18 フロッグキラー①
|ΘωΘ)ノ==旦
「むーーー! 納得いかなーーーい!」
冒険者ギルドのカウンターにへばりついたあたしの、不満の唸り声が止まらない。
だってだって、こんなはずじゃなかったんだもの。
うだうだと悶えるあたしに、カウンターの向こうで手続きをしていたエイガスさんが呆れたように声を掛けてくる。
「じゃあ何なら納得できるんだ」
「具体的にこーゆーやつならいいって意味じゃなくてー! これはヤダってやつあるじゃん!」
「自業自得だな。意味知ってるか? 善悪問わず自分のやったことが自分に返ってくるって意味だ。つまりお前の行いの結果だな」
「いーーやーーだーーー!!」
「うるさいぞ、”フロッグキラー”。周りの迷惑だ」
「エイガスさんの意地悪ううう……!」
あたしが泣きぬれているのは他でもない、新しく更新されたギルドカードにしれっと刻まれた『フロッグキラー』の文字のせいだって知ってて言うんだもの。
よりにもよって更新したばかりのカードに、何をどうしてそんな不本意な通称を刻印しちゃうの。
か弱い女の子が嘆き悲しんでいる時くらい、優しさを垣間見せてくれてもいいのよ?
……そんな姿、想像できないけど。
で、なんでこんなことになったのかと言うと。
話は少し前に遡る。
──冒険者として登録してから、いつの間にか半年が経っていた。
リオネの実のために真面目に探索を続けて、先日リズとともにDランクに昇格!
いえい! これで一人前の冒険者って謳えるね。
でもめちゃくちゃ早いペースな上に、若い女性ふたりでの活動は珍しいらしくて、気付けばあたしたちは有名人になってた。
超絶! 不本意! な怪力少女扱いとかも含めて、とりあえず有名になっちゃったのね。
するとどうなるかって?
ムダに絡まれやすくなるわけよ……いい意味でも、悪い意味でもね。
Eランクから一人前扱いされるDランクに上がるまでに、数年かかるって言われてる。
あたしとリズは初っ端つまづいた期間があったけど、対策がとれるようになってからは順調に探索を進めて、5か月足らずで昇級できた。
で、それが気に入らんって連中が、当然いるわけよ。
それに対してどう対処したらいいのか他の冒険者に聞いたら、腕っぷしでわからせるしかないってのが大半の意見で……物理以外の解決方法は?!
そんなだから冒険者は脳筋思考って言われるんだよ!
こっちが理性的に対応しようとしても、相手が脳筋だと話が通じないってことも多くて、結局最後は力づくになるからかなって最近わかってきたけどさ……。
そんでまあ、僻みだったり妬みだったり、ただ単に目立ってるのが気に食わないって奴らの狙いが、大体あたしに向かってくる。
あたし本人もそうなるよねえ、って思う。
リズはもともとここに住んでて、お爺さんは有名な魔導具師で、孫のリズ本人も優秀だって期待されてて、そんでもって大人しくて控えめで可愛らしい女の子なわけよ。
んでその横に、最近来たばかりのよそ者で騒がしくて態度のでかい小娘がいたら、どっちを標的にするかなんて考えるまでもないよね。
でもあたし、無駄に絡まれて黙っていられるタイプの女の子じゃないの。
だから対処法は自然と返り討ちになるよね。
ふう、あたしもすっかり冒険者に染まっちゃったなあ……元からじゃないの? なんて声は聞こえなーい。
ある日、一人で深度2から3の境界をウロウロ探索してたあたしの耳に、かすかに戦闘音が届いた。
まだ少し離れてるけど、かすかに聞こえる人の声から推測するに、深度3に入ってすぐくらいの位置じゃないかな?
邪魔しないように気を付けないと。
相手が助力を願うまでは手出し厳禁って言うのが、この冒険者のルールだからね。
でも今日のあたしは偵察に来てるんだよねー。
どんな魔物がいるか気になるから、こっそり様子を見させてもらおう。
近づきすぎないようにたっぷり距離を取りながら、魔物の様子が見える位置を探して、っと……こっちかな?
こそこそ低木の陰に隠れながら移動してたら、途中から足元の土が水分を含んで柔らかくなってきた。
少し近付いたことで、戦闘音の合間に混ざるばしゃばしゃと水を蹴散らす音も聞こえるようになる。
もしかしてこの先って水場なの?
足場が悪いのは困るな、とリズと2人での立ち回りを想像してたら、ひときわ大きな水音と叫び声が響いた。
「うわっ!! くそ、泥だらけで見えねえ!!」
「片方は右に回ったぞ! もう1体どこ行った?!」
「多分あっちに──あ、逃げる気ですよ!」
「待てやコラア!!」
泥ってことは沼かな? 魔物は2体以上、うちの1体は逃走、と状況を予測して、まずは周囲の安全確認!
あたしだってこれくらいは冷静に出来るようになりましたとも。
経験って偉大だね。
低木から頭を出して素早く周囲を確認すると、離れた木の向こうに人影と水しぶき、あと丸っこい魔物のシルエットが見える。
まだだいぶ離れてるから大丈夫かな、と思った次の瞬間だった。
ドンッ、と何かがぶつかった衝撃音とともに、大きな影があたしの方に向かって吹き飛んできた。
木にぶつかりかけたその影は、しかし蔦のようなものを高所の枝に伸ばして上手く勢いを殺すと、くるりと回りながらさらにこちらに向かって空を飛び、四つ足で地面に着地する。
その場所はあたしから精々10メルほど。
咄嗟に動けないよりは、と足場のしっかりした場所に移動して杖を構えたあたしに気付いて、その魔物はゆっくり顔を上げた。
ぬらりと光る肌は打撃も魔法も効き辛く、その跳躍力で自身の体長の何倍もの距離を素早く動く。
そう──カエル型の魔物だ。
魔物の正体に気付いた瞬間に、あたしの喉から悲鳴になりそこねた何かがこぼれ出た。
あたしはカエルが嫌いだ。
大っっっ嫌いだ!!!!
最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')
感想・評価くれると嬉しいです☆




