腹が減っているんだろうね。
「よし、じゃあそれでいこうか」
いつものようにバリアで回りを囲い、安全地帯を創り出す。そしてこれもいつも通り、大量の各種ハンバーガーがどどんとクリエイト。さぁ食べようじゃないか。
『パンパカパーン! ハンバーガーセットが通算500個目になりました、500回目記念特典でプレゼントがあります!』
うぉっ! しばらく音沙汰がなかったと思えば急に来るなコイツ…
「む? 主よ、ステッキが出てきたぞ!」
「ああ、たった今規定数を超えたみたいだな」
「ふむ、それで? このステッキの効果はなんなのじゃ?」
「どれどれ…」
【イエローサンダーステッキ】
少量の魔力で雷撃を放つ事ができます。目視で狙いを定めてステッキを振るだけの簡単な作業です。雷撃が生物に当たると低確率で麻痺させることがあります。
「という事らしいな。しかしこれはマジカルビーム並みに使えそうじゃないか? 雷撃というくらいなら目で追えないくらいは速いだろうし、目視で狙いを定めるなんてまたほぼ必中になると思うからな」
「ふむぅ、雷撃とはまた希少な属性魔法を…」
グレイとアイシャは我関せずという感じに黙々と食べているが、クローディアはどうやらこのステッキにご執心のようだ。




