12 なーるほどーお?
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思ってたより長かった講習会がやっと終わって、ついにあたし的本日のメインイベント、リズさんとのお話タイムが始まりますよ。
ふふふ、この時をどれだけ待ったことか。
ちょっとドキドキしながら、隣で上着を羽織るリズさんの姿をそっと伺って、今しかない、とゆっくりと口を開いた。
「あの、リズさん、いま少し時間ありますか? さっきの話なんですが──」
「おーい、リズ! お前も今日が講習だったなんて驚きだぜ! マジでグーゼンだな!」
……はあああああぁぁ?!
また驚かせないように気を使っていたってのに、無遠慮に人の言葉を遮ってきた大声にちょっとどころじゃなくイラッとしたのは、仕方がないよね、うん。
てゆーかいちいち声が大きいんだよね、この子。
言動は子供っぽいけど、見た感じ骨格とかもうしっかりしてそうだし、こっちもあたしと同じ位の年齢と見た。
もうちょっと落ち着いたらどうなの?
内心ではぷりぷりしてても顔にはおくびにも出さないけど。
今のあたしにとっては、リズさんに好印象を残すことが最優先だからね。
頑張ってちょっと仲良くなって、そんであわよくば次の機会を待ったりせず、取り付けてしまいたいのだよ……。
だから『優し気な女の子』の仮面は外さないわ!
「あ、ジオン君。偶然だね。お家の商隊護衛がメインだって聞いたことあったけど、今度から樹海にも入るの? これもお家のお仕事?」
「えーあー、そうそう! ちょっと仕入れたいものがあってさー! それに、あれだよ、ずっと同じことばっかやってたら油断することもあるって聞いたからな! いつもと違うことしよっかなーって! まあ講習会が一緒だったのはたまたまだけどな!」
「そうなんだ。ジオン君は色々考えててすごいねえ」
「まあな! あーでも、その、リズが慣れるまでは一緒に行ってやってもいいぜ!」
なーるほどーお?
ここまで聞いてピンと来なかったら噓でしょ。
大声少年ことジオン君はリズさんがお好きなのね?
わっかりやすいのに素直にアプローチできない人っているよね、何でなんだろね……男の見栄とか?
まあぶっちゃけ見てる側としては面白いからヨシ。
さてさて、リズさんの反応は……?
「ありがとう。でもお仕事の邪魔したくないし、わたしのことは気にしないで。わたしも魔導具があれば戦えるし、慣れるまではちゃんと手前だけにするから」
「いや、でもいつも仕事が入ってるわけじゃないから……」
「あ、そうだよね。じゃあいつか同行をお願いすることもあるかもしれないね。その時はよろしくね」
「…………お、おう任せとけ!」
まさかの気付いてない系!
横で見てたから分かったんだけど、上手くかわしてるとか遠回しに断ってるとかじゃなく、本当にアピールに気付いてないっぽいんだよね。
だって本気で遠慮してたし、何なら気にかけてもらえてちょっと嬉しそうだったもん。
えーえーえー、ナニコレめっちゃ面白いんだけど。
口元がニヨニヨしそうになるのを必死でこらえて、必死で微笑みをキープ……え、キープ出来てる?
歯を食いしばりすぎて頬が歪んでないか心配。
でも面白いから他所でやってくれとは言いたくないんだよね。
あたしどうすればいいの?
本音を言えば、あたしがリズさんと仲良くなってから、目の前で繰り広げてほしい。
そしたら遠慮なくニヨニヨしまくってやるから。
「おい、そろそろ行くぞ」
「何だよトール、邪魔するなって」
「邪魔してんのはお前。そっちの子が先にリズに話しかけてたのに、お前が横入りしたの。一区切りついたんなら譲ってやれよ」
「え?! マジで?!」
視線が一斉にこちらに移動して、油断してたあたしの肩がちょっとだけ跳ねた。
ニヨニヨしてたかもしれない笑みもさすがに引っ込むわ。
連れの口悪お兄さん、ナイスパスっぽいけどちょっと鋭角過ぎて、続ける言葉に詰まるってば。
「あ、えっと……」
「この子あれだろ。最近ここに来たって噂の」
「え、うわさ、ですか?」
何それ知らないんだけど。
素で戸惑うあたしに、トールって呼ばれてたお兄さんはさっとこちらの容姿を確認して、それから興味なさそうな声で告げた。
「薄藍の髪の小柄で愛想のいい17かそこらの少女は、フォルナの飲食店を総なめしようとしてるフードファイターだってさ」
「「……えっ」」
「……………………はい?」
はあああああ?!
こんなお淑やかな年頃の女性に向かって、食いしん坊どころかフードファイター呼ばわりってどういうことなの?!
リズさんも少年もビックリして固まってんじゃん。
それ以上にビックリしたあたしもガッツリ固まってるけどね!
全く興味ないですって声と顔で、不愛想に初対面の人間の悪評を、しかも本人を前にして口にするとか、何なのこの人。
全然ナイスパスじゃねえわ。
「あ、の……」
「そこはどうでもいいんだけどな、つまり最近ここに来たばっかで、まだ仲良いやつとか冒険者の仲間とかいねえんだろ。だからリズに話しかけようとしてたのに、ジオンが邪魔したの。つまり邪魔はお前。了解?」
「あーそっか、うん、邪魔はオレ。了解」
「じゃあ行くぞ」
「おう。じゃあまたな、リズ──近いうちに、じいさんの店に行くから」
「うん、またね、ジオン君、トールさん」
目の前で3人は和やかに別れを告げているが、それを見てほんわか笑う余裕なんてない。
噂って何、どこまで広がってんの、誰が言い出したの、リズさんに悪印象持たれてないかな、この後あたしどんなキャラでいればいいの。
頭の中を色んな疑問が駆け巡って収集がつかない。
ていうか、あいつ、今超失礼なこと言ってなかった??? あぁぁぁぁぁ―――
男2人が小さくこっちにも会釈をして去っていくのを呆然と見送り、残されたあたしとリズさんの視線が再び絡んだ。
緊張で口ごもるあたしを見て、リズさんがあの可愛いほわっとした笑みを浮かべてくれる。
最初に話しかけた時と完全に逆だなって気付いて、なんかちょっとおかしくなって、あたしから余計な力が抜けるのがわかった。
なるようになる、なるようにしかならない。
それがあたしだものね。
「改めて、あたしの名前はセシルです。最近ここに来たので、親しい人がまだいません。迷惑でなければ冒険者としても、あたし個人としても、お友達になってほしいです! あと魔導具のこと色々聞かせてください!」
まだ初対面だから丁寧さは残して、でもあたしらしさを隠さずに、大口を開けた笑顔で本音を伝える。
あの元気少年ジオン君との会話を聞く限り、人見知りするだけで賑やかなタイプが苦手、とかって感じでもなさそうだしね。
それならあたし自身に慣れてもらうしかない。
あたしの勢いに押されたように目をぱちぱち瞬いてたリズさんは、薄く頬を染めて、すんごく可愛くはにかむように笑った。
なにこれ浄化されそう。
「わたしの名前はリズです。はい、お友達になってください。魔導具のことも、たくさん聞いてください」
よく暴走して話し過ぎてしまうので、そういう時は無理に付き合わないでくださいね……と恥ずかしそうに消え入るような声で続けた姿に、あたしノックダウン。
嬉しさと尊さに舞い上がりそうなにっこにこのあたしに、リズさんはポンと小さく手を合わせた。
「今日は講習会以外の予定がないので、少しお話しませんか? わたしのお気に入りのお店、紹介したいです」
「喜んでえええ」
手を合わせるリアクションも可愛い。
あたしが食いしん坊だって聞いたから気を使ってくれて、紹介したいって言い方してくれたの、めっちゃくちゃ優しいー! 好きー!
どこまででもついて行くよー!
そんな全開ハイテンションで笑み崩れながら、あたしはリズさんと連れ添って冒険者ギルドを後にした。
ちなみにリズさんとしたお話は最高に楽しかったし、お気に入りというパンケーキは最高に美味しかったです。まる。
最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')
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