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私が好きだったのは……

「栞……」


「椿ちゃん……」


放課後の教室。私と椿ちゃんは二人きりで話す。

あの時はここで椿ちゃんから浮気をしましょうと誘われた。

その時の私は椿ちゃんに惹かれていてその気持ちのまま私達は浮気をした。

だけども今回私達がこの教室に来たのは浮気をするためじゃない別れを告げるためだった。


「私は……ダメだったのね」


私の表情を見て椿ちゃんは私が好きだと伝えに来たのではなく別れを告げに来たのだとすぐに理解したみたいだった。

そしてそれに対して私もまた否定はしなかった。


「椿ちゃんごめんなさい。私は椿ちゃんのことが好きだった。でも……その好きは恋人としてじゃなかったんだ」


そう私が感じていた椿ちゃんに愛されたいという気持ちは恋ではなかった。

私は椿ちゃんに恋人になって欲しいわけではなかった母親になって欲しかったのだ。


「私は椿ちゃんをお母さんとして愛していた。でも恋人としては愛すことが出来なかったんだ」


「そう……なのね。でも私は……恋人として貴方が好きだった。好きになっていた! だからありがとう。ちゃんと言ってくれて」


椿ちゃんはそういって笑う。その笑顔は明らかに無理をしていて椿ちゃんは涙を溢していた。

私はそれに対してそっと近づくと最後に彼女を抱き締めた。


「なんで……抱き締めるのよ。私はもう貴方の恋人でも浮気相手でもお母さんでもないのにっ!」


「抱き締めるよ……お母さんじゃなくても恋人じゃなくても浮気相手じゃなくてもそれでも椿ちゃんは私の大切なお友達だから」


私は友達として彼女を抱き締めると彼女が落ち着くまで側にいたのだった。


ーーー

「栞ー! どうしたの? こんなところに呼び出して」


「文ちゃん……」


私は文ちゃんを部室に呼び出した。文ちゃんはいつも通りの笑顔を私に向けているけど本当は分かってる。

私が文ちゃんのところに来たのは文ちゃんと付き合う為ではなく振る為だということを。


「文ちゃん……あのね。私……やっぱり文ちゃんのこと恋人として見れないの。私は文ちゃんじゃなくて別の人が好きだから」


「栞……ダメだよ。私はまだ栞に何もしてやれてない。栞のことを愛してやれてないんだ」


「文ちゃん……そんなことないんだよ。私は文ちゃんにいつも助けて貰ってた。沢山愛してくれたよ?」


「違う! 違うんだよ! 私は栞のこと……助けてやれなかった。私はあの時……手を伸ばすことが出来なかった。助けるって言ったのに大丈夫だって言ったのに私は栞を見捨てたんだよ」


私は文ちゃんにずっと優しくして貰っていた。それを私は友達だからだと幼馴染みだからだと当たり前のようにそれを受け入れていた。

だけどそれは当たり前じゃなかった。文ちゃんはずっと私のことが好きでずっと私を助けたいと思って苦しんでいんだ。


文ちゃんが言っているあの時のことは私だって覚えている。

私は文ちゃんに助けて貰えると思って嬉しかった。

そして私はお母さんに引っ張られて怖くて苦しくて文ちゃんに助けを求めた。

それに対して文ちゃんは確かに私の延ばした手を掴んではくれなかった。


でも……私はもう知っている。人間は完璧ではないということを。

人には弱さがあってその弱さを克服しながら人は生きているんだと。


文ちゃんは確かにあの一瞬。私を助けることが出来なかったかも知れない。

でも文ちゃんはその後も逃げなかった。私が困っている時、助けてくれて自分の出来る限りで私を助けようとしてくれた。

だから私の言うことは恨み言じゃない感謝の言葉なんだ。


「文ちゃん……それでも私は文ちゃんに助けられたよ。私が苦しんでいる時、文ちゃんはいつも来てくれて私を抱き締めてくれた。それが凄く嬉しかったの、凄く救われたの」


私は文ちゃんに対して手を伸ばす、それに対して文ちゃんはそっと私の手を握った。


「文ちゃんありがとう。私は文ちゃんのおかげで救われた。文ちゃんが私を助けてくれたんだよ」


「そっか……私、ちゃんと栞のこと助けられたんだ」


文ちゃんは安心したように笑った。


ーーー


学校の校庭。私は深呼吸しながら彼女の方を見る。

目の前にいるのは金髪ツインテールの少女ーー彼女は私の後輩で私の好きな人だった。


「柚ちゃん……ごめん待たせちゃって」


「……先輩」


私は柚ちゃんの方へと近づくそして彼女の両手をそっと握った。


「私は柚ちゃんのことが大好き。だから改めて私と付き合ってくれないかな」


「良かった……。信じてました私、先輩が好きなのは私だってずっと信じてました。でも信じてたのに……やっぱり嬉しい。先輩に好きって言って貰えたことが先輩と恋人になれることが凄く嬉しい」


柚ちゃんはそう言って私を抱き締める。私は顔を真っ赤にしながら彼女の側に居られることを嬉しく思った。


最初は柚ちゃんのことを愛してはいなかった恋人としては見ていなかった。

だから浮気をしてしまった。でも柚ちゃんはそんな私に最後まで好きだと愛していると愛すると沢山の気持ちを向けてきた。

その沢山の気持ちが私に届いて気がつけば私も柚ちゃんを真っ直ぐ愛せるようになっていた。


「柚ちゃんこれからは私も柚ちゃんを愛するよ」


「私もです。これからはずっと一緒ですからね! あと浮気もしちゃダメですよ!」


「うん!」


私達は手を繋いで歩きだした。家にではないこの人生をだ。

私達はこれから二人で一緒に人生を歩んでいくのだ。

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