今度こそ女性!麗しの花園を! 後編
シュナ・ファリエナト 女性 戦乙女
レア度:☆☆☆☆☆ ☆(6)
戦闘力:S+ 智謀:A+ 特殊能力:A+ 成長性:A-
スキル:『高速飛行』『光の槍』
おおっ、☆6じゃん!
☆5以上のガチャで☆6なら全然いいよ!
ナルキアの時もそうだったけど、俺って結構運がいい?
性能はーっと……戦乙女ってことは、単体戦力なのかな?
戦乙女ってなんだっけ?
聞いたことがある気はするんだけど、覚えてないな。
まぁいいや。
乙女ってことは若い子っぽいし。
それにしても、『高速飛行』ってスキルがあるってことは、空を飛びながら戦うってことだよな?
……スカート履いてたらいいなぁ。
「ファントム様、どうなさいました?」
おっと。
黙ってしまってたので、クロードに心配されてしまった。
大丈夫だ、俺はふしだらなことなんて考えていないぞ。
本当だぞ?
「☆6英雄だ。女性で、戦乙女という分類らしい。戦闘力が高く、特殊能力と成長力も高めで、スキルには高速飛行と光の槍がある。空を飛べる英雄らしいな。」
「戦乙女、ですか?」
まぁ、流石にクロードも分からんか。
近代軍事的なこの世界だと、『高速飛行』とか『光の槍』とか、明らかにファンタジックなスキルを持った英雄の分類なんて、知らないだろうしなぁ。
戦乙女ってなんなんだろうな。
まぁ俺的には、女性英雄だったら別にどんな職でもいいんだけど。
「ナルキアは知っているか?」
「いえ……私の世界で戦乙女と言えば、亡くなった英雄の魂を神の元へと運ぶ戦士で、私ほどではありませんけど美麗な女神と聞いてますが……これは神ではなく、人が元になった英雄ですし。」
さらっと自分は女神以上に美しいとか言ってるな。
いや、そのツッコミは今更か。
でも、その女神だったら聞いたことあるぞ。
なんだっけ、北欧神話に出てきた女神だった気がする。
でもそれは、女神なんだから神様カテゴリーだよな?
それじゃあ、今回の英雄とは関係ないのか?
いや、そもそもこの英雄がナルキアの世界出身の英雄ってわけじゃないだろうし、関係ないのかも知れんな。
「何はともあれ、創造してみるか。」
そう、何はともあれ創造である。
ガチャから女性英雄を出したなら、開示のち即創造だ。
今回の取引の件で神様の知り合いも増えたから、チャットで事前に情報を聞くことも出来るかもしれない。
けど、そんなのは待っていられない。
俺は今すぐ、女性英雄がほしいのだ!
俺は逸る気持ちを抑えながら、頭の中で『創造』と念じた。
いつものように、青い石が手元を離れて床に落ちていく。
石を中心にして青い光の柱が立ち昇り、光が止んだ時にはそこに、一人の女性が立っていた。
白銀の鎧を身に纏い、白い羽飾りが付いた額当てをした女性。
淡く青の混じったサラサラの銀髪が、腰の辺りまで伸びている。
その顔立ちは精巧に整えられていて、本当に女神なのでは?と思ってしまうほどの美人だ。
腰には剣を携え、背丈より長い細身の突撃槍を背中に背負っている。
光る槍を持って空を舞う彼女の姿が、一瞬脳裏に映った。
それほど彼女は、戦乙女という名に相応しい姿をしていた。
彼女の閉じられていた目が開く。
隠されていた大きな瞳と銀色の虹彩が、更に神秘性を際立たせている。
戦乙女。
それを体現する女性が、俺の前に立っていた。
まるで、この空間だけが切り出され、神話の世界に迷い込んでしまったかのように、幻想的な姿がそこにはあった。
「我らが神の呼び声に応じて参りました、シュナ・ファリエナトです。神に忠誠を誓い、微力を尽くさせて頂きます。」
胸に手を当て、片膝をついて一礼する姿は美しい。
もしかして、本当に俺は神話の世界に迷い込んでしまったのでは?
そう錯覚してしまうほどだ。
「俺のことはファントムと呼んでくれ。これから宜しく頼むぞ。」
「はっ。神の命であれば、命を賭ける所存です。」
いいな、これ。
なんか、ゾクゾクってする。
そうだよ、これなんだよ!
俺が望んでた、女性英雄っていうのは!!
男臭くて、堅苦しい軍人でもなく。
ナルシストの、若干うざい偽装ロリでもなく。
これなんだよ。
俺が待ち望んでいた、本物の女性英雄ってのは。
「戦闘力が高いとあり、スキルも戦闘向けだと把握しているが、一応聞いておく。事務作業など、他に得意な何かはあるか?所属を考える際の参考にするので教えてくれ。」
「はい、ファントム様。私の望みは、神に仇為す邪神の手先を駆逐することです。申し訳有りませんが、事務などは経験が有りません。」
ああ、秘書の増員は無理か。
まぁ、今回は戦力増強って名目だったから、元々戦場組になるのはほぼ決まってたんだけどね。
空を飛べるって聞いてパンチラとかちょっと期待してたんだけど、見た感じだとロングスカートの下にズボンっぽいのを履いてるのね。
ちょっと残念だったけど、執務室で戦場画面映す時にちらちらパンチラが見えたら気まずいから、それはそれで良しだ。
ちょっと残念だけど。
「そうか。それでは戦場と都市の巡回への参加に決まりかな。秘書達はどう思う?」
秘書的にも問題ないとは思うけど、一応聞いておく。
実務は全部秘書連中が握ってるからね。
確認しとかないと、後で問題起きてもアレだし。
「資材は何を消費するのでしょうか?」
エーリッヒがそう言った。
ああ、確かにそれは確認しないとだな。
他の英雄が使ってる資材なら良いけど、使ってない資材だったら神様ネットワークで買うか、新たに資材を入手するための施設を作らないといけないしな。
新しい英雄が現れた時点で、その英雄が必要とする資材の原料が取れる場所が人間領域内に現れるんだけど、それが何かを知らないと原料を取れないしね。
なんか魔法的な資材が要るとか言われても、魔法がないこの世界の住人だと何をどう扱えばいいのか分からないだろうし。
「私が使用する資材は、食料と魔力ですね。魔力は魔石等が有れば早く補充出来ますが、私自身の魔力回復でも五日に一度は戦えます。」
ま、魔力か……。
まぁ、魔法がある世界もあるんだろうし、魔力を資材にする英雄も居るのも当たり前っちゃ当たり前か。
多分、魔石ってのは鉱山か何かから出るのかね?
そこはアレだ。秘書にお任せだから別にいいか。
もし、魔石を手に入れるのに施設建造したりで時間が掛かるなら、とりあえずは神様ネットワークで買えばいいしな。
それより、自力で資源の一つをある程度賄えるってのは素晴らしいじゃないか。
五日に一度だとちょっとシフトが組みにくいかも知れないけど、そこは魔石も合わせて使うってことで。
「消費する食料は……やはり☆6レアリティ相応の量ですよね?」
「ええ、勿論です。」
「そうですか……それでは、暫くは巡回メインで、時々戦場に出てもらう形になりますね。」
……え、なんで?
食料は他の英雄も使うから備蓄もあるし、魔力だって魔石が必要なら出すよ?
信仰も結構減ってるけど、そこまで困る量じゃ……。
いや、待て。
今、消費量を確認してたな。
なんだっけ、☆6レア相応の量だって?
えっ?
もしかして、資材消費ってレア度によって大量に必要になるの?
「何故でしょうか?」
戦乙女のシュナが、エーリッヒに聞き返す。
おう、俺が聞きたかったことをよくぞ聞いてくれた。
俺が聞いて、「知らなかったのに高レア出したの?」って反応されたらキツいしな。
というか、ゲームでもレア度によって消費資材の量は変わってたけど、そこまで大きな差は無かったぞ?
流石に☆1と☆9なんかを比べたら、そりゃあ桁が違ったけど。
でも☆4のジョンが居る現状で☆6だったら、そんなに差があるとは思えないんだが……。
取り敢えず、アレだ。
素知らぬ顔で話を聞こう。
「ナルキア嬢から聞いた☆6レアリティ英雄の資材消費量は、食料に換算しますと木箱が約二百四十個分です。この世界はまだ食料の生産力が乏しいので、シュナ嬢ですと一ヶ月に数回の出撃がギリギリかと……。」
おい。
二百四十個ってなんだよ、おい。
ちょっと待てよ?
確か、量産軍人の☆2☆3三人衆は、だいたい一立方メートルの木箱が十五個から三十個ぐらいだったよな?
最低でも八倍の資材が要るってことか?
「そうですか。それでは、私の出番はまだあまりないのですね。」
よく考えよう。
十五個から三十個というのは、エーリッヒが十五個で高柳君とクロードがその倍の三十個って感じだった。
エーリッヒが☆2で、クロードが☆3だから、その差が十五個だってわけだ。
……倍?
もし、レアリティが一つ上がるごとに、必要資材が倍になるとしたら?
☆3で三十個なら☆4で六十個。
☆5で百二十個で、☆6で二百四十個。
……計算合っちゃったよ。
「そうですね。ですので、暫くは都市内の巡回任務に就いてもらうることになるかと思います。」
「それでも問題はありません。だって、その方がよく寝れそうですし。」
確かに☆6の戦闘力は魅力的だ。
まだ戦いっぷりは見てないが、同じ単体戦力で比較してもクロードの上位互換になるわけだしな。
空も飛べるんだし、クロードよりも段違いに活躍してくれるだろう。
だが……八倍は、流石に多いな。
「寝れそう……ですか?」
「あっ、巡回中は寝ませんよ?ただ、寝るのが趣味でして、一日十二時間は寝ないと力が出ませんので。」
でも都市はどんどん増えていってるし、今後の生産量増加を考えれば……。
ん?
ちょっと待った。
いま何か、変なこと言ってなかったか?
「じゅ、十二時間ですか。」
「一度に十二時間寝るのではありませんよ?夜に十一時間寝て、昼に一時間寝るだけですので。」
「は、はぁ。」
い、一日に、十二時間も寝る、だと……?
「あと私の宿舎は、他の人の部屋から離して貰えると助かります。」
「それは何故でしょうか?」
「いえ、生前も部屋が臭うと言われて、そうしていましたので。」
部屋が臭う……。
掃除をしない、ってことか?
もしかして。
もしかしなくとも。
この女、ズボラか?
「ま、まぁ。神殿内の女性用宿舎は部屋が余っておりますし、巡回や戦場では女性はまだシュナ嬢だけですので、部屋に関しては問題ありません。」
「それは良かったですわ。何度も部屋を片付けろって言われるのは辛いですから。」
……俺の中の、戦乙女像が音を立てて崩れ去っていく。
この戦乙女の部屋がゴミ屋敷とか、流石にキツい。
いや、そうでもないか?
いやいや、別にゴミ屋敷でも良いってわけじゃないんだが。
よく考えたら言動は普通だし、流石に外ではまともだろうし。
何よりも、ナルキアと比べたら断然マシだし。
ちょっと部屋の臭いが服に付いて臭くなりそうだけど、秘書でもないから直接臭いがどうこうってわけでも……。
いや、流石に臭い戦乙女はダメだろ。
臭いまま巡回に出してると、市民から苦情が来そうだ。
「シュナ。部屋をどうしようとお前の勝手ではあるが、巡回に出る時には……その、服装や臭い、には気を使えよ?」
女性に対して臭いについて指摘するとか、相当勇気要るな、おい。
言ってる途中で気が付いて、ちょっと言葉が詰まってしまった。
「ファントム様。流石にそれはシュナさんに失礼ですわよ?」
「ああ、すまない。それでも、市民から苦情が来ては敵わんからな。」
やっぱり注意された。
分かってても、その可能性に気付いたら言わなきゃだろうが!
あ、いや、そうか。
この場で言わなきゃ良かったのか。
後でこっそり言っておけば。
「えっ、気を付けないと駄目ですか?」
……。
さっきまで俺に向けられていたナルキアの冷たい視線が、シュナに向けられる。
シュナさん。
あなた、見た感じ二十歳前後の乙女なんですから。
その、ね?
臭いぐらいは、気にしましょうよ。
「シュナさん。私が教育して差し上げますわ。こちらにいらっしゃい。」
「えっ?えっと、私の任務は?」
「そんなの後ですわ!私ほどではないにしろ、かなりの美貌を持ってらっしゃるのですから、それをくすませるなんて私が許しませんわよ!?」
そう言うと、ナルキアはシュナの手を引っ張って、執務室から出ていった。
「……。」
「「「……。」」」
残された男四人が、呆然と立ち尽くす。
「……自己紹介すら、してないな。」
「ええ、そうですね。」
「ナルキア殿が連れ帰ってくるまで、仕事しましょうか。」
「そうしましょうか、クロード中尉。」
俺、エーリッヒ、クロード、高柳はそう言って、それぞれの席に戻る。
そして、何事もなかったかのように仕事を再開した。
俺も神様ネットワークのチェックに移る。
……今日はきっと、何もなかったんだな。




