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付き合ってくれないか?

「……すまないな。突然教室なんかに呼び出して」


放課後、私は古宮先生に呼び出され教室に来ていた。

教室の中で先生は静かに教卓の椅子に座っている。


先生はこちらを見るといつもの静かな様子でこちらに来るようにと手を使って促した。

正直いくら見知った先生とはいえ呼び出されたとなると少し不安になる。

私は怯えながらそっと近づいて先生の目の前まで近づくと先生はそっと手を伸ばして私の頭を撫でた。


「えっと……」


突然頭を撫でられて困惑する私に先生は口を静かに開ける。


「その……褒めてやりたくて」


「あ、ありがとうございます?」


普段から口数は少ない先生だった。なので今回もあまり喋らず何に対して私は褒められているのか分からず困惑する。

そんな私に漸く説明不足なのを察したのか慌てた様子で話してくれた。


「今回のテスト。国語の点数が学年で一番だったから良く頑張ったなって伝えたくて」


「……ありがとうございます」


先生に頭を撫でられる。私は褒めて貰えてるんだ。

ようやくその事が分かって嬉しくなる。自分が学年で一位だったのは知っていた。

今までも成績は学年で一桁を維持していたが今回はいつもよりも調子が良かったのか国語の点数は勿論のこと全教科の合計点でも一位になっていた。


「その……わざわざ褒めてくれる為に教室に呼び出したんですか?」


「いや、勿論それも理由の一つだがもう一つ理由があって」


先生は撫でるのを辞めると今度は私をそっと抱き締めてくれた。

そしてまた頭を撫でてくれる。先生に撫でられて抱き締められると何だか安心する。

ふと先生の方を見る。すると先生は顔を赤くしながら私の方をじっと見ていた。


「あの、それで先生。理由っていうのは」


「栞……私と付き合ってほしい」


「……はい?」


突然の告白に私は驚く。まさか先生が私に告白してくるとは思わなかった。

正直困惑の感情が凄い。というか先生は私が彼女持ちなの知ってるはずなんだけど。


「も、もう一度告白させるのか……わ、私は栞のことが好きで……その」


「私、彼女いますよ」


「彼女がいると付き合ってはダメなのか?」


「ダメに決まってますよ!?」


いや浮気してる私が言えた義理ではないけど。それでも先生の突拍子のない発言には少し驚きが隠せない。


「うぅ……」


その場で泣き崩れる先生。今度は私が頭を撫でて慰めることにする。

正直、先生が私に告白して振られて泣きついて来るこの状況は予想外だ。


「先生は美人ですよ。それにカッコいいですし勉強だって教えるのが……上手くはないですけど真剣に教えようとしてくれているのは伝わります」


「うぅ……だったら何で振ったんだ!」


「いや、だから彼女がいるんですって」


「彼女がいると付き合うことが出来ないのか!?」


「普通はそうですよ!?」


「うわーん」


涙を溢しながら私にすがり付く先生。諦めるつもりはないのか未だに私の服を掴んで離そうとはしない。

仕方ないので暫く落ち着くまで一緒にいてあげることにする。


「なんでこんなに友達が出来ないんだろう。私は……」


「友達?」


「ああ……だからさっきから告白しているだろう。友達になってほしいと」


「いやさっきは好きだから付き合ってほしいって言ってましたよ」


「同じ意味じゃないか!」


「全然違う意味ですけど……国語の先生ですよね」


「むぅ、人間の言葉は難しいな」


先生は人間じゃなかったのかな。そんな馬鹿なことを考えながら私はため息を吐く。

要するに紛らわしい言い方をしてはいるけど、先生は私を恋人にしたいのではなく友達になりたくて告白してきたようだった。


正直先生と友達になるのもどうかとは思うけど、先生なりに泣いてまで想いを伝えてくれたのは事実だ。

それが恋愛関係ならば断るが友達関係ならばその想いを否定する必要はない。


「……分かりましたよ」


「わ、分かったって……」


「私で良ければ先生の友達になりますよ」


「ほ、本当に良いのか!」


嬉しそうに潤んだ瞳で私を見る。そんな彼女に対して静かに頷くと嬉しそうに私に抱き付いてきた。


「嬉しいな。これからはもっとお互いのことを知って好きになっていこう」


先生はそう言うとそっと私の額にキスをした。その事実に私が驚いていると先生は顔を赤くしながらも意地悪な笑みを浮かべる。


「友達なら額にキスぐらいするだろ?」


固まる私に先生はそう言うと嬉しそうに教室を出る。

先生が教室を出て私は一人になった。それと同時にふと考える。


本当に先生は最初から友達として私に告白したのだろうか。

もしかしたら告白を断られたから友達として告白したってことにしようとしているのではないだろうか。

そんなことを考えていると教室の扉が開かれて先生が慌てた様子で戻ってきた。


「そうだ。忘れていた……私の想いだ。受け取ってくれ」


先生がそういって渡してきたのはケーキが入っているであろう箱だった。

そう言えば先生も調理実習でケーキを作っていた。

てっきり他の先生に渡すものだと思っていたがまさか私が貰うことになるとは。


「勿論本命ケーキだ。その、一生懸命作ったからちゃんと食べて欲しい」


顔を真っ赤にしてそれだけ言うとすぐに教室を出ていった。

試しに箱を開けるとケーキが入っており、形こそ綺麗とは言えないがそれでも先生なりに頑張って作っているのが伝わってくる。

流石にこのケーキをいらないと先生に返すことは出来なくて大人しく受け取ると部室へと戻るのだった。

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