第8話
シルバー王国、魔法国家プラチナ帝国、神聖ゴールド聖教国。
この3国が中央平原にひしめくほとんどの国をまとめている。
しかし商会だけでみたとき中央平原では他の追随を許さないぶっちぎりの規模を誇る商会があるのだ。
その商会の名はラズベリー商会。
各国に支店をもち3強の国にも大きな影響を持つ。
当然このコパー都市国家にもラズベリー商会の支店がある。
ここエッグプラントにラズベリー商会コパー支店があるのだ。
その支店を任されているのは現ラズベリー商会の代表の娘だ。
名をフリージア・ラズベリーと言う。
このエッグプラントにも大きな影響力をもつ彼女のもとへ僕は味方にできないかと思い訪れることにしたのだ。
目通りが叶い、最初に言われた言葉は、
「あら、はじめまして。妹のカレンがお世話になったみたいね。本当にありがとね」
カレン?
・・・・・カレン・ラズベリー。
そういや、魔法学園にいたときに依頼をうけたことがあったような。
(作者に代わってエクレアからの一言メモ)◇◇◇◇◇◇◇◇◇
シリーズ第1作目の第3部魔法学園編にて登場しております。まだ読んでいない方は是非読んでみてくださいませ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ああはい、カレンさんですね。まあ大変・・・・・でしたね」
「うふふ。正直な方ね。それで今日は何の御用かしら?妹のカレンのことは忘れていたようだから妹のことで来たわけではなさそうだし」
う、忘れていたことがばれてる。
だがそんなことでくじけていられない。
僕は改めてフリージア・ラズベリーに目を向けた。
姉というからには年齢が上なのだろう。
目立たないが高価そうな生地をふんだんに使った服装をまとい、ピアスや宝石などきらびやかな装飾をつけている。
僕は気持ちを入れて、
「改めまして。僕はグリーンと言います。平民軍団長カウスリップ様の代理できました。今日来た用件は、平民軍団長のお味方をしてほしい。そのことをお願いしにきました」
それを聞いたフリージアはおっとりとした動作でカップをもち口に近づける。
そしてゆっくりカップを置く。きっとこの間に思考を巡らしているのだろう。
「ふふ。楽しいご提案ですわね。妹がお世話になったことだしあなたの意に沿ってあげたいのだけど、そう簡単にはいかないのよ。このエッグプラントでは」
少し困った声色で言う。が、その妖艶な表情からは困っているようには見えない。
少しの間、沈黙が流れた。
ここで引いてしまってはいけない。
本題がだめだったからと言って引き下がるわけにはいかないのだ。
なにか話題はないかな。
え~と、と考えていると、フリージア・ラズベリーが、
「ふふ。ねえ、あなたは創造神様を信じていますか?ええ、わたしは信じていますわ。聖教会で言うところの創造神実在派ね」
と話を振ってきた。
わざわざ話を振ってくれたことに僕は感謝した。
「え、え~と、創造神様、ですか。そうですね、え~と、まあ信じてはいる、と思いますけど、あまりはっきりと考えたことは無いです」
うー、気の利いたことが言えない。
創造神様がすべてを創造したということは一般的に言われていることだ。
しかしだからと言って、「崇めなさい」とか、「感謝をしなさい」とか、そういうことは言わない神様なのだ。
他の神様だと、聖女に洗礼を与えることで有名な聖処女神エリューシオン様が存在する。
創造神様は広く一般に知られているし、創造神様を祀る聖教会も存在するがあまり社会にかかわってこない神様といえる。
それゆえ、ラズベリー商会の支店長がこのようなことを話題にするのは少し違和感が感じられる。
「ふふふ。不思議そうな顔をしているわね。創造神様を信じているのかなんて商会の関係者が言うには違和感があると言う顔よ?」
「す、すみません。そんなつもりは。でも少し不思議です」
と謝る。
「いいのよ。でもね。創造神様は我々を創造したもうた偉大な神なのよ。いわば私たちの親神様といってもいいわ。ならばもっと私たちは敬ってもいいのではないかしら」
「私たちは創造神様の子供といってもいいのよ。ということは私たちは神の子と言ってもいい。なら子が親を恋い慕ってもなんの不思議もないでしょう」
「ああ、お会いしてみたいわ。出来ることならお側でお仕えしたい。それが許されたなら何の苦悩もない最高の幸せが訪れるわ、そう思わない?」
フリージア・ラズベリーはうっとりとした表情でしゃべる。
まるで僕の方を見ていない。
こんなに熱心な創造神実在派には初めて出会った。
商会として日ごろ忙しいのに神様にも敬虔な思いをもっているなんて、素晴らしいことなんだろう。
少し怖い感じがするけど。
隣を見るとガーネットも胡乱気な視線を送っている。
そして側で目立たないようにしているホーネットも同じだ。
「輝かしきご主人様。この者に決して気をお許しになさいませぬよう」
と警告を与えるほどだ。
ホーネットが間違えるはずがないからあわてて僕は自分の評価を撤回し目の前の妖艶なたたずまいをしている女性を警戒することにした。
「でも、平民軍団長カウスリップ様にはエッグプラントの民は一方ならぬ恩を受けておりますわ。お味方とは言えませんがせめて心ばかりのお品を納めさせていただきます」
そう言って近くの者に指示を与え、屋敷に直接、食料や武具を用意すると言ってくれたのだ。
まあ、不足している物資を納めてもらえることになったのだから今回の訪問はこれで良しとしないといけないな。
ラズベリー商会の支店から帰るとき、何気なくフリージア・ラズベリーが
「それにしてもカウスリップ様は何故、このエッグプラントを出ないのでしょうか?あそこまで露骨に冷遇をされていますのに」
「あの方の実力ならこのような国を捨てて他国で身を立てたほうがよほど良い生活が送れるような気がします。よほどエッグプラントを大事に考えているのでしょうか」
僕は、その疑問を聞いて、つい先日聞いたカウスリップの家族である妹の話を言ってしまった。
「え~と、多分、以前に聞いた話なんですが、なんでも王都に住んでいる家族の妹が病気で臥せっているらしくてですね」
「自分が平民軍団長を務めている間は王城から給金が出るので、その給金で家族である男爵家が妹の面倒を見てくれるのだと言ってました」
「妹さんが心配でこの国を出れないのかもしれませんね。優しい性格ですし」
その話を聞いたフリージア・ラズベリーの瞳が暗く光るのだった。




