26 休息と陰謀
誤字報告いつもありがとうございます。
「なるほどねぇ。さすがにシェイクの効果時間を考えたら無理だろうけど、ハンバーガーならイケそうだな」
「シェイクは2時間じゃったか、夕食から朝までとなると4~5個は飲まないといけないな… じゃあそれは私が試すとしようかの」
「止めとけって。冷たいものをたくさん飲むとお腹を壊すんだぞ? いくら検証のためだからといってもそれはちょっとな」
「何を言っておる、そういう時のためにドリンクがあるじゃろう。ドリンクでお腹の調子を整えられるのじゃから問題は無いのではないか?」
「あー…」
確かにそうかもだけど! どうしてそこまでするのかが分からない… いやでも知っておけば今後重宝する情報ではあるよな? よし、じゃあ俺もやってみるとするか!
そんなこんなでベッドでまったりとしていたが、日が暮れてきて周囲が暗くなってきた。この世界は電気という概念が無いようで、暗くなると魔石を利用した器具を使って灯りを取っている。
しかしそこは宿のお気持ち次第で色々と変わってくる… 聞くところによると、安い宿だと魔力の切れかかった魔石をセットしていてすぐに真っ暗になってしまいという事だ。この宿はどうなのかは分からない… 前回泊まった時はすぐに寝てしまったからな。
「なんも主の収納に魔石などいっぱいあるではないか、それを使えば一晩中だって明かりをつける事は出来るがのぅ」
「まぁ暗くなったら眠くなるもんだ、無理して起きてる事も無いさ。じゃあそろそろ晩飯にするか」
「ご主人よ、俺は今日エッグチーズバーガーを5個で頼む」
「私はどうするか… エッグチーズに枝豆コーンサラダ、それからシェイクを順次出してもらおうかの」
「ボクはハンバーガー3種類とナゲットで! 後シェイクも!」
「了解だ」
相変わらずの食欲だ… こうなってくるとアレだな、俺のスキルがハンバーガークリエイターで良かったのかもしれない。さすがに毎食この量だといくらダンジョンで稼いだからといってもなかなか儲けにはつながらないだろう…
金が無いとこの3人の奴隷紋とやらが解除できないと聞くし、幸い俺には収納に使えるゴミ箱があるからな… 金貨だって結構重いからしまっておけるのは有難い事だ。まぁ金貨だけじゃなく生活用品だってそうだ、上手に活用していけばダンジョン探索では困ることは無いだろう。
ま、それもこの3人がいてこそだけどな! 俺1人じゃ魔物と戦うこと自体無理かもしれないしな!
30分もすると、3人は夕食をペロリと平らげてベッドに寝そべっていた。クローディアだけは飲み物がシェイクだけに一気飲みとはいけずにゆっくりと飲んでいる。
「この様子なら夜食は…」
「一応用意してくれるとありがたい… ナゲットなら冷めても旨いから問題ないしな」
「そうか? ナゲットは冷めたら硬くなってるだろ」
「いや、あの歯ごたえは悪くはない」
どうやらそうらしい。まぁこの世界のパンは乾パンよりも硬いからな… アレを毎日食べているとなれば、きっと皆の歯と顎は丈夫なんだろう、アレに比べたら確かに硬いとは言えないかもしれないな。
まぁ好きだというのであれば良いんじゃないかな? ぶっちゃけ俺も冷めたナゲットでも普通に食えるしな!
「じゃあ今日はこのまま休息っと。明日はもっと頑丈そうな鞄でも見てくるかね」
「そうじゃの。いくら入れる物が魔石だけとはいえそこそこ重いもんじゃ、鞄が壊れたら泣けてくるからのぅ」
「うんうん。じゃあ後はのんびりしようか」
ヒビキ達がギルドをひっそりと出ていった頃ギルドの酒場では…
「おい、さっきのやつ見たか? 3人も奴隷を連れてやがった坊ちゃんをよ」
「いや、見てなかったが… それがどうしたんだ?」
「いやなに、連れていた奴隷がオーガにエルフ、獣人ときたもんだからよ、随分と金を持ってる主人なんだなと思ってな」
「ほほぅ、そりゃ羽振りが良いにも程があるってもんだな」
「だろ? しかも奴隷だってのに普通の服を着てよ、武器までもってやがったんだ。そんなに金が余っているなら俺達にも回してもらいたいよな」
「身綺麗な奴隷か… それもオーガにエルフと獣人って、売ったらかなりの金になんぜ?」
赤毛の男と青毛の男がエールを飲みながら小声で話し合う。
「それで? その坊ちゃんとやらから奪うのか? 金も奴隷も」
「おおよ、どうすりゃ根こそぎ剥がせると思う?」
「そうだな… メンバーの若い奴をけしかけてみるか? そんで「あいつの奴隷に怪我を負わされた」ってギルドに言いつけて治療費を吹っ掛けりゃいいんじゃないか? すぐには払えないくらいの金額をよ」
「なるほど、教会で治癒魔法をかけてもらったと言えばかなりの金額に出来るな」
「だろ? そんで金が足りなくて払えないって言えば有り金全て払わせて、足りない分はその奴隷で良いって言えば坊ちゃんなら出すだろ」
「おお、そいつは良い考えだな! しかもギルドを間に噛ませれば逃げる事も出来なくなるしな!」
「よし、まだ飲み足りない気もするが頭が回らなくなるまで酔う事は出来ないな。拠点に戻って詳しい作戦を立てるぞ」
「おっし! なんかダンジョンアタックよりもやる気が出てきたぜ!」
翌日、仲間を使って坊ちゃんがいつこの街にやって来て、何日くらいダンジョンに入っていたのかを調べる事にした。もちろんダンジョンの出入り口にも人を立たせ、あいつらがダンジョンに入ったら知らせるようにしておく。
「情報は集まったか?」
「おう! 門兵の奴が覚えていたよ、3人も奴隷を連れた生意気な奴だったからな… ちょうど12日前にこの街にやってきたとの事だ。そして街での聞き込みの結果、1日宿に泊まってからダンジョンに入ったんだとよ」
「そうか… つまりダンジョンに10日間も入っていたって事だな?」
「ああ。次にダンジョンに入ったのを見届ければ10日間は仕込みができるって事だぜ」
赤毛の男が顎に手を置いて考える。
若いもんに喧嘩を売らせるつもりだったが、良いとこの坊ちゃんが連れてるくらいだ… ノってこない可能性もあるよな。だったらダンジョンに入ったのを見届けてから怪我人を捏造し仲間内で口裏を合わせた方がリスクはないか。
「よし、じゃあ街に数人出して泊っている宿を探らせろ。10日間もダンジョンに入っていたなら数日は休むかもしれないからな」
「おう、わかったぜ。しかし待ち遠しいな… あの奴隷どもを売ったらいくらになるのか」
「まぁな! しばらくは遊んで暮らせるだろうぜ」
「「ヒャッハッハ!」」




