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第13話

ミルキー商会の商会長の息子であるスプルース・ミルキーは今日も、護衛である自分を口説いていた。


「ねぇ、ガーネット。今日はどこへ行こうか?劇場なんてどうだろう?その劇場はプラチナ帝国でも流行っていた劇をやっているそうだよ」


「たしかタイトルは、「追放された聖女とさすらいの美人剣士」だったかな。ねぇ、一緒にいかないか」


「あ、それともスイーツのおいしいお店へ行こうか?甘いお菓子は好きだよね。それともドレスを注文しようか。ああ、麗しい君に合うドレスを纏ったら男たちの視線は君にくぎ付けだろうね」


「そういえば赤い石を収集していると聞いたことがある。それなら真っ赤に輝くルビーを贈らせてくれないか?君の瞳とよく似た色だ。とてもよく似合うと思う」


ご主人様から言われて、スプルース・ミルキーの護衛を勤めてから徐々に護衛でなく別の関係を求めるような言動が増えてきた。


もちろん自分にむける視線から好意をもっているということはとっくに気づいたうえで護衛を引き受けたのだけど、ここまでしつこいと気分が悪い。


この男、スプルース・ミルキーがエッグプラント内でとんでもない影響力を持つということもわかってきたので、早くご主人様の元へ戻りたいと考えている。


自分へのアプローチも気持ち悪いし、持っている情報も報告したい。


そんな自分の気持ちを知ってか知らずかスプルース・ミルキーは相変わらず今日もどこへ行こうかと一人で話しをする。


「ふぅ。僕のお姫様はどうやらあまり機嫌がよくないようだ。なら今日は一日、屋敷でゆっくりしていよう。外へ出たらガーネットの美貌を他の男たちに見せることになるしね」


そうかってに納得してお茶の用意をメイドに言いつける。


自分は、


「あの、スプルース様、本日外出しないのであれば護衛業務は不要。ならば一度、カウスリップ様のもとへ戻りたいと思うのですが」


と言うと、それをさえぎるように、


「それは許さない。というか、もう戻さないよ」


「ねぇ。ガーネット。僕は君に僕のしていることを護衛として同行させて見せてきたんだ。それは僕の秘密を教えたことになる」


「なぜそんな真似をしたかというと、君を手放すつもりがないからだよ」


とひどく冷たい目で言ってきた。


それはそうだろう。そんなことは自分にもとっくにわかっていた。


目の前にいる男。


スプルース・ミルキーこそエッグプラントの黒幕と言っていい男であった。


スマルト将軍と会い、実の父親をあやつり、エッグプラントを防御結界魔法で結界を張ることを画策し、この地からコパー都市国家を操ろうとしている。


この事実を知らなければご主人様たちの計画はうまくいかないだろう。


それゆえ早く戻りたいと思うのだが目の前の男はそれを許さないと言っている。


もちろん力づくで戻ることは可能だが、それはご主人様の意に沿わない。


どうすることがご主人様のお力になれるだろうかと考えを巡らしていると、目の前の男スプルース・ミルキーはまるで酔ったかのように演説を始めた。


「ねぇ、ガーネット。どうか僕と一緒になっておくれ。僕はいずれこの国を統べる男だ。きっと君を満足させられるだろう。どんな贅沢だって思いのままだよ」


「ふふふ。この国はねぇ。芯から腐っているんだ。だから僕はこの国を一から綺麗にしようと考えている」


「平民をゴミ同然に考える貴族など存在する必要があるかな?自分たちでは何もできないくせに特権を享受して当然と考える王族なぞ価値はないと思うんだ」


「全員いなくなれば国は良くなると思わないか?ああ、いやいや、勘違いしないでくれ。貴族の血を絶やそうと考えているわけではない」


「そうだな、それぞれ後継ぎの子供が一人ずついれば家は途絶えないだろう。大人は無理だ。存在する意味がないからね。くっくっく。どうだい、いい考えだと思わないか?」


どこかぼんやりとした目つきで恐ろしい計画を語ってくる。


つまり、王族貴族を死なせ、家の跡継ぎとして子供を一人ずつ生き残らせる。そういう意味か。


自分は聞いていてゾッとした。


この目の前にいる男は本気でこの計画を実行しようとしていることがわかったからだ。


止めないといけない。そう考えていたとき、


「なんだそれは?何を勝手なことを」


と部屋に入ってきたものがいた。


ドラセナ・ミルキー。


ミルキー商会会長にしてスプルース・ミルキーの父親でもある。


「聞いているのか?どういうつもりでそのような馬鹿げたことを言うのだ」


「おまえは頭がおかしくなったのか!!後継ぎとして考えていたがお前を遠くへ追放せねばならんな」


そんな父親を憐れむような目で、


「くふくふ。何を言っているのですか?父上。残念ですが、父上の考えに従う者はこの屋敷にはいないようですよ」


そう言うと、護衛がたくさん入ってきて、ドラセナ・ミルキーを拘束しあっという間に部屋から連れ去った。


「離せ!」


わめくドラセナ・ミルキーを一切逡巡することなく護衛たちは連れ去った。


スプルース・ミルキーはずいぶん前から屋敷の者たちを掌握していたのだろう。


「さあ、これで僕、いや私が表舞台に出ることになった。愛しいガーネット、君は私の側で私が王になるところを一番近くで見ていてね」


そう言う男の目には狂気が孕んでいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ラズベリー商会コパー支店。


支店長であるフリージア・ラズベリーはエッグプラント内に放ってある者からの知らせで平民軍団長の側近が王城へ向かったことを知った。


「何をするために行くのでしょう?さすがに王城内に密偵は仕込めないので情報が得られないわ」


「王族が平民の話など聞くはずもないが、万が一、エッグプラントと国王の間を取り持つことになると私の望みが叶わなくなるわね」


「目障りな側近さんには死んでもらったほうが無難なようね」


そう言って近くの者に指示をだす。


「ねえ、闇ギルドの人に使いをだして、平民軍団長の側近を始末してちょうだいと伝えて」

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