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ソーシャルな神様、始めました  作者: 九重市 九十九
第二部:神様、働きます。
30/59

順風満帆なんて幻想だ。


------------------------------------


xx/xx/xx.xx:xx:xx:xx name.断罪の斧

 分かった。私もその同盟に参加しよう。

 これからは宜しく頼むよ、盟主殿。


xx/xx/xx.xx:xx:xx:xx name.記憶の無い幻影

 有難うございます。断罪の斧さんが加わってくれるのは心強いです。

 大筋は先程の通りですが、細かい話は運営からメッセージで通達が来ると思いますので、そちらで確認して下さい。

 何か疑問があれば私宛てに個人チャットかメッセージでお尋ね下さい。


------------------------------------



 私はチャットを見終わり、神様ネットワーク管理画面を閉じる。


 以前に私の窮地を救ってくれた、『記憶の無い幻影』。

 彼から持ち込まれた話は、私にとっても喜ばしい申し出だった。


 『神様救済同盟』。


 記憶の無い幻影と名乗る彼が新たに創る同盟は、ただの同盟とは違う。

 運営機関公認のもと、同盟員同士の互助を目的としたものではなく、同盟以外の者をも救うという崇高な目的を持った同盟なのだ。




 私も彼に救われてから、他の神を手助けしようかと考えたことはあった。

 だが私では、彼のように他の神々と上手く交渉が出来なかった。

 どうしてもプライドが邪魔をして、高圧的な対応をしてしまうのだ。

 それは相手の神も同様で、こちらの威圧感を感じ取って話が拗れてしまうことが殆どだった。


 だが彼は、神同士の間を上手く取り持ってくれる。

 プライドが低いというわけではないのだが、丁寧な言葉遣いと裏を感じさせない誠意ある対応が、追い込まれて疑心暗鬼になった神々に、話を聞くつもりにさせるのだ。


 あまりに丁寧過ぎて逆に騙すつもりではないかと疑いそうにもなるが、それでも話の続きさえ聞いてもらえれば、「もしかすると、本心から助けようとしてるのでは?」という気持ちになってくる。

 実際の契約も割高ではあるが常識の範囲内で行われ、何より恩を着せようと一切しないのが素晴らしい。


 そんな彼が、運営の公認の元で救済同盟を立ち上げようというのだ。

 私のような交渉下手でも、彼の手助けをすることで他の神を助ける一助となれるかもしれない。

 そう思うと居ても立ってもいられず、すぐに同盟への参加を決意した。




 まさか私が、再び同盟に加入することになるとは思いもしなかった。


 私はチャットで使う偽名の通り、悪に対する断罪を司る神だ。

 例え相手が神であっても、悪に関わる者に対しては、どうしても嫌悪感を抱いてしまう。

 だから、どんな神が居るのか分からないような同盟には、加入したくなかったのだ。


 だがこの同盟であれば、悪に偏った神が加入することはまず無い。

 なにせ、他の神を助けるための同盟なのだから。

 自己中心的な神や他者を貶めることを好むような悪神が、この同盟に参加するわけがない。

 きっとこの同盟は、私にとって居心地の良い同盟となるだろう。


 それに、他の神々を救済するごとに運営から信仰宝珠をもらえるというのだ。

 信仰宝珠は英雄を強くするならば必須のアイテムだが、そう多く手に入るものではない。

 一度管理世界を窮地に追い込んでしまった身としては、英雄の強化手段が増えるのは大いに歓迎すべきである。

 もう二度と、あのような醜態を晒したくなんてないからな。


 他の神々の助けとなり、信仰宝珠も手に入る。

 更には彼から交渉の手腕を学ぶ機会もあり、多くの神を救うことで広いコネクションを持つ彼と同じ同盟員となれる。


 悪いことなど一つもない。

 それならば、参加しないなんて選択肢は私にはないのだ。


 何より彼は、私を最初の同盟員に選んでくれたのだ。

 彼が信頼して私を誘ってくれたのに、どうして断ることが出来ようか?

 まだ結界が残っているような神様ネットワーク初心者であるにも関わらず、他の神に救いの手を差し伸べる高尚な神に、私は仲間として選ばれたのだ。

 他の神がどう見るかは知らないが、私にとってこれほど名誉なことはない。




 執務室で働く官僚を眺めながら、私はいつの間にか笑みが零れていた。

 久しぶりに愉快な気分だ。


 仕事は官僚に全て任せてあるが、たまには私も彼らの仕事に手を出してみようか。

 今後は救済のために、資材や英雄の数を把握する必要もあるだろうしな。


 書類と格闘していた人間の官僚を一人呼び付け、私は英雄や資材に関わる資料を持ってくるように告げた。




 ―・―・―・―




 いやー、良かった良かった。

 一番話がしやすそうな断罪の斧さんを同盟に誘ったら、思った以上に好感触で、すぐに同盟加入を決定してくれた。

 おかげで同盟創設も思ってた以上に早く終わって、あとは救済して欲しい神様からメッセージが来るのを待つばかりだ。


 同盟を創るのは思ってた以上に簡単だった。

 参加する神様が二人以上居て、誰が盟主になるかが決まってさえいれば、申請してすぐに同盟を立ち上げられるらしい。

 普通だと、どの神様が盟主になるかでイザコザが起きて大変なんだそうだが、今回は俺が盟主で確定だったので話がスムーズに進んでくれた。

 申請がすんなり通るのって良いよね。

 元居た世界のお役所には、神様ネットワーク運営の辣腕を見習ってほしいものだ。




 同盟の話が運営から来たのが昨日の昼のこと。

 それから秘書達の意見も聞いたんだが、反対意見も一切出ず、すぐにオッケーが貰えた。

 そして断罪の斧さんに同盟加入を聞いてみたら、幾つか質問されたぐらいで、殆ど時間を掛けずに同盟に加入するとの返事を貰えたのだ。


 断罪の斧さんの同盟加入が決まってすぐに運営に同盟造りますとメッセージを送ったら、あとはあっちで細々した手続きをしてくれると言ってくれた。

 そして同盟が出来たのが、同盟の話が出てから翌日の朝である、ついさっきだ。




 ここまで話がスムーズに進むと、何か裏があるんじゃないかと疑いたくなるな。

 とは言っても、今回の話を持ち込んできたのは運営だからな。

 運営が詐欺行為を働くなんて、そんな信用をガタ落ちさせるようなことはしないだろ。


 条件も何度も見直して、細かい疑問は運営にメッセージで問い合わせて質問したし、何も裏がないのは確認済みだ。

 あとは、同盟宛てに届く困ってる神様の依頼をこなしていくだけである。



「ファントム様、今日はやけに機嫌がよろしいですね。」



 秘書のエーリッヒが俺にそう聞いてくる。

 秘書達はいま、神様救済同盟に依頼が舞い込んだ時のために余剰資材の在庫状況をチェック中だ。


 困ってる神様は、大抵は資材や信仰が少ない状況だからな。

 後払いってことで先にこちらが資材やら英雄の魂やらを送らないといけないので、在庫を豊富に用意しておく必要があるのだ。



「ああ、まぁな。何せ、神様救済同盟が始動する日なんだ。この同盟のことは運営が宣伝してくれるらしいからな。待っているだけで相談が舞い込むのだから、私も楽になるから嬉しいさ。」



 正直言って、困ってる神様を見つけるのって結構しんどいんだよな。

 神様ってプライド高い神が多いから、チャットに困ってるって書き込む神様が少ないんだよ。


 だから俺は、全体チャットだけじゃなくて取引チャットの方も読んで、困ってる神様を探してたんだ。

 取引チャットでは欲しい英雄や売りたい英雄を書き込むんだが、英雄を欲しがってる神様のチャットをよく見てみると、たまに困ってるっぽい神様が見つかるんだ。


 それに対して一件一件確認のチャットを送って、手探りで困ってる神様を探さないといけないのだから、その労力とストレスはかなりキツいもんだ。


 まぁ、営業なんてのは足で稼ぐもんだって言うしね。

 元居た世界の営業職の人達も、こんな苦労をしてたんだろうね。

 俺は営業職じゃなかったんだけどな。


 そんな面倒な、困ってる神様捜索活動が、だ。

 今後は相手の方から依頼してくるって言うんだぞ?

 あの手間やストレスがなくなるって考えるだけでも、気分が爽快になるってもんだ。



「流石はファントム様ですね。この世界だけでなく、他の世界の救済もなされるとは。」



 高柳君、褒めるでない。

 本音を言ったら、困ってる神様から信仰をもぎ取って、ガンガンガチャ資金を貯めたいだけなのだ。

 そんな純粋な目をしながら褒められると、俺の良心がギリギリと胃の壁を削っていくじゃないか。



「まぁ、あれだ。この世界もまだ戦力が不足しているしな。戦力増強のためにも、得られる時に信仰を集めておくのも大事なことだ。」


「そうですわね。信仰が有れば緊急時に資材も確保出来ますもの。私の肌に潤いを保つためにも、ストレスなく安心して過ごせるように蓄えを用意するのは大事なことですわ。」



 クッ……。

 信仰は貯めて資材を買うための資金にってことは、分かっててわざと言わなかったのに。


 俺は出来るだけ、ガチャに信仰を使いたいのだ。

 何かの時のために多めに信仰を残しましょうなんて言われたら、引きたい時にガチャを引けないじゃないか。


 ただでさえ、高レア女性英雄を確実に出すためにはかなりの信仰を貯めなきゃならんというのに。

 いや、緊急用に信仰を残しておくのも大事だとは思うけど。




 秘書と雑談をしていると、突然神様ネットワークの画面が現れた。

 画面の端には、新着メッセージのアイコンが点滅している。


 おお、さっそく同盟に依頼が舞い込んできたか。

 流石は運営が宣伝してくれただけのことはあるな。

 どうやって宣伝したのかは知らないが、ちゃんと依頼が来てるってことは色んな神様の目に届くように宣伝してくれたのだろう。


 同盟宛ての依頼メッセージは、俺に直接届くように設定してもらっている。

 俺が依頼を見て選別して、俺が処理出来そうなら俺が処理して、俺が出来そうにないものは断罪の斧さんにメッセージを転送するのだ。


 これなら、俺が一番最初に依頼を見て選ぶことが出来る。

 つまりは、美味しそうな依頼を俺が優先的に受けることが出来るのだ。


 いや、流石に美味しい依頼を独り占めするのはアレだから、断罪の斧さんにも美味しいのをちょいちょい譲るつもりだけどね?

 長く儲けたいのなら、誰もが幸せになる結果を模索するのが大事だしな。


 俺はさっそくアイコンを選択して、メッセージボックスを開く。




 おお、本当に神様からの依頼が来てるぞ!

 よし、取り敢えず内容を見てみようか。


 って、ん?

 内容を見ようと思ったら、また新着メッセージが来たな。

 一気に二件も依頼が来ちゃったか。

 でも大丈夫だ。二件ぐらいなら俺一人でも楽勝でこなせるさ。

 とは言っても、両方とも俺がやっちゃうと断罪の斧さんに悪いからな。

 内容を見比べてみて、片方は断罪の斧さんに送って……。


 ってまた来たよ、新着メッセージ。

 しかも今度は二通同時に。

 合計四通か。まぁ割り切れる数字なら振り分けやすいからいいね。

 とにもかくにも、中身を見てから……。


 ってまた新着メッセージか!

 今度は一件だけ……ってまた追加!?


 ……ちょっと待て。

 おい、また新着来たぞ。

 とか言ってる間にまた……っておい、どんどんメッセージが来るぞ?


 もしかしてスパムか?

 いやいや、流石にネットじゃないんだからそんなことがあるわけ……。




 ってことは。

 もしかして、もしかすると。


 これ全部、神様からの依頼?




 新着メッセージの受信が止む気配がないので、取り敢えず一つ一つの内容に軽く目を通す。


 全て、困っている神様からの救済依頼や問い合わせのメッセージだった。

 イタズラは一切なく、真面目なメッセージしか存在しない。




 おい、運営よ。

 これちょっと、メッセージが来すぎじゃないか?

 お前一体、どんな方法で宣伝したんだ?


 そう思っていたら、膨大な数のメッセージの一つに、運営の宣伝方法が書いてあった。


 どうやら運営は、全ての神様に宣伝メッセージを一斉送信したらしい。




 ふっざけんな!!!




 運営よ。

 お前は自分の影響力を甘く見すぎだ!


 運営からメッセージが来たら、邪神の大侵攻がまた来たのかと思って誰もがチェックするわ!

 そんでもって、運営公認で困ってることの相談に乗る同盟がありますだぁ?

 問い合わせや依頼が殺到するに決まっとるわ!!


 俺は、もっとこう。

 全体チャットで一言宣伝発言したりとか、困ってる神様に目星を付けて話を持ちかけたりとか、交換所やらに宣伝のリンクを載せたりとか。

 そういう、常識的な宣伝方法だと思ってたんだよ。


 それが、よりにもよってメッセージの一斉送信だと?

 そりゃあ、誰もがチェックする素晴らしい宣伝方法だよ。


 だがな。


 こっちは二人しか居ないんだぞ!?

 こんな大量の依頼を捌き切れるかっ!!!




 とは言えど、出来ませんとは言えないのが辛いところだ。

 何せこれらの依頼は俺達の初仕事で、これらの処理が俺達に対する信用に直結するのだから。

 俺一人の評判が下がるならまだ良いが、下手すると同盟員になってくれた断罪の斧さんにも飛び火しかねない。

 もう、依頼を処理するしかないのだ。

 そうじゃないと、悪評が出てしまうのだから。


 こうなったら、取り敢えず一斉送信で、依頼がパンク状態だから緊急の依頼から順次受けますって送って時間を稼ぐか。

 そのあとは一件一件精査して、俺と断罪の斧さんに割り振って、出来るだけ同時進行で複数の依頼を片付けて……。


 ……ああ。

 これはもう、アレだな。



「秘書の諸君。大変残念な知らせがある。」


「ファントム様、どうなさいましたか?」



 不安そうな顔で、こちらを見てくるクロードよ。

 君は俺の次の言葉で、その顔を絶望の色に染めることだろう。


 だが、安心して欲しい。

 君だけを地獄に送るわけではない。

 私も、他の秘書達も、みんなで一緒に地獄に落ちるのだ。


 その地獄の名は……。



「すまんが、数え切れない量の依頼が舞い込んできた。今日から全員、デスマーチだ。暫くはキツイ仕事になると思ってくれ。」



 そう。


 デスマーチの始まりだ。



 大変申し訳有りません。

 今後は不定期更新になると二話前で宣言したばかりですが、やっぱり出来る限り毎日更新していこうと思います。


 理由としましては、間が空きすぎると私がサボってしまい、続きを書くモチベーションが萎えてしまう点と、やはり多くの人に見てもらうためには毎日更新を心掛ける努力が必要だと考えたからです。

 現在の書き溜め分は5月10日までの八話分ありますので、それまでは毎日更新を確約させて頂きます。

 というか、既に予約投稿しました。


 朝令暮改な行動となってしまい、のんびり読もうという心構えを持っていた方には申し訳ありませんが、上記の理由がありますのでご了承頂ければ幸いです。

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