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今日の文ちゃん凄くカッコ良かったよ

山の中、私たちは雑談をしながら山へとどんどんと進んでいく。

正直私自身運動神経はあまり良い方ではないので一人遅れやしないかと不安だったが幸いなことにみんな運動神経が悪かったので全員がまったりと歩きながら景色を見て楽しんでいた。


先生は言っていた。別に山頂に登るのが目的ではないと。

山を登ってその過程で景色を見たり、みんなで雑談するのが目的だと。

もっとも普通に日帰りでも余裕がある山の標高なので体力さえあればすぐに登ることが出来るらしい。

私達には無理だろうけど。


「でも綺麗な景色だね」


私は草花が生い茂る景色を見ながら静かにそう呟いた。

その言葉に対して誰かしら反応してくれると思ったのだが誰も返事をしない。

不思議に思って柚ちゃんのいるであろう場所に視線を向けるとそこには誰もいなかった。


「……あ、あれ?」


嫌な予感がする。私は慌てて周囲を見るが誰一人姿は見えずどうやら私はしらない場所で一人ぼっちになってしまったらしい。

そうつまりは迷子……いや山の中だから遭難してしまったみたいだった。


「と、とりあえずどうしよう」


確かこの山はそんなに高くないし命の危機はないはず。

それは先生から説明されていて分かってはいるけどやっぱり不安だ。


私はとにかく先生達を見つけようとさっき来た道を引き返す。

引き返せば私を探している先生達にも合流できるかもしれない。

そう思って私は来た道を引き返す。


「……えっとここはどこなんだろう」


しかし引き返した道が間違えていたのか全然知らない場所に来てしまう。

とにかく人がいる場所に向かおうと闇雲に進もうとするが足が縺れてしまってその場でどんと転んでしまった。


「……だ、誰か……」


別に山に取り残されたことが不安なのではない。

この山ならば大人しくしておけばすぐに誰かしらが見つけてくれるはず。

ならばどうしてこんなにも不安なのか、単純な話だ。

一人ぼっちという状況。今誰にも愛されていないこの状況が不安なのだ。


膝を擦りむいて怪我をしている。別に無理をすれば動けないことはないが無理をして動いたところで場所が分からないので意味はない。

しばらくこうして静かに待つことにする。


やがて数時間が経った。太陽は少し沈み、茜色の光がこの空間を包み込む。

夜まで見つからないなんてことないよね? と流石に不安になったその時だった。


「……栞! もうなんでこんなところにいるのさ」


「……文ちゃん!」


文ちゃんが私を見つけてくれた。彼女は仕方なさそうに溜め息を吐きながら頭を撫でてくれた。


「私……迷子になって」


「分かってる。よしよし、それより早くみんなと合流しよう」


「……うん」


そういって立ち上がって歩こうとするけど足の怪我で片足を引きずるような形になってしまう。

そんな私の情けない姿を見て文ちゃんはそっと私の前でしゃがんだ。


「……どうしたの?」


「おぶったげる。栞……怪我してるんでしょ?」


「だ、大丈夫? 重いかもだけど」


「栞なら重くないよ! そんなこと気にせずに頼ってよ」


「……うん」


私は文ちゃんの背中におんぶをする。文ちゃんの背中……凄く暖かくて安心する。


「文ちゃん……見つけてくれてありがとう」


「当たり前じゃん。私が誰よりも栞のこと好きなんだ! だから絶対に一人になんてしない。迷子になっても絶対に私が一番先に栞を見つけるから」


「……うん」


私は嬉しくてそのまま文ちゃんの背中に顔を埋める。

やがて十分も歩くことなく休憩所の方にたどり着いた。


「あれ……思ったより休憩所が近い」


「そりゃそうだよ。普通に遭難するような山じゃないしすぐ近くにお店やら施設が沢山あるから逆によく今まで誰にも会わなかったね」


「うぅ……」


私はおんぶから下ろされて休憩所のベンチに座る。

そしてその隣に文ちゃんもちょこんと座る。


「……後は見つかったよって先生に連絡するだけなんだけど……もうちょっと後ででいいかな? もう少しだけ二人でいたいからさ」


「うん……今日の文ちゃん凄くカッコ良かったよ」


「栞……」


私たちはそっと手を手を繋ぎあって顔を近づけるとキスをしたその瞬間だった。


「文……? ……何してるの?」


聞き覚えのある声が聞こえて私たちはその方向を見る。

そこには悲しそうな表情でこちらを見る椿ちゃんの姿があった。

いやそこにいたのは椿ちゃんだけではない、先生もそして柚ちゃんも私と文ちゃんのキスを見ていたのだった。

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