あまりに見覚えのある──
王城跡地への、侵入。
如何にレプターが駐屯兵長だったとはいえ所詮は〝元〟。
手元に残っている権限といえば、つい先程の様に顔見知りの誰かに多少の融通を利かせてもらうくらいの事しかなく。
侵入という、ともすれば犯罪者の様な行いに手を染めざるを得ないのも致し方ない部分もあるのかもしれないと全員が納得、首都の住民が寝静まった深夜に行動開始せんとして。
時間を潰す意味でも、三人は首都を歩いてみる事にした。
「すごいね、おみせがいっぱいあるよ」
「えぇ、以前までとは全く違いますね」
「土産くらいは持ち帰ってもよいのでは?」
「そ、そう? じゃあ、そうしようかな」
中心街、と呼ばれているらしいその広く長い通りの両端には所狭しと様々な品揃えの店が並んでおり、もし望子を元の世界へ帰す為の何かがここにあるのなら、おそらく異世界の物品を持ち帰る事も出来る筈だというローアの推測に従い。
「あの、ちょっとみてみてもいいですか?」
「おう、好きなだけ見てってくれ!」
「気になったら手に取ってみてもいいからね」
「ありがとうございます、それじゃあ──」
とてとて、と如何にも子供らしい歩き方で店の一つに向かっていき、夫婦なのだろう二人の店員に挨拶しつつ母への土産として相応しい物でもないかなと売り物を見ようとした。
……まさに、その瞬間──。
「──えっ?」
「「?」」
ギシッ、と錆びついた機械の様に望子の動きが停止する。
その視線の先にあったのは一見どこにでもありそうな筒状の何かであり、それが何なのか、そして何故それを見て望子が固まったのか分からずローアたちが首をかしげていると。
「お目が高いなお嬢ちゃん! そいつは、ここの窪みに指を押し当てるだけで埋め込まれた魔石が反応して前方を明るく照らす魔導具! ここ一年くらいで開発された代物でな──」
望子が固まったのは後ろの二人と同じ様に『その筒状の何かがどういう代物なのか』と思っているからだと勘違いした店員がそれを手に取り、『カチッ』と何らかの音を鳴らしたかと思えば、その筒状の何かの先端が俄かに光を放ち始め。
「──今は昼間だから分かりにくいだろうが、ほら!」
「……!」
「衛兵や駐屯兵は皆これを使ってるのよ」
「ほぉ、中々利便性が高そうであるな」
「装備も随分と変わっているとは思ったが……」
暗に夜や暗いところで使う物だ、と指向性の強い光を放つ筒を見たレプターやローアが素直に感心し、それと同時に関心をも抱く中、望子は独り信じられないといった具合の表情を浮かべつつも背中の鞄、無限収納から硬貨を取り出して。
「……これ、ひとつください」
「毎度あり!」
「はい、これお釣りね」
「ありがとう、ございました……っ」
「えっ、ミコ様!?」
「おっと、またのお越しをー!」
その光を放つ筒を購入した後、失礼にならない程度の早足で逃げる様に立ち去っていく望子に驚きながらも二人は追従し、店員たちの挨拶を背に受けつつ中心街をひた走る三人。
その間も望子は立ち寄りこそしないものの遠くから食い入る様に店という店全ての品揃えを確認、その幾つかで先程と同じ様な反応をしつつも通り過ぎるという行動を繰り返し。
「ミコ嬢、如何した? 先程から落ち着きがないが……」
「何か気になる事でもありましたか?」
「……どう、いったらいいんだろ……えっとね──」
しばらくした後、中心街から少し離れた路地裏で漸く足を止めた望子に『何があった』と問うたところ、おそるおそるといった手つきで望子は手に持ったその筒を二人に見せる。
何しろそれは望子にとって、あまりに見覚えのある──。
「これ、わたしがいたせかいのどうぐなの」
「ッ!?」
「何だと……?」
──〝懐中電灯〟、そのものだったのだから。




