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うわさ

「おい、聞いたか? Cクラスの話」

「ハイテ丘に出たっていう大型リザードマンだろ? ほんとなのかねぇ〜俺らもこの前あそこで演習したばっかりだぜ?」

「マジだって、Cに知り合いがいるんだけどよ、号泣してたぜ。なんでも大型種だけじゃなくて大量のリザードマンも沸いてたとか……」

「ひぇ〜Cの奴らも気の毒に、だから昨日昼から自習だったんか。ま、俺らならリザードマンくらい自力で殲滅できただろうけどな」

「いや……それがCの奴らも自力でどうにかしたらしいぞ」

「はぁ? じゃあ大した数でも大きさでもなかったんじゃねぇの? この辺の学区内でリザードマンの群を処理できる学生なんて俺ら特Aくらいだろ」

「それがCの奴ら……というか一人らしい。一人で大型種を含むほとんどのリザードマンを狩った奴がいるとか……」

「ありえね〜デマだろそりゃ。そんな奴がCにいるはずねーわ」



大型リザードマン出現から一夜明け、フレイア魔法学校ではまさにその話題で持ち切りであった。正確にはリザードマンの異常発生そのものよりも、それを倒した同じフレイアの生徒……その話題が大半を占めていた。



「ギル! 大丈夫!? 怪我とかしなかった!?」


少し遅めの登校をしたギルを見るや否や、息を切らせ、鮮やか青髪をかき乱しながら駆け寄って来たのはティアであった。目の下にはクマが出来ており普段の整った可愛らしい顔つきから比べると少しやつれて見える。


「あ、おはようティア」

「う〜〜! おはよう、じゃないでしょ。どれだけ心配したと思ってるの! 無事なら連絡くらいくれたっていいじゃない」

「あーゴメン。なんか昨日一日中、先生交えて地元の自警団に事情聴取されててさ。帰りも遅かったんだよね」


大きなあくびをしながらペコペコとティアに頭を下げる。ティアも普段と変わらぬギルの顔を確認し少し落ち着きを取り戻す。


「そっか、昨日はみんな大変だったもんね。私こそゴメン。怖い思いをしたのはギルなのに……」

「別に大丈夫だって。心配性だなティアは」

「だって大型リザードマンだよ。心配するよ……ギルとは喧嘩したまんまだったし、このまま会えなくなるんじゃないかって……」


唇を噛み溢れそうな涙を堪えるティア。それを察したギルは極力ティアの顔を見ないよう気を使い照れ臭そうに話す。


「ぜ、全然平気だって。俺だけじゃなくて皆んなも無事だから心配すんなよ」

「……そっか、良かった」


ようやくティアにも笑顔が戻る。


「そういえば、Cクラスの誰かがリザードマンを沢山倒したって噂になってるんだけど……」

「えっ……」

「その噂ってほんとなの?」


ギルは頬をポリポリと掻きながらバツが悪そうな顔をする。ここで「あぁ、それは俺」というのは容易い。しかしそれはギルにとってあまり開示したい内容ではなかった、少なくとも現時点では……


普段より明らかに数が多かったリザードマン。そして異常の象徴である大型種。これらの半数は教員が駆けつけるまえにギルが倒していた。しかし決して短期間で爆発的にギルの力量が上がったわけではなくあくまでレットペンサーによる反復した予習の賜物なのだ。

アルテマ学園に入る為、テストの結果は重要ではあるものの、噂が一人歩きして怪童扱いされても困るのはギル自身である。その為今回の事情聴取でも「たまたま運が良かった」を無理筋でも強調し、噂の拡散防止に努めたのは他ならぬギルであった。


「あ、あ〜〜、イチカが凄い頑張ってくれてさ。身を呈して皆んなを逃してくれたんだよ。あれはもうリザードマンを倒したに匹敵する戦果だったと言えるよね」


目をキョロキョロさせながら話を合わせる。しかしこれは本音でもあった。


「そっか、イチカも頑張ったんだ。二人とも偉いね」

「そうそう、って……別に俺は偉くは……」


その言葉にティアは大きく首を横に振る。


「ギルはイチカを置いて逃げるような事は絶対しないよ。だから近くにいたはずだよ、ギルも偉い、凄いよ」


真っ直ぐ目を見てくるティアに対して気恥ずかしくなりギルはうつむき加減にボソッと答える。


「……買い被りすぎだって……凄くないよ俺は」


ただ、凄くありたいとは願う。彼女の期待に応えたいから。勇気ある者でいたいから。







「おい、見つかったのかよ。噂の元凶は」


放課後の特Aクラスにドスの効いた声が響く。


「いや、まだ何も。やっぱりリザードマンの群を倒した奴がCクラスにいるなんて嘘なんじゃあ……」


ガァン!

蹴り上げられた机が宙を舞う。その蹴りを放った大柄な男子生徒は明らかに苛立っていた。


「嘘かどうかなんてどうでもいいんだよ! 俺様のアルテマ学園推薦がこのタイミングで取り消されたんだぞ!? 学園まで噂が届いて推薦枠が見直しされたとしか考えてられねぇだろうが!」

「ひぃ、そ、それは分からないけど……ノヴァ君はそいつを見つけてどうするつもりなのさ」


舎弟のような扱いを受ける生徒が恐る恐る問う。


「決まってんだろぉ! どっちが上かハッキリさせてやるんだよ。リザードマンごとき倒したぐらいでイキってる雑魚に格の違いってヤツをよぉ!」


つり上がった目をギラつかせてニヤリと笑う。

男の名はノヴァ。フレイア魔法学校最強の男子生徒。


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