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ソーシャルな神様、始めました  作者: 九重市 九十九
第一部:世界の管理、始めました。
28/59

この世界に来てから、色々とあったなぁ。


「我々は、間違っていたのかも知れんな。」



 クロード中尉が、そう呟く。

 男性英雄の宿舎ロビーで、私とクロード中尉と高柳中尉が集まって、歓迎会の反省会を開いている。


 私達の議題は一つ。

 主賓であるはずのシュナ嬢やジョン少佐を無視して、ファントム様を第一に扱ってしまったことだ。

 そのことで私達は、ファントム様から直接指摘を受けてしまっている。



「そうですね。ファントム様に気を使いすぎて、周りに目が向いていなかったみたいです。」



 高柳中尉がそう言って肩を落とす。

 私達の中では最も頭の回転が早い高柳中尉でも、今回のミスに気付けなかった。


 いや。

 高柳中尉は、我々の中で最も歳下なのだ。

 十七歳の彼に気付きを求めるのは、酷な話だ。

 対人関係の経験が彼より多いはずの、私やクロード中尉が気付くべきだったのだろう。



「いや、違う。そこも問題だが、それ以前の問題だ。」



 クロード中尉が高柳中尉の考えを否定する。


 私も高柳中尉と同じ意見だったので、驚いた。

 それ以前の問題とは、何なのだ?



「演目中に寝てしまったシュナ嬢に対して、ナルキア嬢が気にしてないと言った時に気づいた。我々は、ファントム様が気を使って下さるのなら、逆にファントム様に気を使おうと考えていたが、そうじゃないんだ。我々はファントム様に気を使われないようにするのが大事だったんだ。」



 クロード中尉の言葉を聞いて、頭に疑問符が浮かぶ。


 私達はこれまで、ファントム様に心労を掛けないようにファントム様に気を使ってきた。

 今まで神殿の外に出なかったファントム様を連れ出したりと、色々とファントム様を接待しようとしてきたのだ。

 確かにそれは、ファントム様には喜んで貰えていた。


 だが、クロード中尉はそれが違うというのだ。

 それは、どういう意味なのか。



「ですが、それでもファントム様は喜んでいらしたと思いますよ?私は間違ってるとは思わないのですが。」


「いや、根本的に違う。確かに我らがファントム様を喜ばせようとするのは間違っていないし、それはファントム様の反応を見ても嬉しいと思って頂けているだろう。だが、それは目的を履き違えてはいないだろうか?」



 目的を履き違える?

 私達は、我らに気を遣って苦労しているファントム様のために、色々と気遣いをしてきたつもりだ。


 もしかして、その気遣いの方向性が間違っているというのだろうか?



「目的を履き違える、ですか?」


「そうだ。我らの第一目的は、ファントム様の心労を和らげることだ。我らが気を遣うのはそのためだが、それだけではなく、ファントム様に気を遣わせないという気遣いが疎かになっていたんじゃないかと思う。」



 クロード中尉の言葉を聞いて、ハッとした。


 そうか、そうだった。

 私達の気遣いの方法がどうこう以前の問題だ。

 私達は、ファントム様の疲れを癒そうと色々行動してきたのだが、その結果としてファントム様に気を使わせて、疲れさせてしまっては意味がないのだ。



「た、確かに。今回の歓迎会でのミスも、目的を忘れてしまった結果だったのかも知れません。」



 私はそう呟き、歓迎会でのことを思い出す。


 今回の歓迎会では、前回以上の催しを披露しようと努力していた。

 だがそれは、ファントム様に見せることでファントム様に喜んでもらおうと思っての行動だった。

 シュナ嬢とジョン少佐の歓迎会という、会の趣旨に合わない行動目標だ。


 なぜそうなってしまったのかというと、私達がファントム様の心労を取り除くことしか考えていなかったからだ。

 つまり、一つのことに拘りすぎて、周りが見えなくなってしまっていたのだ。



「その点は、ナルキア殿は良い対応の仕方だったと思う。内心がどうだったのか分からないが、少なくともファントム様の前で醜態を見せることはなかった。」



 クロード中尉がこのことに気付いた理由である、ナルキア嬢のシュナ嬢に対する対応。

 ナルキア嬢の演目中に寝てしまったシュナ嬢に対し、我ら軍人英雄とファントム様は、ナルキア嬢が怒ってしまうのではないかと戸惑っていた。


 だが、ナルキア嬢はあっけらかんとした態度で、シュナ嬢に文句を言うでもなく、歓迎会が終わった後はシュナ嬢を部屋まで送り届けてくれたのだ。


 ナルキア嬢の見た目は子どものように見えるが、実際には十九歳だ。

 しかし十九歳だとしても、年齢に見合わない大人の対応だったと言えよう。



「我々もナルキア殿のように、もっと大人にならなければならないのかも知れないな。」



 最年長で三十一歳のクロード中尉が、自嘲気味に笑いながらそう言った。

 私も二十八歳なのでそれを笑えず、思わずクロード中尉に倣って自嘲の笑みが溢れた。




 私だけではなく、軍人英雄達は皆、戦乱の世を生きてきた。

 戦うことが人生の大半を占めて、人間らしい生活を送っていたとはとてもじゃないが言えない。


 だが今は、戦乱の世ではないのだ。

 ファントム様の指揮の元で、我らは軍人ではなく英雄として、生きている。

 ファントム様の統治のお陰で戦力も豊富で、我々の日常は平和と言って差し支えないものなのだ。


 つまり我々は、平和な日常で生きていかなければならない。

 ずっと軍組織の中で暮らし、戦場を生き続けてきた我らにとって、それは望んで止まないものであったが、同時に全く知らない未知なものでもあるのだ。


 ……この歳になって新しいことを学ぶのは、正直言って少し辛い。

 だが、これからは少しずつ、こういった機微にも気付けるように努力しなければならないのかも知れない。


 私達の戦いはまだ続いているが。

 以前とは違い、戦いの終わりも見えてきているのだから。




 ―・―・―・―




 私は一人、女性用宿舎のロビーであの人が来るのを待っていた。

 昨夜の歓迎会で失礼なことをしてしまった、ナルキアさんが来るのを。




 歓迎会は、私とジョンさんのために開いてもらったものでした。

 まさか、歓迎会を開いてもらえるとは思ってなかったので、それは私にとってもとても嬉しいことでした。


 ですが、私は睡魔に負けてしまい、歓迎会の途中で寝てしまったそうなのです。

 朝起きると、私は自分の部屋のベッドで寝ていました。

 食堂で出会ったジョンさんに話を聞くと、ナルキアさんの演目中に寝てしまって、演目が終わってからナルキアさんに部屋まで運んでもらったらしいのです。


 英雄となる前でしたら、私にはお供の人が付いていたのでその人にすべてをお任せしていました。

 ですが今は、お供が居ません。

 それなのに私は、この自堕落な性格のせいで同じ英雄のナルキアさんに迷惑をかけてしまったのです。


 ……実は、私はナルキアさんが少し苦手です。

 私が悪いというのは分かっているのですが、私生活が自堕落な私を見ると、ナルキアさんは私にしっかりしなさいと叱ってくるのです。


 邪神の手勢と戦うことだけを求められていた私には、生活力がありません。

 そんなことは全て、お供がやってくれていたのですから。

 防犯のためにお供を立ち入らせない私室は汚かったのですが、それ以外は全てお供が世話を焼いてくれるので、私は何もする必要がありませんでした。


 ですが、もうお供は居ないのです。

 なのでナルキアさんの言うとおり、私がもっとしっかりしないといけないのだと思います。


 でも、私は知らないのです。

 しっかりするには、どうすればいいのかなんて。




「あら、シュナさん。そんな所で何をしていますの?」



 ナルキアさんが、宿舎の外からやってきました。

 買い物をしてきたのか、両手に袋を持っています。



「あっ、ナルキアさん。」


「あなた、またそんな格好してますの?もっと身だしなみに気を使わないと、私のように美しくあれませんわよ?素材は良いのですから、もっと身なりを整えないと勿体無いですわ。」



 ナルキアさんはいつもの調子で話してくれる。

 昨日私が迷惑をかけたばかりだというのに。


 私服姿の私は、ナルキアさんから見ると良くないみたいです。

 袖なしのシャツと丈の短い半ズボンは、気楽でとても気に入ってるのですが。



「あの、ナルキアさん。昨日は、どうもすみませんでした。」


「昨日、ですの?」



 私は怖気づく気持ちを奮い立たせて、ナルキアさんに謝った。

 なのにナルキアさんは、何を謝られているのか分からないといった風に、キョトンとした顔でこちらを見ている。



「えっと、昨日は、ナルキアさんの演目中に寝てしまったようで……しかもそのあと、私を部屋まで送ってくれたみたいで……。」


「ああ、そのことですの。私は別に気にしていませんわよ?」



 私が何を謝ったのかを言っても、ナルキアさんはそれを気にしてないと言ってくる。



「まぁ、私の華麗な舞いを見れなかったのは残念だったかも知れませんわね。でも、シュナさんが眠そうにしてたのは演目の前から分かっていましたもの。眠いのを我慢させて見せるほど、私は傲慢な性格じゃありませんわよ?」



 そう言って微笑んでくれるナルキアさん。

 その笑顔は本物で、なんの衒いもないと言っているかのようでした。



「そもそも歓迎会というのは、歓迎する主役を楽しませるものですのよ?そんな風に謝られては歓迎会を開いた意味がありませんわ。ほら、シュナさんも笑ってくださいな。」



 そう言われて、私は自分が暗い顔をしていたことに気づきました。

 ナルキアさんの言うとおり、歓迎してもらったのに暗い顔をしていては、歓迎してくださった英雄の皆さんに失礼です。


 心を落ち着かせて、何回か深呼吸をしてから、私はナルキアさんに微笑み返しました。



「……うーん、笑わされてる感じがしていますわね。」


「えっ、だ、ダメですか?」


「冗談ですわよ。まぁ、シュナさんの笑顔も、私ほどじゃありませんけど綺麗でしたわよ?もっと笑顔でいた方がいいですわ。」



 笑顔で居たほうがいいなんて、今まで言われたことがありません。

 戦場で私に求められるのは、戦うことだけでしたから。



「そ、そうですかね?」


「ええ、勿論ですわ。さて……今度は、その笑顔に見合う衣服を用意する番ですわね。」



 そう言って、ナルキアさんは手に持っていた袋の中から一着の服を取り出した。



「えっ?衣服を?」


「そうですわ。昨日は私の美麗な舞いを見そびれたようでしたので、代わりに服をプレゼントしようと買ってきましたの。サイズが分からないのでゆったりした服しか選べなかったのは残念ですけど、これでシュナさんも美しさに磨きをかける楽しさを知ってもらえれば嬉しいですわ。」



 私のために、服を?


 そう言ってナルキアさんが広げて見せてくれた服は、白を基調にして水色のラインが入ったワンピースでした。

 腰の部分がヒモで絞れるようになっていて、背中側でリボン結びしてあります。



「どうです?気に入らないのでしたら、次は私と一緒に店まで行って一緒に選びましょう?」


「い、いえっ、気に入らないなんてとんでもないです!……ありがとうございます。」



 誰かに何かを贈ってもらうなんて、これが初めて。

 生きてた頃は戦うことしか教えられなくて、誰かに優しくしてもらうことなんて、なかったのに。


 きっと私は、このことをずっと忘れない。

 このワンピースは、擦り切れて着れなくなっても、いつまでも大事に持っていようと思う。


 私は、英雄になれて、本当に良かった。




 ―・―・―・―




 歓迎会が終わって二日経ち、執務室にはいつもの仕事風景が戻ってきていた。


 軍人秘書達は黙々と仕事をこなし、ナルキアはいつも通り三枚の大鏡の前でポーズを取りながら仕事を進める。

 そして俺は、神様ネットワークを眺めて神様のチャットで情報を得る。


 新しく結界が解放されてから、もう一ヶ月近くが過ぎようとしていた。

 前線に居る下位魔族は倒せてはいないけれど、シュナのお陰で撃退は出来ていると報告があったし、特に問題はなさそうだ。


 英雄達も徐々に育ってきて、今では低レアリティの初期ガチャ三人衆は新たに創造する必要も殆どないくらいに前線は安定してきている。

 出来ればジョンの人数を増やしたいところなんだが、流石に☆4は出難いのか、最初に出たジョン以来、まだ新しいジョンは出てきていない。


 ……新しいジョンって字面が酷いな。

 いやまぁ、文字通りなんだから、どうしようもないんだがな。



「っと、もう昼か。」



 机の上にある時計を見て、もうすぐ十二時になることに気付いた。

 以前は暇すぎて時間が経つのが遅く感じたのだが、神様ネットワークのチャットを見るようになってからは、時間が経つのが早くなった気がしている。


 うん。

 やっぱり、過度な怠惰は苦痛だな。

 適度に何かをしていないと、人は辛く感じるものだ。




 執務室の扉がノックされた。

 どうぞと応えると、扉が開き誰かが入ってくる。



「えっと、ナルキアさんは居ますか?」



 そう言って顔を見せたのは、鎧を纏った戦乙女のシュナだ。



「あら、どうしましたの?」


「えっと、そろそろお昼の時間なので、一緒に食堂でご飯をと思いまして……。」


「ええ、構いませんわよ?この際ですからシュナさんに、栄養バランスという美の基礎について教えて差し上げますわ。」


「えいようバランス、ですか?はい、分かりました。」



 うん、仲良きことは良きことかな。


 ……うん?

 ナルキアとシュナって、あんなに仲が良かったっけ?


 いやまぁ、別に元々仲が悪かったってわけじゃないんだけども。

 でも、ズボラなシュナをナルキアが怒ってるイメージが強かったしなぁ。

 歓迎会でもシュナが寝てしまって、ナルキアに迷惑掛けてたし。


 何であんなフレンドリーな仲になってるんだ?

 何かあったのかね?



「ファントム様。少し早いですが、昼食に行っても宜しいでしょうか?」


「ん?ああ、構わんぞ。クロード、エーリッヒ、高柳。君達も、もう休憩に入っていいぞ。」


「「「はっ。」」」



 一糸乱れぬ統率で、軍人秘書連中が敬礼する。


 いや、なんだ?

 なんか以前より堅くなってないか?

 折角彼らとも打ち解けてきて、大分楽に接することが出来るようになったと思ったのに。

 まさかまた、お堅い軍人気質に戻ったのか?



「歓迎会はもう終わってるぞ?乱れない敬礼は見事だが、休憩時間にまで軍人芸を見せなくてもいいんだぞ?」


「っ……は、はは。これは失礼しました。では、食事に行ってまいります。」



 クロードがそう言って、席を立った。

 高柳君とエーリッヒもあとを追うように席を立ち、部屋を出ていく。


 ……いや、本当に何があったんだ?



「ファントム様は、今日は私室で食事をなされますの?」


「ん?ああ、今日は食堂に行く予定だ。ただ、少し休憩してからな。」



 こういう時には、部下には先に休憩をさせて、上司はルールを遵守するなんてことをしてはいけない。

 そんなことをすると部下が萎縮して、気楽に休憩出来ないからだ。


 まぁ俺は、仕事中もチャット見てるだけだしなぁ。

 仕事中も休憩してるようなもんだから、休憩と仕事の区別が俺の中で上手くできてないってのもある。



「そうですの。では、お先に失礼しますわ。さぁシュナさん、行きましょうか。」


「ええ。それではファントム様、失礼します。」



 そう言って礼をするシュナの姿は、戦乙女の名に違わぬ壮麗さだ。

 今みたいに鎧着てたら、ビシっとしてるんだけどなぁ。

 私服になると、戦乙女がズボラ乙女になるからなぁ……。




 俺は誰も居ない執務室で、伸びをしながら考える。


 そういえば俺がこの世界に来る直前も、誰も居ない仕事場に一人で居たんだっけな、と。


 もしかして、この状況でガチャをすれば元の世界に戻れたりするんだろうか?

 そんなことも考えたが、すぐに思考を振り払った。


 そもそもだ。

 今この世界を放っておいて、元の世界に戻って本当にいいのか?

 俺が居なくなっても他の神様が赴任されるだけなんだろうが、それでも責任を放棄して本当にいいのかと思う。


 それにぶっちゃけた話。

 元の世界とこの世界の時間軸が同じだった場合、俺はもう会社に戻れないし。

 だって、この世界に来てからもう、二ヶ月半も経ってるんだぞ?

 突然失踪した俺がひょっこり顔を見せたところで、無断欠勤が重なってクビ確定だろうし。




 ……そういえば、この二ヶ月半で色んなことがあったな。


 訳の分からない内にこの世界に飛ばされて、ハゲたオッサン天使からチュートリアルを受けたんだっけ。

 ソシャゲと同じシステムで世界を管理するって聞いて、思わず心の中で突っ込んだ覚えがある。

 でも、同じ顔の英雄が出たり、戦場まで三日も移動時間が掛かったり、ゲームとは違う部分も多くって、色々と驚かされたっけな。


 それから、都市管理のことも忘れない。

 あのクソハゲ天使は、都市管理は官僚任せでやらなくてもいいと言ったのに、実際には書類に目を通してを決済しなければならなかったのだ。

 秘書に高柳君を置いて、追加でクロードとエーリッヒを秘書にしなかったら、今頃俺は仕事の山に埋もれてたに違いない。

 あのクソハゲ天使コス似合わないオッサンにまた会ったら、ぶん殴ってやる。

 いや、殴ったら俺の手が痛くなりそうだから、怒鳴ってやる。

 いやいや、それもなんか怖いし、睨むだけで勘弁してやろう。


 ……そして、ソシャゲにあった序盤のブーストのことを思い出して、一ヶ月掛けて信仰を貯めて、ガチャを引いたんだよな。

 そして出てきたのがナルキアだった。

 俺は、あの時の悲しみも忘れない。


 でも、その夜には初期ガチャ英雄三人と飲み会をして、それが切っ掛けになって翌日には三人一気に好感度イベントが見れたんだよな。

 ゲームと違って英雄達にも人生があって、同じ顔でもそれぞれが違った個性を持ち始めている。

 それに気付いたのは、あの時だったと思う。


 その一週間後、この世界に来て一ヶ月と一週間が経った時に、ナルキアの歓迎会を開いたんだ。

 あのビンゴは、あれ以来一度も使ってない。

 特注のシートが無ければただのビンゴと変わらないらしいが、もう恐くて使う気にならない。

 そういや、将棋とかチェスとか流行らせようと思ったけど忘れてたな。

 なんかその後に忙しくなって、忘れてしまってたんだっけ?

 何で忙しくなったんだったっけ……。


 ……ああ、そうだそうだ。

 この世界に来て一ヶ月半経った頃に、第二の結界が解放されそうだって気付いたんだ。

 神様ネットワーク画面が英雄に見えるかどうか試してた時に、戦場の画面も見えるかどうかを試したんだよな。

 その時に、戦場画面の隅っこに結界解放間近のアイコンが映ってたんだ。

 そう言えばあのハゲ天使も、そういう大事なことはちゃんと説明しとけよな。

 本当にあのハゲは出来損ないのチュートリアルキャラだ。


 そして……それから一週間ぐらい経ってから、やっと第二結界の先からジョンの魂が出てきたんだったか。

 最初はジョンも恐く感じたけど、今じゃあ俺の話し友達って感じだ。

 なんか見た目はライオンなのに、話してる時は羊みたいにのんびりしてて、話しやすいんだよなぁ。


 そしてこの世界に来てから大体二ヶ月が過ぎた頃に、邪神の大侵攻が起きた。

 俺の世界は結界が張られてたから無事だったけど、チャットを見た感じだと他の神様は結構苦労していたみたいだった。

 そこで、神様ネットワークのチャットで困ってる神様を探して、悩みを解決する代わりに信仰を貰うって商売をしたんだったな。

 ふふふ……あれは相当稼がせてもらった。

 不謹慎だが、また機会があれば稼がせてもらいたいものだ。


 商売が終わったら、余るほど手に入った信仰でシュナを出したんだよな。

 そうか、あれが大体この世界に来てから二ヶ月ぐらいだったから、今が二ヶ月半なので大体半月前のことなのか。


 ナルキアは一ヶ月半前で、ジョンは一ヶ月前ぐらい。シュナは半月前で、初期ガチャ勢は二ヶ月半前か。


 こうして思い返してみれば、結構な時間が経っているものだ。




 俺は伸びをして、席から立ち上がる。

 神殿内に勤めてる英雄達は、全員が食堂で昼食を取っている。

 だが俺は、たまに私室で神様ネットワークで買った食料を食べたりしているのだ。


 ぶっちゃけ、神様ネットワークの資材にある既製品の方が、食堂の飯より美味しいし。


 ……ま、まぁ。

 俺って、神様だし?

 多少の役得もまぁ、経費ってことで……。


 だって、こっちの食事って基本的に粗食なんだもん。

 邪神にギリギリまで追い詰められてた世界だったから、二ヶ月半程度じゃ食料事情もそんなに大きく変化してないんだもん。

 特に食料なんて英雄の資材に使うもんだから、質より量が優先で大量生産してるし……。


 と、とにかくだ。

 今日は食堂で食事を摂るのだ。

 一昨日に歓迎会で料理を提供したばかりだしな。

 信仰の無駄遣いは控えないといけないからな、うん。




 執務室から出るために、ドアノブに手を掛けた瞬間。


 目の前に、画面が現れた。

 俺がよく見ている、神様ネットワークの管理画面だ。


 出そうと念じていないのに、なぜ急に?

 そう訝しんでいたところ、画面の端っこでアイコンが点滅していることに気付いた。


 アイコンからは吹き出しが伸びていて、何故点滅しているのかが、そこに書いてある。




 新しいメッセージが届いています?

 運営からのメッセージです?




 って、おい。

 運営からメッセージだと?


 一体俺に、何の用だっていうんだ?



 これにて第一部は終了です。

 とくに盛り上がりのない〆になって申し訳ありませんが、カテゴリ『日常』なので勘弁してやって下さい。


 一応、投稿開始してから書いた書き溜めがまだあるのですが、流石に毎日更新はキツそうなのでこれからは不定期更新となります。

 基本的には週3~4回更新か二日に一度の更新頻度で暫くやっていきたいと思っていますが、事情次第で大きく遅れることもあるのでご了承下さい。

 逆に、一日に二回更新とかしてしまうかも知れない点もご了承下さい。


 続いての第二部は、取り敢えず毎日更新が終わったことを示す意味も含めて5月2日に投稿しようと思います。

 今後も続けて読んで頂けると幸いです。

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