第19話
僕はすべての決着をつけるため、フリージア・ラズベリーとスプルース・ミルキーをカウスリップ様の屋敷に呼び出した。
僕のもとにはすでにガーネットが戻ってきていた。
カウスリップ様がいなくなった以上、ガーネットをスプルース・ミルキーの側へ置いておく理由はない。
僕はフリージア・ラズベリーとスプルース・ミルキーの2人の前へ姿を見せる。
側にはガーネットとスマルト将軍、そしてSランク冒険者メイザリンの3人がいる。
スマルト将軍の姿を目にしたスプルース・ミルキーは
「将軍!!よくおめおめと私の前に姿を現せたものだな!!将軍は私たちエッグプラントを裏切ったのだぞ!!」
「しかしまあ、愚を悔いて過ちを謝罪するなら私は許してやろう。そのうえエッグプラント会議の出席も認めようではないか!!」
そんな発言にも何の反応も示さないスマルト将軍を見て、スプルース・ミルキーは困惑した。
「スプルース・ミルキー殿。わしにはもはや会議がどうのという欲はないのじゃよ。お主には悪いがな」
そして僕が話を引き継ぎ、
「今日集まってもらったのは、エッグプラントをここまで混乱に陥れた張本人たちを断罪するためです!!」
「罪深い行為を悔いてください。そうすれば創造神様はきっとお許しくださるでしょう」
その僕の言葉にわずかにフリージア・ラズベリーが顔をしかめる。
「まず第一の罪人はこちらのスマルト将軍です。将軍の立場にありながら軽率にも軍をおこし戦争の引き金をひき、多くの人々を混乱させた。その罪は重いです!!」
スマルト将軍は静かに口を開き、
「謝罪し、反省いたします。私利私欲で軍を動かしたことを認めます。許されるならどんな償いもしたいと考えております」
そう言って頭を下げて謝罪をした。
「続いての罪人はあなただ!!スプルース・ミルキー。私利私欲で父親を追い落とし、エッグプラントを思うまま操り、カウスリップ平民軍団長をないがしろにしてきた。加えると、僕の従者であるガーネットにも権力を楯に言い寄っていたそうだな」
「う、うぐ。だが、私は!私利私欲だけではない!!この国の行く末を見据えて国王とも話をし、エッグプラント会議に国王たちの権利を擁護する代表者の出席を認めたのだぞ!!」
「これは大きな一歩だろう!!」
うん、実はそう。
この人は腹は黒いが有能で先が見える政治家だ。
エッグプラントとコパー都市国家には必要な人材だと思う。
だけどガーネットの件があったのでちょっと仕返しをしてみただけ。
「最後に、この場でもっとも罪深き罪人はあなたです。フリージア・ラズベリー!!」
僕はフリージア・ラズベリーを指さして宣言した。
しかし、全く動じることなく、
「ふうん。どこが?なにが?まったく証拠もなく人を罪人呼ばわりするだなんて。私は罪を犯した覚えはありませんことよ」
手強い。
僕だけではこの女性は罪を認めないかもしれない。
ここでホーネットに出てもらおう。
従者のホーネットはずっと茶色のローブを全身に羽織っており目立たないようにしている。
そんな彼女が発言をするのでフリージア・ラズベリーも他の人も驚いている。
「はじめまして。わたしは輝かしきご主人様の従者、名乗るほどの者ではございません。ですが、フリージア・ラズベリー様のあまりの私利私欲ぶりに義憤を感じえませんのでここで断罪をしとうございます」
「まず、さきのシルバー王国軍を攻めさせたのはあなたですね。理由はエッグプラントをつぶすため。それを防いだカウスリップ様が邪魔になり、わざと冷遇させた」
この発言をきいてスマルト将軍もスプルース・ミルキーも顔色を変えた。
初耳だったのだろう。
それにこの件はエッグプラントにとっては悪夢だったに違いない。
「そしてスマルト将軍を操るために、彼の御子息サウルどのを病気にしたのもあなたの仕業ですよね。そして薬を与えるからと将軍を言いなりにして戦争をさせた」
「な!!な!!きさまがサウルを!!」
スマルト将軍は激昂している。無理もない話だ。
「平民軍団長カウスリップ様がこの国を出た最大の理由は妹のマリーさんが死んだことにあります。手紙ではある商会が薬をくれたと書いてありましたが、この商会はラズベリー商会、あなたの手の者です」
「マリーさんはこの薬を飲んで数日後に急に容体が変わり死んだとあります。マリーさんを死なせてカウスリップ様をこの国から追い出したかった。なぜか」
「エッグプラントの権力を弱め、代わりに国王と貴族の復権を目指したからに他なりません」
これを聞いたスプルース・ミルキーはフリージア・ラズベリーをにらみつけていた。
「なぜだ!!なぜあなたがそんなことをする必要がある!!いまさら国王に権力をあたえるなどと!!国王に権力を与え、その代わりにラズベリー商会がコパー都市国家を、独占状態にするのが目的なのか?!!」
ホーネットはそれをやんわり否定する。
「この方の目的はそのような浅はかなものでないですよ。もっとくだらないです。この方はねぇ、創造神エクレアーナ様と会いたいのだそうですよ」
何故知っているの?
そう言う声が聞こえてきそうなぐらい驚いた表情でフリージア・ラズベリーは目立たない格好をしているホーネットをにらみつけた。
「この国の国王に権力を与えれば呪いをかけた張本人である創造神が再び姿を現すのでは、と考えたそうです」
「そんなことで・・・・・・」
とつぶやく僕に、
「そんなこと?!そんなことではないわ!!創造神様とお会いするために私がどれだけ苦労をしてきたか!!」
と激昂するフリージア・ラズベリーを制して、ホーネットが
「ええ、知っていますよ」
「あなたのことは全て調べました。まずあなたはカレン・ラズベリーの姉などではなく、祖母?いいえ、曾祖母ですよね」
「この方は見かけよりずっと年を召されてるのです」
ホーネットはそう言うが、全然そんな風に見えない。
なんか怪しい魔法でも使っているのか?
「その通りですよ、ご主人様。フリージア・ラズベリーは目的のため闇ギルドと手を組み、不老になる魔道具や魔術を追い求めたのです。その代わり、闇ギルドには魔神具の情報を与えたようですね」
なんと先日、僕が壊滅させた闇ギルドの幹部とフリージア・ラズベリーはつながっていたのだ。
なんて迷惑な!!
「ふふ、ふ、ふふ、そうよ。良く調べたわね。どうやって調べたのかしら。私はね。100年前に創造神様に会ったのよ」
「そのときの神々しいお顔をもう一度拝見したいの。出来ればお仕えしたいのよ。そのためにこのコパー都市国家に目を付けたのよ!!」
コパー都市国家がかつてコパー農業国と言う名前であったときに創造神が直々に姿を現し呪いをかけた。
その呪いによって王族とそれに従う貴族の権威は落ちていき平民や商会など経済力のある富裕層に権力が移っていった。
呪いを与えた原因はわからないが再びこの国の王族に権力をわたすと創造神が怒って姿を現すのではという考えでいままでエッグプラントの邪魔をしてきた。
あまりにも身勝手な理由でこのエッグプラントの邪魔をし何人もの罪無い人を病気にやったり死亡させたことに、その場にいた者はフリージア・ラズベリーに戦慄を覚えていた。
だが、ホーネットはそんなフリージア・ラズベリーを冷めた目で見る。
「残念でしたね。あなたの計算違いはこちらにいるご主人様の存在です」
「スマルト将軍が戦を止めたこと。行方不明の王子を見つけたこと。どちらもご主人様が関わっているのです」
そう言って僕を見る目はフリージア・ラズベリーに向けた目と同じとは思えないほど熱のこもった眼差しをする。
ホーネットをはじめとする僕の家族たちは少し僕に甘すぎやしないだろうか。
そんな熱い眼差しを溶かすほどの冷たい視線を感じる。
フリージア・ラズベリーだ
ホーネットにそこまで言われてフリージア・ラズベリーは僕のほうをにらみつけていた。
「おやおや、あなたがご主人様をにらみつける権利などありませんよ。ああ、また闇ギルドの者をけしかけようと考えているのですか?」
ドアが開いて、Sランク冒険者メイザリンとAランク冒険者パロットさんが入ってくる。
「闇ギルドの者たちはぁわれらで拘束しておいたぞ。この家をぉ取り囲んでおり不穏であったのでな。よかったであろうぅ?」
それを聞いたフリージア・ラズベリーは愕然とした表情で膝をついた。
今度こそ打つ手が無くなったのだ。




