10 可愛いので話しかけました
(´◉_◉`)。o○(儚げ美少女……?)
左の端に座っていた女の子は、見たところあたしと同じ年頃だと思う。
頭頂部でひとつに結んでいる肩までの長さのくせ毛はふわふわで、背もそんなに変わらないくらいじゃないかな。
でもやっぱり一番特徴的なのは、眼鏡だよね。
顔につけるものだから目が行きやすいし、なによりなんかすんごく似合ってる。
眼鏡ってさー、もっとこーシンプルなデザインのイメージだったんだけど、この女の子の眼鏡は違うんだよね。
シュッとスリムな赤いフレームは耳の前の部分だけ太くなってて、控えめに光を反射する小さな石が花弁のように並んでた。
……この石はたぶん魔石、かな?
そしてそんな眼鏡の奥で、青とも碧とも言えない涼し気な色の大きな瞳が、パチパチと瞬きを繰り返してた。
口を開きかけて、でも途中で止まってちょっと焦ったように視線を揺らす。
怖がってるとかじゃなくて緊張してる感じに見える。
そういうとこ、なんだか実家の近所にいた、かっわいい小型犬を思い出しちゃう。
最初はしっぽを丸めてがちがちだったのに、慣れたらびっくりするくらい元気だったんだよね。
――いやいやさすがに犬と同じくくりで考えちゃダメよね……反省!
とりあえず、すんごく緊張してることは間違いなさそうだから、久しぶりに『黙っていれば儚げ美少女』バージョンの笑顔を発動!
最近は遠慮なく大口開けて笑ったり、たまに変な笑い声を出してた自覚くらいはある。
直す気がないだけで。
でもまあ経験上、この笑顔は相手の警戒心を和らげるのにちょっと便利なのだ。
「あの、はじめまして。わたしセシルって言います。ご迷惑じゃなければ、お名前聞いていいですか?」
なるべくゆっくり尋ねると、明らかにほっとしたように女の子の肩から力が抜けた。
ふふふ、伊達に3年間も聖女サマを演じきったわけじゃないのよ。
でも聖女キャラはやり過ぎなので、単純に初対面なりの丁寧さを心がける程度にしておくのがポイント。
全部作った感じだと後で崩しにくいんだよね。
同じくらいの年頃で、同じように講習会に来てた女の子。
しかも、なんだか反応が可愛い!
正直、とっても、是非とも、今すぐにでもお友達になってほしいです。
あまりグイグイ行かないように気を付けなきゃ、とは思う。
……思うんだけど、ほにゃって感じの笑顔を見たらもうダメだった。
絶対お友達になってもらおう。
「えっと、わたし、あ、はじめまして。わたしリズって言います。よろしくお願いします、えっと、セシルさん?」
うんうん、よろしくお願いされちゃったのでお友達になりましょう。
「はい、セシルです。よろしくね。わたし2日前に冒険者登録したばかりなんだけど、リズさんはいつ登録したんですか?」
「あ、わたしは、登録自体は1年前に済ませてて……」
「あれ、じゃあすごい先輩だ。ぜひ色々教えてほしいです」
リズさんはまた視線を揺らして、今度は困るというより焦ってるみたいだった。
それから、諦めたようにしょんぼりと肩をすぼめる。
「いやあの、えっと……ごめんなさい。登録はしたけど、街の外に出た経験が、祖父の付き添いでオルスに行くくらいしかなくて……お役に立てるかわかりません」
「オルス……ええと、少し離れたところにある街でしたっけ? ごめんなさい、最近この辺りに来たばかりなのであまり詳しくないんです」
「あ、そうなんですね。オルスはここから馬車で4日ほどの場所にある街です。製鉄が盛んな街なので、魔導具の金具とか、細かい部品とかを見るのにちょうどよくて……」
「魔導具の部品、ですか?」
「あああそうですよね、すみません、祖父は魔導具師なんです。魔導具師は、必要に合わせて自分で採取してくることもあるので、冒険者資格を持ってる人も多いんです。今までは祖父に任せきりでしたが……祖父も高齢になってきたので、わたしでも手続きとかできるように資格を取った、感じ、です……」
魔導具とおじいさんの話になるとちょっと早口になったのも可愛いなー。
たぶんめっちゃ好きなんだろうなってわかる。
ってことはリズさんも魔導具師なのかな?
「リズさんも魔導具師なんですか?」
「はい、見習いです。実はこの眼鏡も……」
「おー、ここかー! もっとわかりやすくしてくれよー!」
ちょっと嬉しそうに自分から話そうとしてくれたところで、後ろから騒がしい声が響いた。
もーいいとこなのに、何?
「あれ、オレら以外にも来てるやついるじゃん。まさかオレら遅刻?!」
「ジオン、うるせえよ。早く入れ」
「お前だって遅刻なんだからな!」
「だからうるせえって。遅刻ならなおさらさっさと入れ」
「はいはい、遅刻じゃないですけどもう始めますから、君たちもそっちの空いてる席に着いて」
いや君ホントにうるさいね。
しぶしぶ振り返ると、元気いっぱいです! って感じの脳筋っぽい少年と、同じくらいの目つきの悪い少年、あと受付で見たきれいなお姉さんが並んで立っていた。
むしろ入り口を塞ぐお騒がせ少年とその付き添いって感じかも。
ちらりと隣を確認すると、眼鏡の奥のおっきな目をしばたいてるリズさんが見えた。
うむ、かわいい。さすがあたしとは反応が違うね。
もっと癒されたいし話したいけど、講習会が始まるようだからひとまずお預けだね。
終わったらまた話しかけてみよっと。
後ろから聞こえる騒がしい声が椅子に座ったようなので、リズさんとの交流を一時中断して前に向き直ったタイミングで、ギルド職員のお姉さんが話し出した。
「ちょうど時間ですので講習会を始めま──」
「あ、よかった、遅刻じゃねーじゃん!」
「……ジオン君、講習会の間は質問以外では黙っていましょうね」
「ハイ、ゴメンナサイ!」
「よろしい。では改めて、本日の講習を担当するギルド職員のコーネリアです。今からラズヴェイン樹海で活動するにあたって、最低限知っておくべき基本的な情報を伝えます。活用できるかは本人次第。一般的な依頼同様、ギルドは個人の安全を補償できません。頑張ってくださいね」
きれいなお姉さん、優し気な垂れ目に見合わぬ迫力をお持ちですね。
脳筋少年が完全にビビってるのちょっとウケる。
でも情報収集は大事だよね。
とくに魔物がいっぱいの魔物の森──ラズヴェイン樹海だっけ、のことは、知らないことより知ってることが多い方が絶対いい。
あたしも真面目に聞こーっと。
これで10話ヾ(*´∀`*)ノ
最後まで読んでくれてありがとうございます(*'▽')
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