魔方陣はどこに?
「うぅ……くらいしせまいね、ここ……」
「カビの臭いも充満しているな」
その隠し通路はあまりに暗く狭く綺麗でもなく、とても王族が避難する為の道とは思えなかったが、ここを通るという事は既に王都が壊滅寸前の状態にあるという事に他ならず。
「この道を整備するくらいなら城の護りを固めた方がずっと良い、それくらいは当時の王族も理解されていたんだろう」
そこまで追い詰められておきながら環境に苦言を呈す様な者はそもそも王族として相応しくなく、どこへ逃げてもやり直す事など出来ないだろうと語るレプターの解説をよそに。
「ちょうどよかったね、かいちゅうでんとうもってて」
「うむ、ミコ嬢の手柄であるな」
「ほんと? よかった」
今は先頭を歩くレプターの手にある懐中電灯──実際には良く似ているだけの魔導具なのだが──の光に漸くの安堵を抱きつつある望子と、かつてのぬいぐるみたちの様に望子を褒めて伸ばそうとするローアの会話を背に進んでいると。
「……? とかげさん、もしかしてあれって……」
「えぇ、あれが出口です」
「何処に繋がっているのであろうか」
「王の間、正確には玉座の真下だった筈だが……」
入口にあった物と同じ梯子と、その上から微かに漏れ出ている光を頼りに望子が確認する様に問いかけたところ、レプターはこの薄暗い中でさえしっかり望子の目を見て首肯し。
梯子の先について問うてきたローアに対しては、かつてと変わっていなければと前打った上で〝王族が誰より先に避難出来る場所〟として王の間に造られたと解説したはいいが。
瞬間、レプターの表情は僅かに曇る。
「……どうやら王の間にも警備が敷かれているらしいな」
「ふむ、では我輩が軽く……」
「駄目だ、魔族の痕跡など見つかれば一大事では済まない」
「それも一理あるが、では如何する?」
「……」
王の間に繋がっている事実は変わっていないらしいが、レプターの聴覚には均整の取れた足音と小声での報連相が聞こえている様で、それが警備担当の兵士たちのものだと分かったとて、ローアに任せる訳にも──と逡巡していたその時。
「わたしがやってもいい?」
「えっ?」
「ミコ嬢?」
「よい──しょっと!』
「なッ!?」
「おっと」
突如、出口の真下辺りへ移動しながらそう言った望子は二人から許可を得るより早く──どのみち断られる事はなかっただろうが──魔王を倒してから使ってこなかった六つの力の内の一つ、龍化を発動しつつ翼を広げて突風を起こし。
一体、何を──と望子に問う前にレプターの鼓膜を〝複数人が倒れる音〟が叩き、まさかと思って出口を開けてみる。
すると、そこには予想通り警備の者たちが倒れていて。
「怪我はない……これは、気絶しているのか」
『じょうずにできてよかったぁ」
「流石であるな、ミコ嬢は」
「本当にな……」
要は、レプターの武技の一つである龍如威圧を魔力を用いない覇気だけで再現してみせたのだと判明し、ローアもレプターもそんな望子をまたも褒めつつ王の間を見渡してから。
「それよりも、ここが王の間との事であったが?」
「……あぁ、私も先程から疑問に思っていた──」
共通した、一つの疑問を抱く事となる。
「──魔方陣は、どこに展開しているんだ?」




