ここではないとしたら
望子が元の世界へ帰る為に必要な、勇者召喚の魔方陣。
勇者召喚の儀が執り行われ、望子が異世界へ喚び出されたのは他でもない王の間であり、まず間違いなくここに再展開されている筈だとレプターとローアは睨んでいたらしいが。
王の間以外となると、考えられる候補はそう多くない。
「ここではないとしたら、もう考えられるのは……」
「宝物庫、であるか?」
「……そうだが、言い当てられるのも癪だな」
「くはは、我輩は聡明ゆえ」
筆頭候補は、やはり宝物庫。
かつては国中の、ともすれば大陸中の有用な魔導具が王族の戯れとして集められていたあの中になら或いは、そんな考えを魔族であり宝物庫に入った事のない筈のローアまでもが持っていた事にレプターが若干の腑に落ちなさを抱く中。
「ほうもつこってどこ? わたし、いったことあるかな」
「え? あぁどうでしょう、向かってみない事には……」
「場所は?」
「王の間を出て左方へ。 参りましょうか、ミコ様」
「うん」
空気を変えるつもりだったのか、単に好奇心からの発言だったのかは定かでないが、いずれにせよ急いだ方がいいのは間違いない為、小競り合いもそこそこに王の間を出る三人。
「王の間と同様に警備の者たちが配置されているのは間違いないが、おそらく王の間の比ではないであろう? 量も質も」
「そうだな。 そもそも警備兵を配置する事になった原因が宝物庫への侵入者が絶えない事にある以上、必然とも言える」
なるだけ音を立てぬ様に歩きつつ二人は状況を整理する。
王の間も間違いなく、というか最優先で警備すべきと言っても過言ではない重要な場所ではあるものの、おそらく不法侵入や盗難被害に遭っているのは八割以上が宝物庫であり。
そこに戦力を集中させるのは正しい判断だと見る二人。
しかし、そうなると先程と同じ対処をせねばならず。
「じゃあ、またわたしがやろっか? ろーちゃんやとかげさんのほうがじょうずにできるんなら、それでもいいけど……」
より良い方法があるなら、と前打ちつつも地球へ帰る事が出来るかもしれないという事もあってやる気満々な様子の望子を見て微笑ましさを感じつつもレプターは首を横に振り。
「手本も見せていただきましたし、次は私にお任せを」
「……そっか、よろしくね」
仕える主にばかり任せる訳にはいかない──そんな使命感で以て頭を下げる彼女の忠義を無碍には出来ず、託す望子。
それから、およそ五分後。
三人は、ついに広い城内の奥にある宝物庫へ辿り着き。
「やはり相応の者が配置されているな。 我輩からすれば弱卒であるが、肉体も精神も惰弱な盗人どもには脅威であろう」
「一言余計だ、全く……ではミコ様、失礼して──」
魔族からすれば雑魚もいいところではあるものの、コソ泥でもしなければ生きていけない様な他種族では突破はまず不可能だろうという如何にも上からな分析に苛立ちながらも。
音を立てずに翼を広げ、つい先程の望子と同じ様に警備の者たちを気絶させるべく武技を発動せんとした──その時。
ウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
ビーッ! ビーッ! ビーッ!ビーッ! ビーッ!
「──なッ!?」
「これは……?」
と、あまりにけたたましく甲高い音が城内に鳴り響き。
レプターが驚き、ローアが興味を抱く中。
「これ、って……!」
望子だけは、その音に聞き覚えがあった様だ。
それも無理はないだろう。
地球で聞いた事のある警報音そのものだったのだから。




