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第16話


戦争はいやだ。


勝とうが負けようが被害を受けるのは力の弱い子供たちだ。


幾度となく軍を率い勝利をおさめてきた俺、平民軍団長カウスリップは戦争が嫌いなのだ。


しかし皮肉なことに俺には戦争の才能があるらしい。


そして俺がいるからこそ戦争がおきてしまう事に気づいた。


負けるとわかっていて戦争をするバカはいない。


そもそも戦争とは国家の財力を傾けて行うバクチだ。


勝てば財が手に入るが負ければ兵を失い、財も失う。


兵も元はと言えば食料をつくる農民が主体だ。


戦争は起きた時点で相当の財を失ってしまう事業なのだ。


そしてその軍を率いる者がいないと戦争は起こせない。


滑稽なことに俺がいて、勝てると思われるからこそ戦争をしようと言う気にさせてしまうようだ。


だから俺はこの国を出る。


俺がこの国にいてもいいことは、無い。


妹が病死した。


俺が苦しい思いをしながらもこの平民軍団長の座にしがみついていたのは、すこしでも給金をもらい病気の妹の世話をしてほしいという考えがあったから。


令嬢に水をかけられ、エッグプラントでは食べるもの満足に用意できず、戦争がおきれば無理やり指揮者の立場にたたされても。


それでも頑張れたのは妹が生きていたからだ。


その妹マリーがこの世からいなくなった・・・・・・・・


もう俺はこの国にいる意味を見出せない。


だから出る。


・・・そうだな。


プラチナ帝国にでも行って冒険者として生活していくのも悪くないか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


エッグプラント会議の場で、スプルース・ミルキーは戦争の報告をきいて驚愕していた。


「では、スマルト将軍の軍も解散したし、カウスリップ殿の軍も解散したというのか!!」


「は、どちらの軍も消滅。それぞれの将軍殿も行方をくらませるという事態となってます」


カウスリップはともかく、スマルト将軍は病気の子供をおいてどこかへ行くということは考えられない。


もう一度交渉し、エッグプラント会議への出席を認めてでもこちらへ取り込む必要がある。


スプルース・ミルキーはそう考えていた。


そして、次の一手は、


「いまから王城へいき、国王陛下へ謁見を申し出る。みな、ここで待っていてほしい。武力で事をなすべきでない。話し合いで解決しようではないか」


私のいうことにエッグプラント会議の残りの12人は黙ってうなずいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いま、コパー都市国家の国王と、平民スプルース・ミルキーは差し向かいで座っている。


他国では考えられない光景だ。


国王も馬鹿ではない。


目の前のスプルース・ミルキーと言う男が自分たちの宿敵であるということを理解して対面している。


理解しているからこそ交渉の席にたち、話を聞くのである。


スプルース・ミルキーもこのいびつな権力構造に終止符をうち、できれば自分たちが永遠に権力を握るようにしたいと考えている。


そのためにも国王との話合いをこちらに有利な条件で終わらせないといけないのだ。


「わしが国王である。が、平民のお主がわしとこうして差し向かいで話をすること自体が異例中の異例であると自覚してほしい」


「コパー都市国家の太陽たる国王陛下におかれましては平民である私めと目通りをお許しいただきましたこと末代までの誉れと存じます」


スプルース・ミルキーは頭をさげたまま挨拶をする。


その様子をみてニヤリと国王は笑いはしたものの、すぐ顔を引き締めて護衛の騎士団長に人払いを命じた。


こんな形にこだわっていたからこそ、国王や貴族は落ちぶれてしまったのだ。


体面はいらない。


目の前の男の心をへし折らないとこの先未来はないのだ。


「世辞は要らぬ。わしは平民どもが嫌いだ。しかし、平民の納める税金で食っていることは認めておる」


「お主らのいうエッグプラント会議に王族の代表と貴族の代表を出席させよ。これがわしからの条件じゃ」


「・・・これはこれは、王族の言葉とも思えませぬ。卑しき平民ごときが行っている会議への出席をさせよとは。くふふ。王族の誇りはないのですか?」


「誇りで腹は膨れぬ。もううんざりじゃ。スマルトが破れたであろう。本当ならその軍でお主らを討ち滅ぼすつもりじゃったが、スマルトがだめになった以上、もう手はない」


「それはそちらもそうであろう?」


スプルース・ミルキーは驚いていた。


この王は馬鹿ではない。現状をよく把握している。


だからこそ会議に出席させよと言って来たのだ。


もう100年も前からこの国はエッグプラントが治めている。


税を集めその税を使う。


税の使用先を決めているのがエッグプラント会議だ。


その会議に出させよと言うのは会議の法的根拠を認めたうえで自分たちが出席し、合法的な手段で権力を取りに行くと明言したも同然だ。


もちろん卑しき平民と同じ立場に立つということであり、国王側が平民側に降伏することと同じぐらいの意味を持つ言葉だった。


「承知しました。国王陛下のご英断に感謝いたします」


スプルース・ミルキーが承諾の言葉をいおうとしたところで、国王は


「少し待て。それを条件とする前の条件がある。わしの血を引く子がエッグプラント周辺で行方知らずとなっておる。その王子を探し出すのが条件じゃ」


(チッ。やはり狸だな。そんな条件は条件ではない)


数年前にいなくなった王子を探すのは無理な話である。



話が終わって国王のいる部屋から出ると護衛であるガーネットと国王の護衛である騎士団長が並んで待っていた。


騎士団長が、


「話は済んだのか?平民ごときが国王陛下と同じ部屋にいること自体感謝しないといけないのだ。ましてや交渉などと。フン!」


そう言って悪態をついてきたが、なんとなく、騎士団長がガーネットに遠慮しているように見えた。


「赤髪の騎士ともあろう者がこのような平民に肩入れするとは。その名が泣きますぞ」



王城から出てきたスプルース・ミルキーは今後の策をめぐらしながらエッグプラントへ戻る道すがら、さきほどの騎士団長の言葉をガーネットに聞いてみた。


「ああ、自分は冒険者ギルドのAランクをもっています。Aランクは他国でも高位貴族相当の立場を保証してもらえるのですよ」


「それにあの騎士団長、隙があればあなたを斬り殺そうとしていましたね。まあ、そんなことは自分がさせませんが」


つまり、ガーネットは見目麗しいばかりか、高位貴族と同じ扱いを受け、さらには騎士団長と同等以上の実力があるということだ。


この世にこんな女性がいるのか!!


創造神様がまるで自分のために用意してくれたのかと思えるほどの感動を覚えたスプルース・ミルキーは、ますますこの女を自分のものにしたいと考えた。

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