23 春の女子会と、
GWですね(*゜▽゜)ノ 旦
本日の天気は、晴れ!
鮮やかな青と白い雲の対比がきれいな、とっても気持ちのいい快晴である。
皆がこぞって布団や洗濯物を干してるから、あちこちで色とりどりの布がひらめいてる。
同じくあちこちで咲き誇ってる色とりどりの花も街を彩ってて、あー春だなーって感じると、特に理由もなく気分が明るくなった。
国内最南領のフォルナは特に温暖な気候で、冬もそんなに寒くなかったのにね。
春ってだけでテンションがあがる自分に疑問を抱きつつ、のんびりと街を歩く。
あたしは昨日と一昨日も探索に出たので、今日はお休み。
気づかない内に溜まっている疲れがいちばん危ないって聞いたから、なるべく3日連続の探索には行かないようにしてるんだよね。
冒険者は自己責任がいーっぱいある。
だから安全確保も自己責任のうちってね。
助けてくれないなんて冷たいとか無責任とか、そういう的外れな文句を言う人もいるけど、助ける側だって命がかかってるから、なんでもかんでも引き受けられるわけがない。
物と違って命は取り返せないもんね。
あたしは今のところ、自分の命を天秤にかけてまで成し遂げたい目的も意欲もないので、休みはしっかり取ってる。
リズはあたしよりしっかり休みをはさんでるかな。
そもそも魔導具作りが優先だしね。
かと言って毎日毎日魔導具作りだけしながら生きてるってわけでもなくて、そっちもほどほどに休憩をはさんで、買い物や食事に出たりもする。
そう、今みたいにね!
ってことで今日はリズと女子会。
いつも女2人だし、常に女子会みたいなものじゃんとか思ってる人はわかってないなー。
女子会は! 楽しむもの!
探索は! 性別関係なく真剣に挑むもの!
まったく別物だから勘違いしちゃダメだよ?
そう、つまり今日は楽しむ日。
リズと2人で街で色々見たり買ったり食べたり喋ったりしながら過ごす日なんだよ。
女子会デーは2人のタイミング次第だから月に1度あるかないかだし、あたしは普通に楽しい。
仕事中毒ってわけでもないけど、仕事に追われながらすさんだ生活を送っていたあたしにはわかる。
ただ遊ぶだけ、って、贅沢で幸せなことなんだって!
実は一緒に遊びに行ける相手と自由に使える時間がないと、遊ぶだけって実現しないんだよ。
つまりリズと冒険者生活サイコーってことだね。
世間的には正規職につけないあぶれ者の集まりだの、保障がない危険な環境だの言われてるけど、あたしには天職なのかもしれない。
くふくふ笑いながら、あたしはリズとの休日を堪能してる。
雑貨屋を覗き見たり工具を探したり、探索の道具を見たり携帯食料を見たりと、必要なことから趣味の範囲まで、気の向くまま自由に歩き回った。
いやー普通に楽しかったね!
「そう言えば昨日は2人と一緒だったんだよね。どこまで行ったの?」
ふと気になってリズにそう訊いたのは、夕食に入った店での提供待ちの時だった。
お昼は屋台で買い食いして簡単に済ませたから、夜はお気に入りのお店でガッツリ食べたい! って、あたしがわがまま言ったんだけどね。
初めてリオネの実を食べた思い出の店こと、おいしい果物と野菜が売りの店『ラシャス』はあたしの定番で、リズも気に入ったみたいでたまに一緒に食べに来る。
野菜が多いから、ガッツリ食べても比較的ヘルシーなところも嬉しいよね。
最近ちょっと食べ過ぎかもなーって思った後とか、大変ありがたいコンセプトでいつもお世話になってます、大感謝!
でもって、とっても美味しい料理が来るまでの時間と言えば、やっぱり雑談だよね。
そんなわけで今日の話題は、思い切ってリズのプライベートに踏み込んだ質問を投げてみた。
幼なじみっぽい感じの男2人とリズとの関係、普通に気になってたんだよね。
でもあたしが昔のことをうまく話せないせいで、リズのことも聞けないでいたし、リズにも聞かないでほしいって空気出してたと思う。
リズは魔導具師だけあって、すごく論理的に考えてるし、そもそも地頭がいいから色々察してる感じがある。
時々もの言いたげな顔してたし、心配そうな顔もしてたしね。
でも気になって当然の疑問もたいてい見逃してくれて、半年もあれば話すだろう昔のアレコレとかも、お互いに話題に出さないままだった。
つまりめっちゃくちゃ気を使ってくれてたんだよね。
それに甘えてるうちにいつの間にか半年も経ってて、いい加減に覚悟を決めなきゃって、最近やっと考えれるようになってきた。
いやもうね、無意識に避けてる自覚すらなかったなって気付いた時は、地味に恥ずかしかったけどね!
自業自得って最近何回聞いたり言ったりしたんだろう……泣ける。
ホントは、自分の特殊な事情を説明するのはまだ怖い。
リズなら言わないなって思ってても、無責任だって軽蔑されるかもって気持ちも完全には消えない。
そう考えるのは、あたし自身がそう感じているからだってわかってる。
割り切ったつもりでうじうじしてるのは、ただのあたしの弱さだ。
でもこのまま付かず離れずの関係のままじゃイヤだなって、すごく今さらだけど思えるようになったからね。
実はここ最近ずっと、きっかけになる話題とかタイミングとか見計らってたんだけど、何日も悶々としてるうちに疲れてきて、考えてもうまくいく保証はないしなーって、なんか開き直っちゃったんだよね。
という訳で、今日この瞬間に、前振りもなく勢い任せでレッツチャレンジ!
……こーゆーとこが心配されるとこだって自覚も一応あるよ、うん。
怯む気持ちをごまかすように違うことを考えつつ、リズの反応を待つあたしの心拍数、だいぶヤバいよー。
でもずーっと避けてた2人のネタを出したあたしによっぽど驚いたのか、リズは完全に固まっちゃった。
……ホントにわがままでごめんだけど、心臓破裂する前に反応プリーズ。
無言で見つめ合って、そろそろ1分になろうって頃かな?
前菜を運んできた店員さんに戸惑いながら声をかけられて、やっと2人して慌てて動き出した。
挙動不審でごめんね、店員さん。
めっちゃ声かけ辛かったと思うわ……ちょっと反省。
やっぱり唐突すぎたよね、楽しく食事するためにもいったん別の話題に変えよう。
「あー、そのね……」
「待ってセシル。反応遅くてごめん。あの2人とのこと、聞いてくれる?」
「────うん!」
ふんわり笑って、ちっともイヤそうな素振りを見せないどころか、逆に嬉しそうなリズに、ああ待ってくれてたんだなって気付いた。
きっとリズにとって2人は本当に大切な存在なんだろう。
何となくわかってたのに、あたしの臆病さがリズに口をふさがせてたんだ。
あとで猛省しようとだけ決めて、まずは目の前のリズの話に集中。
まあぶっちゃけ彼の──ジオンの恋物語にも興味あるしね!
「あのね、昨日は深度3の入り口まで行ったんだよ。2人は今Dランク昇格に向けて成果を集めているところでね、一緒にルルセイの討伐してきたの。途中で綺麗な花畑を見つけたから、今度セシルにも見せたいな」
「へー、花畑? 行ってみたいな!」
「セシルの髪の色そっくりで、すごく綺麗だったの。絶対行こうね」
楽しそうに次の予定を語るリズが嬉しくて、あたしはまたくふくふ笑って、食事と会話を楽しむことになった。
しかも話題が膨らんだ結果、リズと彼らの出会いも教えてもらっちゃった!
なるほど、大切な理由わかったわ。
あたしにとってのリズって考えたら簡単に想像できちゃったよね。
ついでにお互いに年頃になって、純粋に自分を心配してくれる可愛いリズにジオンが惚れちゃったんだなってことも想像できちゃったね。
うんうん、仕方ないよ。
そんなこんなで色んな話を聞いてお腹も満杯で、あたしはほくほく顔で『ラシャス』を出た。
今日はリズがたくさん話してくれて、あたしのことは全然話さなかった。
わざと聞かないようにしてくれたんじゃないかな。
次の時には、あたしも話が出来るといいな……できれば周りに人がいない時がいいけどね。
「あ、そういえばあれ買い忘れてた。帰る前にジオンの家の商会に寄って行きたいんだけど……反対方向だし、ここで別れる?」
「ん-、いやあたしも行く! ついでにたまには挨拶ぐらいしてこっかな」
「──うん、じゃあ行こうか」
店を出てすぐ、リズが買い忘れに気付いた。
もうすぐ暗くなるしこのまま別れてもいい時間だけど、どうせだからもう少し一緒にいたい。
あと話題の男どもの顔が見たい。
ということで方向転換して、ジオンの実家でもある商会へ再出発!
道すがら探りを入れたところ、今のところリズの方には恋愛感情はなさそうというか、まだそこまで育ってなさそうなんだよね。
好感度高いし相性も悪くなさそうだし、ワンチャンあると思うんだけどなー。
まあ横からごちゃごちゃ言うのも野暮だよね。
とりあえず今は静観して……恋の行方を楽しませてもらっちゃおーっと!
ミーハー心丸出しでうふふと笑うあたしを不思議そうに見てくるリズをごまかしつつ、のんびり歩いている内に目的の商会が目に映って──2人して足を止めてた。
一瞬顔を見合わせてすぐ、同時に商会まで走りだしてた。
商会の前で、上等な服を着た商人らしき男性と──冒険者ギルドの職員が話をしている姿が見えたからだ。
周囲を従業員や冒険者らしき人たちが囲って話を聞いているみたいだけど、皆一様に深刻な表情をしてる。
少なくとも、いい知らせじゃない。
何もわからなくても、それくらいは想像がつくよね。
そんで、この商会の前で、たぶん商会長らしき男性と冒険者ギルドの職員が話をしている。
その理由として真っ先に思い当たる存在と言えば──。
「ゼルおじさま!」
「……ああ、リズかい。お買い物かな」
人をかき分けるようにリズが男性に突撃したけど、普段から懇意にしてるのを皆知ってるのか、誰も無作法を咎めない。
少し顔色が悪いけど、ジオンの父親らしい男性は温和な笑みを浮かべてリズを受け入れる。
それが逆に、嫌な予感を助長させた。
「はい、いえ、それより、一体何が……」
「ああ、森で救援信号が上がったらしいんだがね……それが多分うちの倅の出したもののようだ」
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