167 ダンジョンアタック中…
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:エルフの組合員ジャン
「見えてきた、あれがナイトグリーン王国の王都だな」
「風に乗って匂いが漂ってきてるな… 俺としては何があっても寄りたくはないんだが?」
「ああ、俺も寄りたくないな。食料の補給だけはと思っていたけど…」
「聞いていた情報ではリャンシャンはそこの王都から15日程だったか? ならば寄らなくても良いんじゃないか? まだ食糧は残っているし、越えてからの町で補給すればいいだろう」
「そうだな。こんなに遠くまで臭い匂いが漂ってくる街で食料の買い物なんて無理だよな、相変わらず腐った国だぜ」
馬を駆け、祖国であるディープパープル共和国を出て1ヶ月が経ったか… 俺達はようやくナイトグリーン王国の王都が見える場所まで着いたのだ。だが相棒のエルマンが言う通り、この国は奴隷制度を国が支援しているという外道国家… 奴隷が放つ匂いがきつくてとても近寄る気にはなれないな。
まぁ補給や休息で訪れた異種族に難癖をつけ、無理矢理奴隷に墜とすなんて噂もあるくらいだから近寄らない方が正解だろう。いくら俺達の武力で対抗できたとしても、数の暴力にはジリ貧になるのが目に見えているからな。
「ところでエルマン、この先の補給地は分かっているのか? 俺も地図は見たんだがなんかいまいちでな」
「補給地? 知る訳無いだろう。俺だってこの辺に来るのは初めてなんだ、まぁ地図にある町によれば大丈夫だろう。一応アキナイブルー王国へと続く街道なのだろう? ならば商人が補給できるくらいの町はあるはずだ」
「まぁそうだな… しかしあと15日程でいよいよリャンシャンだな! 現地に着いたら早速探りを入れないとな!」
「落ち着けよジャン、まだ15日以上もあるんだから今から気合を入れたって早すぎるぞ」
「そうかもしれないけど!」
行方不明になって久しいクローディア様が、これだけ長い期間苦しめられていると思うと居ても立ってもいられないんだよ! 早くこの手でお救いしなければな!
「それにしても魔法省はどうして動かなかったんだろうな」
「さぁな、俺には偉い人の考える事は良く分からん。クローディア様が行方不明になった時に流れた噂が原因かもしれないが」
「ああ、何か罪を犯して罪人になったとかっていうアレか? あんなの嘘に決まっているだろう。魔法研究に全てを賭けていたクローディア様が犯罪を犯す暇なんてある訳ないからな」
「俺もそう思う。だが魔法省の内部では違う事を思っているのかもな」
「魔法省ねぇ… 魔法研究が主な仕事だから秘密主義になるのは仕方のない事だけど、色々と秘密にしすぎな気がするよな」
「まぁな」
ま、祖国を遠く離れた今ではそこを調べる事は出来ないだろう。いや、国にいたってあの秘密主義の魔法省を調べる事は出来ないか。
それに今はどうでも良い事、最優先すべきはクローディア様の救出奪還! クローディア様を使役しているという人間種の冒険者め、待っているがいい! 必ずこの俺が天罰を下してやるぞ!
SIDE:ヒビキ・アカツキ
「うおっ!」
「油断するなご主人! 何を遊んでいるのだ!」
「いやいや、ちょっとね」
ふぃ~失敗しちゃったな、なかなか上手くいかないもんだ。
俺の眼前にいたオークの上位種は、あたふたした俺を見てニヤついてやがる… カチンとくるな! だけどなんというか、もう少しなんだよな。
「やりたい事は何となく理解したが、いくら雑魚とはいえオークの腕力を侮ってはならんのじゃ」
「わかってるよ! もう1回だけ!」
「仕方がないのぅ」
何をしているのかと言うと… 目の前にいる魔物が持つ武器を奪い取りたいのだ! ダンジョン内の魔物はなぜか倒されると装備品と共にダンジョンに吸収されていく、だったら消える前に奪えば良いじゃないって事で実践中なのだ!
持っているのは棍棒の類なんだけど、釘バットさながらにトゲトゲしていて気になってしまったんだ。グレイ達も自由に戦っているし、俺もちょっとって手を付けたら皆に心配をかけてしまったようだね。
「よっと、よしキャッチ! さぁその手を離すんだ!」
「無理じゃろ」
「反応が冷たくない?」
「いやいや、体重差があるすぎるのじゃから棍棒ごと持ち上げられてしまうのじゃ」
「あ…」
クローディアの言う通り、まるで一本釣りのように空中に放り投げられる。ちくしょう、なんてこったい。
「ご主人よ、もう見てられないぞ。武器を奪えば良いのだな?」
そう言って突撃してきたグレイ… 振り回された棍棒を素手で受け止めると、ミスリルの大剣で棍棒を持っている腕を斬り落とした。その直後に横薙ぎにして魔物を討伐。でもグレイ、そのトゲトゲは痛くないのかい?
「これでいいか? むむ?」
「あ、やっぱりダメなんだ」
「面白いもんじゃのぅ」
倒された魔物が消える際、グレイが掴んでいた棍棒も一緒に消えてしまったのだ。
まぁ他の冒険者も今まで試した奴もいただろう、武器を持つ魔物も結構いるからね。しかしこれで魔物の持つ装備もダンジョン産って事になるのかねぇ、回収させてもらえなかったけど。
「まぁ昔から言われていた事だ、こういうものだと思うしかないだろう」
「まぁその通りだね」
まぁそんな訳で、ダンジョンアタック4日目にして30階層に到着していた。グレイ達が強すぎるというのもあるけど、俺の動体視力も格段に良くなっているせいでこの辺の魔物に脅威を感じないのだ。だけどここのダンジョンの最高到達階層は31階層… うーん、やはり他の冒険者は慎重になりすぎているんだろうな。
「素直に弱いと言ってやれば良いのじゃ」
「ええ? でも慎重なのは良い事だけど」
「育成の方針がそもそも間違っておるのじゃ。安全なのは良いのじゃが、安全を重視するあまりパーティの人数を増やしすぎなのじゃ。それじゃといつまで経ってもレベルは上がらんの」
「まぁね… 俺達はメンバー少なめだもんな」
まぁ他のパーティの方針に俺が口出しする気も起きないから良いんだけどね。他所は他所だし俺達は俺達だ。こうやって深層に行く事のできる俺達の真似を出来るんならやれば良いんだよね、まぁ見てる人もいないけど。
「ご主人様! そろそろご飯の時間だよ!」
「お、そうか? じゃあ手ごろな場所を見つけてご飯にしようか」
「うむ!」




