ストレス解消は大事です。
「次の資材が入るぞ!場所が足りん、さっさと場所を空けろ!」
私は部下に怒鳴りながらも、自らも資材を運んでいく。
倉庫番長である私は、普段は指揮して人を動かす立場だ。こうして自らが資材の運搬を行うことなど、殆どない。
だが今は、そんなことは言ってられないのだ。
鈍った身体に鞭を打ちながらも、部下に指示を出しながら、新たに資材を搬入するために棚を移動させていく。
「スペースは出来たな?では、資材を出す。離れておくように。」
そう仰ったのは、我らが神であるファントム様だ。
次の瞬間には、ファントム様の目の前に、資材の入った箱が突如として現れた。
この倉庫は、建物を三階分ぶち抜いたくらい天井が高い。
しかし新たに登場した資材の箱は、そんな天井に届きかねないギリギリの高さまで積みあげられていた。
「この資材はもう少し後で送ることになる。また別に資材を出すかも知れないので、新たにスペースを空けておけ。」
「はっ。畏まりました!」
「作業が終わったら秘書達の指示を仰ぐように。」
そう仰って、ファントム様は倉庫の奥へと消えていった。
恐らくは、資材に関する計算をされている秘書英雄方のところへと行かれたのだろう。
「お前ら、聞こえたな!?急いで場を空けろ!外に出せる物は倉庫の外に出せ!今はとにかく、資材を置き場所を作るんだ!」
私は肩で息をしながらも、部下の倉庫番達に檄を飛ばす。
今が、私達の正念場だ。
例えこの身がボロボロになったとしても。
今だけは軋む身体を無理矢理動かして、とにかく仕事を遂行しなければならない。
―・―・―・―
始まりは、昨日の朝のことだった。
いつも静かなこの倉庫に、突然ファントム様がやってきたのだ。
ファントム様がこの倉庫にやってくるのは、そう珍しいことでもない。
ファントム様はその御力で資材や物資を出すことが出来るので、時折不足した物資を補充するために倉庫へといらっしゃるのだ。
だが、その日はいつもと様子が違った。
ファントム様は鬼気迫る表情をしており、その後ろには四名の秘書が付き添っていたのだ。
そして、ファントム様は我々にこう仰られた。
「これから、頻繁に物資のやり取りを行うこととなった。執務室では狭いのでここで直接作業を行う。大量の資材を出すことになるから、早急に資材が置ける空間を用意するように。」
最初は何が起きたのかよく分からず、言われるがままに倉庫番を総動員して物資や棚を移動させていた。
しかし途中で、秘書の英雄様から事情を聞くことが出来た。
なんとファントム様は、他の世界を管理している神様への支援を行っているのだそうだ。
そのため、他の世界へと物資や英雄を送ったりするので、一時的に資材を仮置きするために、倉庫で作業することになったのだとか。
ファントム様は、我らの世界を救って下さるだけでなく、他の世界にまで救いの手を伸ばそうというのだ。
私のような一般人では詳しい事情までは分からないが、他の世界に救いの手を差し出せるということは、ファントム様は神様の中でも相当に高位のお方なのだと察することができる。
そして何より、他の世界を救うという大仕事に、ほんの僅かと言っても私が携わることが出来るのだ。
以前にファントム様が仰った、倉庫にて資材を守ることは世界を救うための重要な仕事という言葉。
それと同じく、これからの私達の頑張りが、他の世界を救う助けになるのだ。
それを聞いて奮起しない者など、この倉庫には一人として居やしない。
―・―・―・―
「倉庫番長!全ての棚を外に出し終わりました!」
ファントム様が生み出す資材の量は、想定を大きく超える量だった。
結局、全ての棚や備蓄を外に出し、倉庫には他の世界へと送るための資材しか残っていない。
「良し。では第一班は引き続き外に出した備蓄物資の警備だ!ファントム様の前で醜態を晒すな!残る第二班と第三班は私と共に秘書英雄様の手伝いに行くぞ!」
私達の仕事は、倉庫にある物資の管理と警備だ。
だが、今は緊急事態なのである。
必要な人員を残して、残りは全て秘書英雄様達の手助けに行く。
私達は物資管理のスペシャリストなのだ。
秘書英雄様達が行っている資材の計算ぐらいならば、私達でも役に立つことが出来るだろう。
「警備班は何か有れば私の元に伝令を送れ!それでは行くぞ。ついてこい!」
「「「「「はいっ!」」」」」
威勢の良い返事と共に、全ての班が一斉に行動を開始した。
―・―・―・―
ファントム様と共に倉庫で作業に入ってから、既に二日が経った。
倉庫には臨時の机が幾つも置かれており、俺と高柳中尉と、手伝いを申し出てくれた倉庫番達で資材計算を行っている。
作業開始の初日に、ファントム様は我ら秘書英雄達に一つの指示を出された。
それは、長丁場になるので秘書を二組に分けて二交替体制に入るというものだ。
事務能力を均等に振り分けた結果、俺は高柳中尉と。エーリッヒ中尉はナルキア殿と組んでローテーションすることになった。
しかし、ファントム様はずっと働いておられる。
一応一日に四時間は休憩されているようだが、残りの十八時間は常に仕事をなさっているのだ。
神様ネットワークで他の世界の神様とやり取りし、資材を新たに倉庫に出し、倉庫にある資材を順次、必要としている神々へと送っていく。
ファントム様がほぼ無休で働いているのに、我らが休んでいていいのか?
そうは思ったのだが、神様ネットワークは神であるファントム様にしか操作できないのだ。
神様ネットワークの画面すら見えない我らでは、ファントム様の代わりは務まらず、手助けすることが出来ない。
……それが、どうしようもなく悔しい。
ファントム様の考えを一番よく知る我ら秘書としては、ファントム様のお役に立てないのが、本当に悔しい。
ファントム様は、優しい神様だ。
元は人でしかない我ら英雄に、色々と気を遣って下さる。
飲み会の場では、まるで人間のような砕けた態度で接して下さるし、普段からも軽い口調で話してもいいと仰って下さるのだ。
そして、この世界に住む人々に対して、自身への信仰を強要しない。
世界を救うために祈るのだと仰り、民衆に戦う意志と希望を与えて下さるのだ。
今回のことも、他の世界の神々の救済だ。
それは言い換えれば、他の世界で苦しんでいる人々をも救うということである。
更に報酬として得た信仰は、この世界のために使うというのだ。
ガチャで戦力を整えたり、資材や物資の購入に当てるのだと。
神々にとって、信仰とは力だ。
神々は、信仰を自ら取り込んで力に変えることが出来る。
なのに、ファントム様はそれをなさらない。
我々英雄は、創造される際に神様ネットワークに関しての様々な知識を得る。
その知識の中で、神々がこのシステムを利用して何が出来るのかというのも知らされているのだ。
だから我々は、神々が神様ネットワークで集めた信仰を吸収して、自らの力に変えることが出来るというのも知っているのだ。
しかし、神様ネットワークは英雄を生み出すための管理システムだ。
英雄を創らずに、全ての信仰を神自身が吸い取ることは許されていない。
だがそれでも、役得として多少の信仰は吸い取ることが許可されているのだ。
しかしファントム様は、それを一切なされていない。
ファントム様からは、信仰の力を得た神々が発するという、神々しさが感じられないのだ。
我々に知識として与えられた神々の御姿は、見ているだけで神々しく感じられる気配を発していた。
それは、信仰の力を得て力を増した神々であれば、誰もが持ちうる神々しさであるらしい。
それがないということは、ファントム様は神としての力を殆ど持っていないということになる。
つまり、ファントム様には一切の私欲もなく、我らの世界を救うために全ての信仰を注いでいるということだ。
きっとファントム様は、我ら英雄とこの世界に住む人間達に世界を救ってもらいたいと思っているのだろう。
神の力に頼ることなく、人の手で救われることに意味があるのだと。
そう考えておられるファントム様が、碌に休まず仕事をなさっている。
それなのに、それを見ながらにして殆ど手伝えていないこの状況が、俺にとっては本当に悔しくて堪らない。
事務能力が高い高柳中尉は、ファントム様から各種の情報を仕入れるつなぎ役をしている。
もう一組と交代する時の引き継ぎでは、多くの情報を申し送りとして渡す必要があるので、この役目は記憶力が高い彼でないと出来ないのだ。
出来るのならば、俺がその役を代わりたい。
俺も、世界や人類のために頑張っておられるファントム様に、少しでも手助けがしたい。
だが、俺では頭が足りない。
それがまた、悔しさを助長させる。
それでも今は、目の前の仕事をこなすしかないのだ。
そう自分に言い聞かせ、俺は再び資材の計算作業へと、思考を没頭させていった。
―・―・―・―
フッフッフ。
フッフフフッフ。
フッフフフフーン。
さーて、次の依頼はぁ?……えーっと『静寂の森』さんからのお便りですか。
なになに?邪神勢力が拠点を造ってて、自分の世界の英雄だと拠点を攻略出来ないだって?
なるほどなるほど。
籠城する相手を攻めるのはキツイって、よく聞きますよね。
でも大丈夫ですとも!
私がご紹介させて頂くのは、『崩れる壁』さんの所の英雄です!
こちらの世界の英雄なら、重い物を持って空を飛べるので、相手に対空型邪神の手先が居ない限りは簡単に拠点を攻略出来ます!
やり方は簡単、空から岩を落とすだけ。
それだけで、邪神勢力の拠点なんて押しつぶしちゃえますよっ!
ということで、『崩れる壁』さんに話を通して仲介させていただきますねー。
……。
すげぇな、おい。
なんか日が経つに連れて、気力がみなぎってくるように感じてくるぜ。
流石に七日間も睡眠時間削ってデスマしてると、色々ヤバくなってくるな。
もはや、四六時中深夜のテンションって感じだ。
今なら俺は、空も飛べるんじゃねぇかな?
ビルの屋上から飛んでみたい気分だ。
仕事が減らねぇ。
もう、余裕で三桁は依頼を片付けてるはずなのに、メッセージボックスの依頼が一向に減らねぇ。
というかもう、残りの依頼数を確認するつもりにすらならねぇ。
一度確認したら、そこで萎えて気力が尽きそうで怖いし。
でもまぁ、仕事の方は順調だ。
メッセージボックスから緊急性の高い依頼を抜き出してメモって、それを順番に対処していく。
中でも温厚そうな神様が相手な時には同盟員の断罪の斧さんに割り振って、残りは俺が処理していく。
相手が求めるものが何かを聞いて、それに合った英雄や資材をメモする。
何があれば対処できるかも分からない場合は、相手の状況をメモって秘書に投げて意見を求める。
んで、俺が解決出来そうな依頼なら、必要になる資材を信仰で買って在庫の英雄の魂を持ってきて、それを必要とする神様に送っていく。
依頼が完了した神様には、その世界で手に入る英雄とかの情報を聞いておいて、他の依頼で必要になったら協力してもらえるように話を通しておく。
もしも対処法を検討した結果、俺の手持ちじゃどうしようも無さそうな案件だったなら、そうやってキープしてた神様に協力をお願いする。
……うん。
こうして並べてみると、分かり辛いな。
簡単に言うと、アレだ。
一番、緊急の依頼を見繕います。
二番、その中で楽そうなのは、同盟員に丸投げします。
三番、相手の詳しい状況を聞きます。
四番、それをメモって秘書に丸投げして、検討させます。
五番、俺が出来るヤツなら、資材や在庫の魂を送ります。
六番、ダメそうなら、以前依頼解決した神様に協力をお願いします。
七番、依頼完了したら、今後は協力を依頼出来るように話を通して終了です。
とまぁ、そんな感じだ。
最初の方は、かなり辛かった。
依頼の処理に慣れてなかったのもあるが、出来るだけ俺の手持ち英雄で対処しようとしていたからだ。
多分二日目の夜ぐらいまでは、秘書達に資材計算ばっかりさせて、依頼内容の検討は俺が全部やってた感じだったしな。
でもまぁ。
流石にこんだけ依頼をこなしてると、俺の手持ち資材もなくなっちゃうわけで。
一応運営に泣きを入れて、幾らかは後払いで資材提供してもらったんだけど、それでも在庫の英雄の魂がなくなっちゃったわけで。
そうなると、俺が出来るのは仲介だけになってしまった。
依頼を聞いて、必要な英雄や資材を考える。
そして、以前に助けた神様の中から解決出来そうな神様に話を持っていき、「交渉は仲介するし俺の取り分なしで良いから協力してくれません?」とお願いする。
相手の神様は俺に助けてもらって恩がある神様だから、多くの場合はオッケーをもらえる。
そしてあとは、神様同士の間に立って、契約の仲立ちをしてあげるだけだ。
とは言っても、神様の間に立って仲介するのはかなり骨が折れる。
どいつもこいつも気が強いというか、他の神様への対抗心が強いというか。
そんな神様連中をなだめながら話を進めるのは、大分神経を使って疲れるのだ。
断罪の斧さんも話しやすい相手ではあるが、こういう交渉事になるとプライドが邪魔するみたいで、仲介役にはあんまり向いてないみたいだしなぁ。
なので、殆どの依頼の仲介を俺がやることになってしまった。
そして現在。
依頼はまだまだ残っている。
既に資材のやり取りがなくなったので、場所は倉庫から執務室に移してはいるのが、勤務体制は未だにデスマーチ状態のままだ。
俺は睡眠時間四時間のままで毎日神様の契約を仲介してるし、秘書も二人体制で普段の都市管理と俺から丸投げされる依頼の検討や、協力をお願いする神様向けの必要資材の計算やらをしている。
つまりは、仲介だけになって最初よりは大分楽にはなったんだが、それでも相当に辛い。
というか七日続けてやってる疲労がある分、最初の頃と比べても辛さはプラマイゼロって感じだ。
結論。
忙しすぎる。
となると。
どうする?
癒やしが必要だ。
ガチャが必要なのだ。
そう、ガチャだ。
ガチャを引きたいのだ。
神様の仲介交渉ってのは、かなりストレスが溜まる。
そのストレスを解消するためにも、俺はガチャを引かなければならないのだ!
「……ナルキア、エーリッヒ。」
「どうしましたの?」
「なんでしょうか、ファントム様。」
俺は現在執務室に居るナルキアとエーリッヒに声をかける。
秘書たちは俺と違い十時間勤務の二交替制なので、俺ほど疲労は見られない。
「君達には苦労を掛けていると思っている。そこで、一つ提案があるのだ。」
ガチャを引く理由は、どうしようか。
さっきまでは、秘書達も疲れてるだろうから、「追加の秘書を雇うためにガチャをします。」って建前を通す予定だった。
でも実際に声をかけ、顔を見て気付いた。
こいつら、あんまり疲れてねぇじゃん。
どうも睡眠時間が足りなくて、頭が上手く働いてないようだ。
疲れてるかどうかを確認する前に声をかけてしまった。
声を掛けてしまったからには、何か言わなければならない。
そして出来れば、ガチャを引く方向の話にもっていきたい。
「秘書をもう一人追加するために、ガチャを引きたいと考えている。」
ダメだ、アカン。
何も言い訳が思いつかん。
普段なら俺の言い訳スキルを発揮して、こんな土壇場でもいい感じの言い訳が出るんだが。
流石に頭が回ってないのに、上手い言い訳なんて浮かんでこない。
「えっと……我々は特に人手が不足してると思いませんが。」
エーリッヒがそう応える。
そりゃそうだ。
普段より人数が半分に減ってはいるが、二交替制で対処しているので時間当たりの仕事量は殆ど変わっていないのだから。
しかも、追加される仕事も依頼の検討や資材の計算ぐらいで、それにも慣れてきた今では、秘書達は苦もなく仕事をこなしてくれる。
そんな中で、秘書を追加する理由なんてないのだ。
「どうしたんですの?突然秘書を追加するだなんて。」
追い打ちをかけるように、ナルキアがそう聞いてきた。
やべぇ、何て言えばいいんだろう。
何も言い訳思いつかんぞ。
どう言えばいいんだ、ホント。
だが、ここが正念場だ。
頭を回せ。
とにかく、何か言い訳を。
全ては、ガチャを引くために!
「……今は、問題ないだろう。」
少しだけ、思いついた。
今後のためだ。
今後のために、と言えばいいんだ。
この続きはなんて言えばいいのか、思いついてないけど。
あとは、流れとフィーリングでなんとかするしかない。
「だが今後も……同盟で依頼を受け続けることを考えると、今まで以上の忙しさが予想される。」
多分そんなこともないだろうけど、取り敢えず言っておく。
どうせこの忙しさは今がピークだろうし、今後はちょいちょい依頼が来る程度になると思う。
でも今後のためってことになると、こう言うしかないんだよね。
「その時も……今と同じように、総動員すれば対処は出来るだろう。だが……もしも、この世界でも緊急事態が起きたらどうする?」
おっしゃ。
なんか、いい感じに頭が回転し始めたぞ?
なんか深夜のテンションが極まってトリップしたような気分だ。
今なら幾らでも言い訳が思いつきそうな気すらしてくるぞ!
「そんな最悪の事態を想定した時、私達は準備をしなければならないのだ。秘書を増やすことで、どんな時にも対処出来るように。」
「ですけど、それは今でなくてもいいことじゃありませんの?もっと落ち着いてからの方が良いですわ。私も新しい英雄を出迎えるのでしたら、もっと身なりを整えておきたいですもの。」
お前はいつもと格好が変わらんだろうが。
いや、お前の中では微妙な違いがあるのかも知れんが、そんなもん知らんわ。
俺はいま、ガチャが引きたいんだ。
と、言うわけにもいかないか。
えーっと、今じゃなくていい、と?
いやいや、そこは逆にだな。
「今だからこそ、だ。今ならば、この忙しい状況に新しい英雄を馴染ませることが出来る。最初に辛い状況を知っているのとそうでないのでは、覚悟も変わってくるだろうからな。」
これでどうだ?
パンクを通り越してハイになった頭にしては、いい感じの言い訳になってると思うんだが。
というかこれでダメだったら、これ以上どうしようもないぞ。
最悪の場合、ガチャを強行するか?
俺はいま、ガチャが引きたいんだ。
「……まぁ、それも悪くはありませんわね。エーリッヒさんはどう思いますの?」
「そうですね……出来ればクロード中尉や高柳中尉も居る時が良いのでしょうが、そういった事態にも慣れてもらうためと考えれば、悪くはないかと。」
お、おお。
おおおおお!
やった!
俺は、秘書二人という障害を、無事突破したぞ!
これで、ガチャが、引ける!!
「よし。ではガチャを選択する。少し待っててくれ。」
となったら、気が変わらない内にガチャだ。
今回は確実に秘書を引かないとだから、智謀が高い英雄が出るガチャを探してっと……。
あったあった。
☆5以上限定で、智謀が高い英雄しか出ないガチャだ。
これなら秘書適正の高い英雄が出てきやすいだろう。
「☆5以上限定で、智謀が高い英雄が出るガチャを引く。まぁ、智謀が事務能力に直接関与しているわけではないから、必ずしも秘書に向く英雄が出るというわけではないがな。」
一応予防線は張っておく。
秘書を出すと言っておいて、秘書に向かない英雄が出てきたら困るしな。
神がかっている今の俺の言い訳スキルは、一分の隙すらも残さない。
クハハハハ……テンションが上がってきたぞぉ!
新たな英雄を、新たな女性英雄を!
そして、職場の空気にもっと潤いを!
この黄土色になんか変なのが混じった空気に、清浄な風を!
「ふっふっふ……では、いくぞ。」
「「はい。」」
「レッツ、ガチャゴー!」
「「レッツ・ガチャゴー!」」
テンションのままに号令をかけ、俺はガチャを回す。
ガチャ抽選機が部屋の中央に現れて、カプセルを一つ吐き出して消えていった。
カプセルからは、赤い光が漏れている。
「こ、これは……!」
思わず声が出てしまった。
急いでカプセルを手に取り、英雄の魂である赤い石を取り出した。
赤い石。
それは、☆7~☆9の英雄の魂の色である。
☆1~3は白で、☆4~6が青なのだ。
赤い色の魂は、この世界に来てから初めて見るものだった。
「☆7以上の英雄、ですか?」
「そうなるな。」
エーリッヒの声になんとか返事を返すが、俺は手が震えそうだ。
まさか、☆5以上確定のガチャで、☆7以上が出て来るとは思ってもみなかった。
今回は物欲とか一切何も考えずに引いたから、それが良かったんだろうか。
何はともあれ、情報を『開示』しなければ。
もしかしたら、☆7どころか☆8や☆9も有り得るのだから。
さぁ、それじゃあ行くぞ……!
「情報『開示』!」




