14 森をすすむ、どこまでも
木を隠すのなら森の中……
ヽ། ﹒ ~ ﹒ །╮
⋋⁞ ◔ ﹏ ◔ ⁞⋌ ←木
リズの魔導具の試し打ちは毎回行ってるって聞いた。
いざという時に不具合が出ないよう、リズは毎回、森の入り口付近で魔導具の試運転をして調子を確認しているらしい。
魔導具の調子は体の調子と同じように、少しずつ変化があるんだって。
リズが魔物の森で使う魔導具イコール武器がほとんどで、つまり命に関わることだから、あたしからも文句はない。
再び見つけたアルミラージにも、さっきと同じ戦法で近付いた。
リズの命中精度がずば抜けているとはいえ、万が一外した時にすぐに追撃できる位置にあたしが待機して、それから射撃。
一撃で倒せなかった時もあたしが魔法で追撃して、まず標的をリズからずらすのだ。
そこに再びリズの射撃、あたしの魔法、と二方向からの交互攻撃があたしたちの基本戦法である。
この形になるまで二人でいろいろ試したけど、やっぱり問題はリズが遠距離攻撃特化で、接近戦に持ち込まれると弱いことだった。
あたしはいざとなれば結界も使えるし、身を守るくらいはできる。
だから射撃の後の生死確認も、もしもの時の囮も基本はあたし。
最初は危ないってリズにめちゃくちゃ反対されたけど、今はこの形で落ち着いてる。
まあそんなわけで、2回目に一緒に森に入った時からはこの戦法を通してる。
この森の魔物が外よりも強いって言っても、まだまだ入り口付近だからなのかな、王都近郊の魔物たちとは全然違う! って感じるほどではない感じ。
今のところ失敗したことも苦戦したこともないけど、当然この先は難しくなっていくんだろうから、油断は禁物だね。
さてさて、試し打ちをしながら移動しているうちに、深度2のエリアに突入ですよー。
森の中に線が引かれてるわけじゃないけど、大気中の魔力濃度と植生の変化で、なんとなくエリアの変化がわかった。
深度1は、まだ明るくて開けた場所が多い。
木々の間隔が広めだし下草も低いものが多いから、少し離れていても相手の姿を見失うことはそうそうない。
生息している魔物もアルミラージとか小型のトカゲとかで、もちろん油断はできないけど、新人でも落ち着いて対処できる相手が中心だね。
でも深度2に入ると、かなり緑の圧が増した。
わずかに太くなった木々の間隔はさっきまでより狭く、背の高い草や茂みも多く見られるようになったし、張り出した根っこで足場が不安定な場所もあるみたい。
だからこの先は深度1みたいに安易に広がらないで、お互いの位置を確認しながら動くのが大事になるんだって。
特にあたしたちの場合、あんまり二人の距離を取っちゃうと、追撃に入る前にリズが単独で魔物に詰められかねないからね。
代わりに取れるものもちょっと良くなるの。
深度1で見つかるのは野イチゴみたいな小さな実や、見慣れた薬草とかが大半なんだよね。
でも深度2では、親指の先ほどの青紫の実をつける低木が見つかることもあるらしい。
甘みのあとに少しだけ酸味が残るその実は、魔力や疲労の回復効果が高くて、それなりにお高めで取引されてる。
前に市場で両手ですくえるくらいの量が入った小さな籠が、10日分の食費に十分な値段で売られてるのを見て、愕然としたもん。
つまり見つけられたら美味しいし儲かるとか、すばらしいね。
……まあ、そういう夢があるからって、のんきに浮かれてばかりもいられないのが魔物の森なんだけどさ。
でも魔力に満ちているって言っても、緑豊かな森の中は空気が新鮮で思わず深呼吸したくなっちゃう。
まあ魔物の巣の近くとかは普通に臭いんだけどね。
鼻栓用意しとこうかなって思ったけど、食堂のおじさん達にやめとけって止められた。
わずかな匂いの違いで、状況の変化を察知することもあるからって。
ちなみに森の深い場所には、強烈な悪臭をまき散らす魔物もいるらしい。
しかも一度まともに悪臭攻撃を食らったら、最低3日は臭いが取れないって聞いた。
3日も自分が臭いとか、うら若き乙女には耐えがたすぎる……。
いやだ、あたし会いたくない!
もしそれが美味しい高級肉だったとしても、絶対に自分では取りに行かない。
そういうのは、誰かが持ち帰ってくれたものをありがたく買う方がいい、絶対に!
何日も臭い自分を想像して、あたしは本気でふるふる震えた。
そんなあたしに苦笑した冒険者達は、今のうちに臭さに慣れとけ、なんてありがたくないことを言ってくる。
根性論が過ぎると思うの。
美味しいものの良い匂いだけ嗅いでたいよう……。
新鮮な空気を味わおうとしただけなのに、ついでに嫌なことを思い出してちょっとげんなり。
いやいや余計なことに気を取られてる場合じゃないね、集中しなきゃ。
今日のメインは、深度2の代表的な危険種であるワーグの狩猟だ。
灰黒の毛並みをした狼型の魔物で、単独よりも2、3頭で縄張りを巡回していることが多いらしい。
素早さも攻撃性も、深度1のアルミラージや小型トカゲとは比べ物にならない。
しかも鼻も耳もいいから、獲物の血や小さな物音にも敏感なんだって。
遠距離攻撃タイプのあたしたちにとって、先手を取れないのはかなり痛い。
だから探索は、いつも以上に丁寧にやらないとね。
深度2に入ってからは、わずかに視界が狭くなっただけなのに、さっきまでよりずっと神経を使う。
リズも無駄口をやめて、眼鏡のフレームにそっと指を添えながら周囲を探っていた。
「反応、あったよ。南東方向200メートルくらい」
リズのこういう時の、周囲を警戒した小さな声は、普段よりずっと頼もしく聞こえる。
よし、じゃあ行こっか。
誤字・脱字報告ありがとうございます。
大変助かっております(*- -)(*_ _)ペコリ
最後まで読んでくれた皆さん、ありがとうございます(*'▽')
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