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第15話

いま、カウスリップは戦場に立っている。


相手はスマルト将軍が率いる軍。


20000人ほどの兵が、要衝の地形に陣取っている。


さすがは『知略のスマルト』といったところか。


こちらの兵は5000に満たない。


しかも軍の経験に乏しく金目当てで釣られたものばかり。


仕方なく連日の練兵で急ごしらえで仕上げた程度の連中だ。


とても軍として機能するとは思えない。


そのためか、いざ戦場について敵軍を見るとビビってしまい隙あらば脱走をしようとする。


あいにくこちらもそんなことは承知の上なので脱走できないよう囲い込んでいる状態だ。


川を挟んで陣を構築して相手から攻められないようにするためといいながら実は脱走できないようにしている。


これで見かけはなんとか20000対5000の軍が睨みあっていると言う状態を作り上げることができた。


お互いが積極的に動かない状態をつくり、この間にスマルト将軍がなぜこのようなことをしたのか調べたいと考えている。


兵のウワサでは将軍がエッグプラント会議に入れてもらえなかったからだという話だが、俺の勘は違うと言っている。


将軍は王族貴族を侮蔑していた。


なんらかの理由があるはずだ。


そう、できればあのグリーンという少年に探らせたい。


急に押しかけてきて側近になり、いろいろと動き回っているお節介なやつ。


あのグリーンならどうにかしてスマルト将軍の秘密を探ることができるだろう。


ああ、早く帰ってこないだろうか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕はいまカウスリップ様に合流するためカウスリップ様率いる軍のもとへ急いでいた。


その道すがらパロットさんから話を聞いた。


あのスマルト将軍がエッグプラントと敵対している?


どうも違和感しかない。


いままでエッグプラントに尽くしてきた人が今になって急に何故だろう。


僕が悩んでいると、従者のホーネットがそっと教えてくれた。


「私が調べたところ、スマルト将軍には小さな子供がいるようです。ですがその子供が難病にかかっているようでそのお薬を確保するために軍を興してエッグプラントと敵対せよと脅されたようです」


すげー。


すげー情報だ。優秀過ぎる。


だけどこれが本当ならその難病の薬をこちらで用意すると言えばスマルト将軍は手を引くかもしれない。


ホーネットは続けて、


「輝かしきご主人様がお望みならばわたくしがその子供を治療してご覧に入れますが」


僕はそんなことまで可能なのかとびっくりしたが、とりあえずお願いした。


「承知しました」


という返事と同時に姿を消す。転移魔法だ。


僕は、パロットさんとともにカウスリップ様のもとへと向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


わしに悔いはない。


かわいい、かわいい、わしの息子サウル。


年をとってからできた可愛い我が子。


目に入れても痛くないとはこのことだ。


そんなかわいい我が子サウルが5歳のときに急に病気にかかった。


日に日に身体がやつれていき顔色が悪くなる。


手を尽くし、ミルキー商会やラズベリー商会に病気に効く薬を求めておったがなかなか手に入らなかった。


ところがある日、あの者が取引を持ち掛けてきおった。


その者は言った。


病気に効く薬を必ず手に入れよう。


しかしこの薬を手に入れるには金もかかるし、非常に労力を使う。


だから交換条件としてエッグプラントに反旗を翻してほしい。


とそう言われたのだ。


わしはその条件をのんだ。


表向きはあの若造、スプルース・ミルキーにエッグプラント会議に入れるように要求して、エッグプラントに未練がある振りをしたうえでだ。


屈辱だが、あのクズな王族にも頭を下げて、


「騎士団を動かしてほしい。今こそエッグプラントを攻め滅ぼし本来のあるべき姿を取り戻そう」


そうおべっかまで使った。


それもこれもすべて息子のためだ。


サウルが健康でいてくれるならわしは悪魔にだって魂を売ってやる。


そう考えていたのだ。ところが、


「急報です。将軍、将軍の屋敷の家令からお手紙を預かっております。とにかく急いで手紙をみてほしいと」


もしやサウルの身に何かあったのではとあわてて手紙を広げて読んでみた。


すると驚愕の内容が書かれていた。


サウルの病気が完治したとある。


すぐに旦那さまも戻ってきてサウル坊ちゃまに会ってほしいと言う内容だ。


信じられなかった。


信じられないが、本当なら嬉しい。


こうしちゃおれん。


すぐにわしは軍を副官に任せて屋敷へ向かったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


一方そのころ、カウスリップもカウスリップの実家であるスノーフレーク男爵家から手紙が来ていた。


数少ないカウスリップ兄妹を大事にしてくれていた下男からの手紙だった。


そこには信じらない内容が書かれていた。


「妹が死んだ。妹のマリーが死んだ」


俺は手紙を何度も読み返した。


だけど、こんな嘘を書く人ではない。


手紙によると、ある日突然親切な商会の人が男爵家にやってきて大変高価な薬をマリーのために与えたのだそうだ。


ところが、薬のおかげで元気になったのは数日だけで、急に容体が悪くなり死んだと書かれてあった。



「カウスリップ様!!ただいま戻りました」


遠くの方で側近であるグリーンの声が聞こえてきた。


どうやら俺の側近が戻ってきたようだ。


だけど俺はもう何の気力もわかない。


心の支えだったマリーがいなくなってしまったから。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕はなんとかカウスリップ様が布陣している軍のところまで戻ることができた。


側には護衛として雇ったパロットさんがいる。


早速カウスリップ様のもとへ行ったのだが、顔色が悪い。


どうやら実家の男爵家から来た手紙を見てから様子がおかしいらしい。


一体どうしたのだろう。


実家といえば妹さんが病気と言っていたが、悪くなったのだろうか。


そう考えているうちに、スマルト将軍の軍から使いの者がやってきたそうだ。


カウスリップ様の顔色が悪いので僕が代わりに話を聞いた。


なんと、停戦したいということだった。


停戦に応じるならすぐに軍を解散するとまで言っている。


これはホーネットが治療した結果なのだろうか。


スマルト将軍としても子供の病気が治ったらこんなことをする意味はないと言う判断なのだろう。


僕は使いの者を待たせ、カウスリップ様のもとへ急いだ。


停戦のことをカウスリップ様に話すと、カウスリップ様は停戦に応じるばかりか軍を解散させると言ったのだ。


「妹が死んだ」

カウスリップ様の目には何も映っていないようだ。

「・・・俺たちも解散だ。俺はこのまま、この国を出る」


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