到達、旅の終着点
それから、ウェバリエの墓の保全を女王へ頼んだ望子たち三人は大森林を出た後、港町や翼人の集落を離れる際に貰い受けた土産を消費する意味でもゆっくり目的地へ向かい。
時間にすると、およそ二日後──。
「──……ここ、なんだよね? かえるためのばしょ……」
「おそらくは、であるが」
ついに三人は、かつてのルニア王国王都に到着した。
望子と共に異世界へ召喚され、そして望子と勇人の力で命と亜人族の姿を得た三人のぬいぐるみによって国王が惨殺された後、君主制から共和制に変わって半年が経過しており。
完全にとはいっていない様だが、それでも魔王軍の襲撃を受けたにしては既に八割近くも復興が進んでいるところを見るに、きっと体制の変更は正しかったのだろうと思わせる。
「はいっていいのかな、あれ……すっごいならんでるけど」
「ミコ様、ここは私にお任せを」
「え? とかげさん……?」
そんな渦中の王都──今は首都──の門へ近寄ってみたところ、そこには人族のみならず亜人族までもが列を為して首都を訪れんとしており、もし万が一この中に望子の顔を知っている者が居たら面倒だと考えていた二人をよそにレプターが一人、長蛇の列を無視して門の入口へと向かっていき。
「すまない、少しいいだろうか」
「はい?」
「急用があってな、優先的に通してもらいたいんだが」
「いや、そういう訳には……ちゃんと並んでもらっ──」
まるで貴族か何かの様な口振りで以て若そうな門兵の一人に声をかけ、〝お願い〟の様であってその実〝命令〟にも等しい謎の圧を感じつつも門兵が職務を全うしようとした時。
彼は今、自分が誰を前にしているのかに気がついた。
「──って……え? もし、かして……」
「私を覚えているか?」
「レプター=カンタレス殿……? 元駐屯兵長の……!?」
「そうだが、そのままの声量で頼む。 目立ちたくないんだ」
「は、はい……ッ」
どうやら彼は新兵ではなかったらしく、かつては駐屯兵の長だったレプターの姿を覚えていた為、思わず大声で素性を口走りかけたものの、それはレプターによって抑えられる。
ここで必要以上の人数に存在が露呈すれば、どうせ永劫の別れになる元同僚たちと再会せざるを得ない事態になりかねず、そうなると望子が元の世界に帰る為の手段の模索に支障が出るかもしれない、と考えたからこその配慮だった様だ。
「『行方知らずとなった聖女と共に旅立った』とか『魔族と戦う為の修行を積みに国を出た』とか噂されてましたが……」
「……あながち間違いではないな、まぁそんな事より」
「はい、貴女なら問題ありません。 お連れの方もどうぞ」
「礼を言う。 さぁ、参りましょうか」
「う、うん」
一方、他の部署に属する兵士たちに元同僚たちが事情を深くは語らなかった為、門兵は風の噂程度の情報しか持ってはいなかったものの、そこそこ的を射ていた事に驚きつつも許可を得て、レプター、ローア、望子の三人は門を通過した。
当然、ローアは人化済みである。
そして、おそるおそる門の向こうへ足を踏み入れると。
「すごいね……ひとがいっぱいだし、みんなげんきだ……」
「こうも人族、亜人族塗れでは息苦しい事この上ないな」
そこで暮らす人々は、これでもかと活気に溢れていた。
慣れた様子で人混みを躱す住民、店や屋台を構えて色々は物を売る商人、野次馬感覚で首都を訪れた旅人など、まるで人気の観光地が如く人族と亜人族でごった返しているかつての城下町に望子が呆気に取られ、ローアが呆れ返る一方。
(共和制となったからなのか、それとも魔王が討伐されて平和が訪れた事が何らかの手段で周知されているからなのか……)
レプターはかつての職場の大きな変化を喜ぶべきなのかそうでないのか、そしてその原因はどちらにあるのかと独り悩んでいたが、それを二人に打ち明けたところで意味はないとも分かっていた為、胸の内に押し留めておくに至った様だ。
「ねぇ、ろーちゃん。 これからどうしたらいいの?」
「うむ、これから行う全ては希望的観測であるが」
そんな中、首都を最終目的地にした最大の理由である〝望子が元の世界へ帰る為の何か〟を探す為には何をすればいいのかをローアに問うたところ、あくまでも憶測だと前打ち。
「何はともあれ、まずは王城の跡地へと侵入せねばな」
全ての始まりである場所へ向かおうと、ローアは告げた。




