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ソーシャルな神様、始めました  作者: 九重市 九十九
第一部:世界の管理、始めました。
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見えない画面と見落としていた脅威。


 神様ネットワークは、様々な機能を持っている。

 ゲームだった頃と比べれば、戦闘と都市管理が現実に変わったことで機能が減っているように思えるが、その分交換所のシステムが充実していた。




 都市から得られる信仰を通貨として用い、他の世界を管理する神様と、英雄の魂や強化アイテムをトレードするのが交換所の主目的だ。


 実際に、オークションや競売形式でのやりとりが可能であり、他にも購入したい品と買い取る値段の提示や、売却したい品と売りたい値段の提示。

 更には複雑な条件を決めた上での契約も結べるなど、基本的な売り買いのシステムは大体揃っている。


 他の神々との交換以外にも、神様ネットワークを管理する運営機関が、直接英雄の買い取りも行っており、他のプレイヤーが欲しがらないような要らない英雄であっても処理出来るというシステムまで用意してある。


 更には、英雄が本来の力を発揮するために必要な資材。

 これは本来都市で市民が生産して、世界を管理する神に献上される事で手に入れるのが普通だ。


 だが、神様ネットワークではこれら資材の買い取りと販売も行っており、それは神様同士の交換ではなく運営が一括して管理を行っている。

 その結果、需要と供給から資材の相場が決まり、まるで株式の取引のように、毎秒値段が更新されるという状況が出来上がっていた。


 それはまぁ、あの懐かしきハゲ天使から教わったことなんだが。

 この、売ってる資材のラインナップが問題なのだ。




 俺の所の軍人英雄は、力を発揮するためには食料と鋼材が必要だ。

 食料の内容は特に定められてないようで、腐って食べられないようなものでなければ何でも流用出来る。

 実際に誰かが食べる訳ではないので、これは街で余ってたり傷んでたりする食料を輸送して使ったり、保存食として作った乾パンなどを使用している。


 鋼材の方は鉄や鉛などの鉱石が必要で、それらは精製してインゴットにする必要はない。

 とは言っても、不純物の多い鉱石のままだと嵩張って大量に必要になるので、多少粗悪でも溶かしてインゴットに変えて使用している。


 精製した状態でも、三時間の活動の為に普通自動車一台分は必要なのだ。

 鉱石の状態だと運ぶだけじゃなく、保管するのにも場所を取って仕方ない。


 そして、この鉱石。

 邪神に攻められ、僻地へと追い込まれた人類の領土で、鉱石が採掘出来るのか?

 最初はそう、疑問に思っていた。


 だがそこは何とか出来るようにしているらしい。

 神様ネットワークが自動で起動して対邪神用の結界を張っているみたいに、勝手に人間領域内に鉱山を創り出して、採掘で埋蔵量が減ってきたら自動で補充してくれているらしい。

 そのお陰で、人類は尽きる事のない鉱山から資源を発掘する事が出来るのだとか。




 更に交換所の一部では、神に代わって奇跡の代行もしてくれる。

 当然信仰を消費するが、この前の演説でやった『傷病完治』のような奇跡を、自分が使えないものでも実行出来るとか。

 ヘルプ本によると、神様によって持っている権能が違って力の大きさも違うけれど、どんな神様でも世界の維持管理を円滑に行えるように、神様ネットワークにそういう機能が埋め込まれてるのだとか。


 これを見て俺は思った。

 なんでこれ作った神様、自分で世界救わなかったの?と。


 だって、邪神が通れない結界を作れるなら、それを張ってしまえば良い。

 そうすればわざわざ英雄を呼ばなくても、分断した敵をちょっとずつ倒していけばいつかは全ての世界を救えたんじゃないの?


 いや待てよ。そう言えばこの結界を維持するのにも信仰が必要だってヘルプ本に書いてたっけな。

 どうも結界の維持費は、世界の管理で得てる信仰から勝手に徴収して張ってるらしい。

 もしかするとこのシステムを作った神様は、信仰を集められない事情とかあったのかね?


 オッサン天使の話だと、神様ネットワークを作ったっていう神様は、自分の命を費やしてこのシステムを外世界から呼び出したそうだ。

 ってことは、この結界システムも、命がけじゃないと作れないようなシステムだったのかね?




 うん、よく分からんな。

 何も知らない俺だとよく分からんことしか分からんが、取り敢えずこの神様ネットワークを作った神様が偉大だってことは分かった。


 だって、ただの人間で元サラリーマンな俺だって、こうして管理出来るような代物を作ったんだもんな。

 他の神様は一般人の俺より当然優秀なんだろうから、文字通りどんな神様でも使えるシステムだよ、ホント。


 ただ一言、言わせてもらうのなら。

 これって、ソシャゲの『神様の箱庭』を元にする必要は無かったんじゃないかなぁ。

 いや、俺は分かりやすくって助かってるからいいんだが。




 ―・―・―・―




「ファントム様。どうかなさいましたか?」



 俺が神様ネットワークの画面を見ながら思案に耽ってたのを見て、クロードがそう問いかけてきた。


 いかんな、なんか心配させるような顔しちゃってたか。

 ぶっちゃけ、執務室の椅子に座っては居るんだが、書類は四人の秘書に丸投げなので俺は何もやることがないんだ。

 だから、適当に意味のない考察をしてみたりして、時間を潰してたりする。


 まぁアレだ。無能な働き者は害悪って言うしね。

 俺はお神輿だから、働かなくてもここに居るだけで意味があるのだ。

 一応決済の印鑑は俺が押すことになってるから、全く何もしてないわけではないんだけどね。

 その決済印も、正直言って英雄達に預けて勝手に押してもらった方が効率が良くなりそうな気もするんだが。

 というか既に、俺が不在の時には勝手に押してもらってたりする。




 ……ちょっと待てよ?

 もしも神様ネットワークの操作も他の秘書官に任せられたなら、俺がやることって本当に何一つなくなるんじゃね?



「クロード。ちょっとこっちに来てくれるか?」


「はっ。了解しました。」



 やりかけの書類を置いて、即座にクロードがこちらに来てくれた。

 一度指示があると行動が早いんだよなぁ。

 流石軍人英雄だ。上官の命令は絶対なんだろう。



「この画面を見てくれ。そしてこの真ん中にある項目を、選ぼうと念じてくれないか?」



 俺はそう言って、目の前にある神様ネットワーク画面を指差す。

 もしも彼が念じて操作が出来るなら、俺の代わりに操作出来るということだ。


 いや、サボる気はないよ?サボっても暇になりすぎるし。

 ただね、緊急事態があった時のために、代行出来る人が居たらいいじゃない?

 神様もさ、天使にお使いを頼んでたりするじゃない?



「……は?」



 呆け顔でこちらを見てくるクロード。



「あ、いえ。失礼しました。その……画面とは、何のことでしょうか?」



 ……えっ。

 もしかして、画面が見えてない?



「……ここに、半透明の画面があるのが見えないか?」


「失礼ですが、私には机の上に何もないようにしか見えませんが。」


「エーリッヒ、高柳、ナルキア。全員、ここに何も見えないか?」


「私にも何も見えません。」


「エーリッヒ中尉に同じく、何も無いようにしか……。」


「何があるのか分かりませんが、私の目を汚さないために見えなくしてるのではありませんの?」



 最後の一人は置いといて、誰も見えてないのか。

 代行以前に、俺が神様ネットワークを操作してる時は、俺が虚空を見つめながらボーッとしてるように見えてたってことか。

 それじゃあまるで俺がサボってるみたいじゃないか!

 これは、釈明しておかねば。



「そうか。君達には見えてないようだが、いま俺の目の前には、神様ネットワークの管理画面が見えている。もし君達にも見えるなら、用途不明な資材の中から有用な物がないか見てもらうことも出来たのだが……。」



 ちょっと言い訳を挟んでおく。

 私は、サボりたくて見せようとしてたんじゃありません。

 用途不明な資材を見てもらいたくて、見せようとしてたんです。

 私は無実です。



「こっちの画面は見えるか?」



 そう言って、今度は戦場を映す画面を出して指差す。



「ええ、これは見えます。」


「あら、戦場ですの?砂埃が酷くて、私には似合わなさそうな場所ですわね。」



 クロードがそういうのなら、全員見えているのだろう。

 それなら、誰かに戦場を見てもらって、俺の代わりに指揮することは出来そうだな。

 まぁ代わりにって言っても、俺は一度も指揮なんてしたことないんだが。




 いや、待てよ。

 俺は戦場の画面を操作して、待機中の英雄達の姿を映す。



「この画面に映ってる英雄に、何か声を掛けようと念じてみてもらえるか?」



 もしこれが出来るなら楽なんだが、どうだろうか?



「……念じてみました。」



 画面の英雄たちに反応はない。

 待機中の英雄たちは、楽しそうに談笑を続けている。



「そうか。俺なら戦場に声を届けることが出来るんだが、君達には無理か。」



 じゃあ、画面を見ながら戦場指揮案は無しだな。

 だってその指揮を伝えるのに、指揮する英雄が俺に内容を言って、俺が戦場に声を届けるという手間が必要になる。

 それは非常に面倒くさい。それにタイムラグが生じるから何かダメっぽい。

 というか、もしも指揮の内容を聞き間違えたりしたら、恥ずかしいし。



「電話でもあれば、誰かに戦場指揮を任せることも出来るんだがなぁ……。」



 この戦場画面ならある程度画面の位置を操作出来るようで、俺から遠く離すことは出来ないみたいだが、この部屋の隅までぐらいなら動かせる。

 電話が有れば、誰かに戦場指揮を任せられそうなんだがなぁ。



「電話は普及してませんが、通信機ならありますよ?」



 エーリッヒが言った。

 って、え?

 通信機、あるの?



「あるのか?」


「ええ。軍用だけですが、通信機でしたら存在します。」



 って、そりゃそうか。

 忘れてたけど、休息日の演説の時にも記者っぽい人が録音してたよな。

 録音機器や銃器があるのに通信機がないって、どんだけ偏った文明なんだよって話だ。

 そもそも通信機なんて、軍にとっちゃ相当重要なもんじゃないか。


 待てよ?通信が出来るってことは。



「それなら、ラジオ放送もあるのか?」


「いえ。私が生きてた頃は有りましたが、現在はラジオ局が存在していないそうです。巡回の自分から聞きましたが、電話やラジオ等は徴用されて、軍の通信機などに流用されたそうです。」



 そっか、そりゃそうだよな。

 邪神に極限まで攻められてた世界なんだから、軍備に回せそうなのはそっちに回されるよな。

 市民の娯楽とか、戦時中は真っ先に削られそうな要素だし。



「通信機があるのなら、誰かが戦場指揮を取ることも出来そうだな。」



 話がそれたが、本題に戻す。

 現状でも戦場は上手くいってるみたいだが、いつかは戦いが辛くなる日がくるかも知れない。

 それを考えると、少しでも戦力向上に役立ちそうなことは試しておきたい。



「ですが、我々では……。」


「小隊を率いた経験はありますが、それより多いとなると。」


「多少経験を積めばいけそうですが、全員階級が中尉なので、今の英雄たちでは難しいかと。」



 クロード、エーリッヒ、高柳君の順番での発言だ。

 自信がなさそうなクロードとエーリッヒに比べて、経験を積めばいけそうだと言う高柳君のなんと勇ましいこと。


 でも、全員中尉だと難しいらしい。

 軍の階級なんて殆ど知らないが、まぁ同じ階級で上下を作るのは良くなさそうなのは分かる。



「そうか……良い案だと思ったのだがな。」


「素晴らしい案だとは思います。今後、我々より上位の階級の方が現れた際にはその方法を採用しても宜しいかと。」



 そうなるか。

 それなら、今後に期待かなぁ。


 まぁ、軍人英雄をガチャで引く気なんてないから、ドロップ英雄頼みだけどな。

 まだ、執務室の空気が砂っぽいのだ。

 この黄土色の男子校みたいな空気に華を混ぜるまで、軍人をガチャで呼ぶ余裕なんて一切ない。



「……ん?このマークは?」



 ふと戦場画面を見てみると、画面右下に赤い旗のマークが表示されていた。

 こんなの戦場画面に表示されてたっけな?

 そういえば、なんかヘルプ本で見たことあるマークな気がするな。


 こちらに来てもらったクロードには仕事に戻ってもらい、ヘルプ本を開いてこのマークが何なのかを確認する。


 あったあった。

 ああ、これって、次の結界が解放間近ってマークなのか。

 そういや、暇過ぎてヘルプ本を見て時間潰ししてた時に、見た気がするな。




 え。

 結界解放間近?



「総員に通達!」



 俺があげた突然の大声に、秘書官達が一斉にこちらを見る。

 その目は真剣そのものだ。

 ナルキアですら真剣な目でこちらを見ている。



「第一結界先の攻略は順調。このまま進めば、時期は不明だが第二結界が解放されるようだ。」


「第二結界が解放されるんですか?」



 第二結界。

 それは、人間の住む領域に隣接する結界の一つだ。


 俺がこの世界に来た当初、第一、第二、第三の三つの結界によって、世界は四つに分割されていた。

 人間達が住む小さな領域と、世界の大半を占める邪神勢力が支配する領域を三分割した計四つだ。


 今は第一結界だけが解放されていて、世界は三分割の状態になっている。

 まだ結界が残っている、第二第三結界の向こう側からは、邪神の手先が攻めて来ることはない。


 だがそれが解放されれば、当然邪神の手先が第二結界の向こうから人間領域目指して攻めてくることになる。


 要するに。

 何も準備をしてないのに第二結界が解放されると、人間の領域に邪神の手勢が奇襲してくることになるのだ。

 一刻も早く、新たに解放されて前線となる第二結界前に、英雄や資材を集めなければならない。



「そうだ。至急、第二結界方面へと戦力と資材の輸送手続きを行え。俺は在庫の魂から新たに戦力を創造する。新規創造英雄は第一結界先で育成だ。既に第一結界先で育っている英雄を、第二結界前へと集結させるように手配してくれ。」


「「「はっ。」」」


「承りましたわ。」



 俺の話を聞いた秘書達が、一斉に席を立って執務室から出ていった。

 きっと、前線増加に関する諸々の話を官僚と打ち合わせたり、関係各所に伝えたりするのだろう。

 具体的に何をするのか全く分からんが、多分そんな感じだ。




 それにしても、危ない所だった。

 たまたま戦場画面を見てなかったら、気付けなかったぞ?

 戦場の画面なんて、たまにドロップアイテムを回収する時にしか開いてなかったしな。

 その時も、ちょっと画面を開いて回収を念じれば、画面に映ってないドロップアイテムも回収出来てたから、画面に追加されてるマークにも気付けなかった。


 今後は、たまにチェックもしないとダメか。

 ぶっちゃけ戦争してるとこなんか見ても、同じ英雄ばっかりだから面白くないんだよなぁ。

 現地で戦ってる英雄達には悪いけど。



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