07 ギルドのお兄さん
_(┐「ε:)ノ==旦
「得意武器、魔法……」
「はい」
ざっと内容を確認していたお兄さんの目が止まり、ちらりとこちらを見る目がちょっと怖い。
え、なんかダメだった?
火属性、風属性、無属性の補助魔法、光属性の軽度の治癒、って書いたけど、ウソじゃないよ。
神聖魔法のこと書いてないだけだよ!
魔法にはたくさんの属性があるけど、その中でも特殊なのが神官や聖女が使える神聖魔法。
そもそも素養をもっている人が珍しい上に、他の属性では代わりがきかない能力だから、他とは扱いが異なるんだとか。
バレるとめんどいだけだから、これからはなるべく隠すって決めた。
だから神聖魔法だけは書いてないけど、他はホントだよ?
やる気なさそうなのに妙に隙がない、不思議なお兄さんの目が、あたしを見透かそうとしているようで、悪いことしてないはずなのに今さら緊張でドキドキする。
そんな見られても何も出せないよー。
白状することもないよー。
お腹すいたよー。
「……………………はぁ。何にしろ確認は必要だから、こっち来い」
「は、はーい!」
すんごい深いため息つかれたんですけど。
笑顔はキープしようと頑張ってたけど、さすがに引きつってる気がする。
カウンターに『離籍中』の札を置いて横から回るように指示し、あたしの書いた登録用紙を手にさっさと奥にある扉に向かうお兄さんを慌てて追いかける。
扉の向こうは個室になっていて、体格のいい男の人が10人入ると狭いくらい?
天井が高いと実際より広く感じたりするんだけど、この部屋は窓とか一切ないから逆に狭く感じる。
窓もない密室に異性と2人きりって……あたしじゃなければロマンスの予感!
なんちゃってー。
なんてアホなこと考えてる間もお兄さんは壁の魔導具を操作してる。
「使用用途、ギルド登録希望者の能力測定。担当職員、スライン・エイガス。──起動開始」
やっぱりやる気のなさそうな声で宣言すると、リインという甲高い音と共に部屋に結界が張られたのがわかってびっくりした。
え、なんで結界? しかもわざわざ音鳴らしてるの?
別に不安とかはなかったけどいまいち状況が分からなくて、室内とお兄さんをめっちゃ見ちゃったわ。
「冒険者として登録する際に魔術関連は詐称が多い。トラブルの元になるので確認は必須となっている。だが手の内を周知するような状態は好ましくないので、検査時は外部からの遮音と視界不良の結界を使用する決まりがある」
うーん、嘘ならすぐばれるからな、って忠告されちゃった。
でもあたしが怪しいからわざわざ検査する訳じゃない、ってことでもあるのよね?
じゃーもう堂々としてるしかないね。
それにやる気と愛想はないけど、仕事としての対応は手抜きしないタイプと見た。
なら気になることは普通に聞いちゃえ。
「ねえ職員のお兄さん、結界はる前に魔導具に登録? してたやつ、あれって何してたの?」
「……音が聞こえず中もよく見えない、と来れば、よからぬことを考える輩はどこにでもいるということだ」
「あーーーー。えーと、お疲れさまです?」
「…………さっさと検査を済ませるぞ」
そうよね、密談も逢引きも安心安全って考える人いるよね。
なんかトラブルあったんだろうなーって想像つくから、それ以外に言葉が出なかった。
お兄さんに近付くように促されたのは、部屋の奥に唯一置かれている大きな台。
と思えば、上部がぱかりと開いたので箱のようなものだったみたい。
中から出てきたのは──水晶玉。
おおっと見たことあるぞー?
成人男性の両手でもギリギリ包み込めない位の大きさの水晶玉を載せているのは、魔力量と属性を調べることが出来る、鑑定の魔導具。
忘れられるはずがない。見間違えるはずもない。
──この魔導具のせいで、あたし筆頭聖女になったんだもの。
実際、神官や聖女になること自体に魔力量の大小はそこまで関係ない。
でも王太子の婚約者となる筆頭聖女だけは、素質や魔力量が重要視されるから、選定の儀で密かに不適格者のふるい落としが実行されている。
そういった時に重用されるのが、この鑑定の魔導具。
多少の不正は出来ても、本質的な部分はごまかしきれなかった。
だってあたしめちゃくちゃ反応させちゃったもん……。
魔力を貯めておく魔導具で反応のかさ増しは出来ても、減らすことは出来なかったんだもん……。しょんぼり。
でもあれと同じならヤバくない?
神聖魔法のことバレちゃう? 口止めオッケーですか、無理ですか?
わかんないけど、冒険者になる前からプチピンチ!
内心あわあわしてたら、お兄さんから鋭い目が飛んできた。
え、なに、冷静なふりしてたのにどっか動揺出てる?
それともお兄さんが特別鋭いの?
やだもー怖い。皆に言われた通り、冒険者なんてやめときゃ良かったのかな。
じわじわ泣きそうになってるあたし本体より先に、あたしのお腹が小さく『ぐう』と鳴いた。
お兄さんの目が冷たい……。
めっちゃあたし空気読めない子みたいになってるんだけど。
──いやでも待って、珍しく弱気が主張を始めた瞬間に体が渇を入れてきたようなこのタイミング、ある意味では空気読んでる?
心と体は必ずしも一致しないという、貴重な経験だったわ。
そうよ、あたしはこの街に来て、美味しいものを食べるっていう幸せを知ってしまったの。
美味しいものを求めることをライフワークにしたいとまで思ったの。
今さら諦めるなんて、負けず嫌いの名が泣くわ!
感謝と再燃した闘志を伝えるようにぐっとお腹に力を入れて、あたしは真っ向からお兄さんの目を見返した。
何度だって受けて立つんだからね!
最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')
感想・評価くれると嬉しいです☆




