貴方にプレゼントよ
「まさか二日連続でショッピングモールに行くことになるなんて」
私は昨日見たショッピングモールの景色に苦笑いしながら椿ちゃんと一緒に散歩する。
椿ちゃんとデートに行く約束はしていたものの、デートの場所については椿ちゃんに全て任せていた。
結果として場所はショッピングモールとなりしかも映画を観に行くという目的も同じものになってしまった。
もっとも同じといってもあくまでも文ちゃんとは友達同士でのお出かけ。
目的が同じでも椿ちゃんと一緒だとやっぱり緊張するし妙にどぎまぎしてしまう。
「椿ちゃん。今日は映画を観るって言っていたけど何の映画を観るかは決めてあるの?」
文ちゃんは事前にチケットを買っていたので椿ちゃんもチケットを用意しているのか気になって尋ねる。
出来れば同じ映画は嫌なので昨日観た映画以外がいいんだけど。
「まだ決めていないわ。映画館に来てから決めるつもりよ。だけどその前に何か食べたいわね」
まだお昼には少し早いけど、これぐらいの時間の方が混まずに食事をすることが出来る。
昨日はクレープだったけど、今日は何を食べようか。
「栞は何か食べたいものとかある?」
「特にないかな」
「そう。それなら近くのレストランにしましょうか」
「……レストラン」
そうか。当たり前だけど同じ場所でも人が違えば行くところも変わってくる。
私はショッピングモールには文ちゃんと一緒に行くことが多いのでついフードコートで食べるものだと思っていたが、それは私たちの常識なだけで椿ちゃんは違うらしい。
「栞はそれで問題ないかしら?」
「うん……椿ちゃんが食べたい所でいいよ」
それに対して椿ちゃんは私の手を引いてお洒落なレストランへと入る。
小綺麗なレストランの中、椿ちゃんと私は席に座った。
「栞、どうしたの? 固まっているみたいだけど」
「いや、お洒落なお店だから緊張して……」
勿論何度か友達と小綺麗なお店自体には行ったことはあるけど。
その回数はそんなに多くなく、ましてや好きな人と一緒となるとレストランの雰囲気も合わさって頭が真っ白になる。
そんな緊張する私を見て椿ちゃんは安心させるように私の手にそっと触れた。
「ごめんなさい。私は普段からレストランでの外食が多いからこれが当たり前で」
「い、いいんだよ。むしろ椿ちゃんってこういうお店に行っていて凄く大人だなぁって思っちゃった」
私がそう言って笑うと椿ちゃんはありがとうと静かに口にした。
それから私たちはそれぞれ料理を注文して食べ物が来るのを待つ。
その間に椿ちゃんは鞄から袋を取り出して私に渡した。
「貴方にプレゼントよ。折角のデートだし何か栞にあげたくて」
「い、いいの?」
「ええ、その……気に入るかは分からないけどね」
まさかプレゼントを貰えるなんてと驚きながら大切に袋のなかを確認する。
すると中に入っていたのは一冊の絵本だった。
「その……絵本が好きみたいだったから」
照れ恥ずかしそうに言う椿ちゃんに私は満面の笑顔を浮かべた。
本当に嬉しかった。勿論中身が絵本なのも嬉しいことだけどそれ以上に何か物をプレゼントして貰えるほど私は椿ちゃんに好かれているのだとその事実が嬉しかった。
「ありがとう。大事にするね……でも」
私は絵本の袋を大切に置いた。そんな私に椿ちゃんは不思議そうに私を見た。
「私は一人では絵本を読まないんだ」
「そ、そうなの? 前、あんなに私に絵本を読んでってお願いしていたから絵本好きなんだと思ったのだけど」
「私が好きなのは絵本を読むことじゃなくて好きな人に絵本を読んで貰うことなんだ……だから」
私は少しだけ照れながら椿ちゃんを見る。
「だからまた絵本を読んでくれると嬉しい」
「そういうこと。いいわね、また一緒に絵本を読みましょうか」
椿ちゃんはそう言うと優しい表情で笑った。




