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第7話


「結論から言うと、すべてを平民軍団長どのに捧げることは致しかねる」


スマルト将軍はきっぱり言った。


「だが、多少は力を貸してもいい。平民軍団長どのとお主に」


「え、僕?」


「うむ。先ほども言ったがこのエッグプラントは王城と同じぐらい陰謀うずまく地じゃ。だからどちらか一方に肩入れすると言う愚かな真似はできん」


「が、見込みがあるなら別じゃ。わしにとっても利のある行為となるなら問題ない。完全な味方とは言えんが力を貸してやろう」


「わしの部下を連れていくがよい。数人連れていっても世間ではスマルトが平民軍団長どのに肩入れを始めたと認識するであろう」


「ありがとうございます!!」


僕はお礼を言った。しかし、それをたしなめるように


「まだお礼を言ってはいかん。くりかえすがここは陰謀うずまく地。監視の目が至る所にある。わしが肩入れを始めたと分かればどんな形で平民軍団長どのに影響がくるかわからん」


「このエッグプラントには怪物が棲んでいる。ゆめゆめ油断をしないようにな」



このあと、屋敷を出る前にスマルト将軍の部下だと言う人に引き合わせてもらった。


スマルト将軍の腹心の1人だそうだ。

「よろしくお願いします」


考えの読めない表情で挨拶をされた。さすがスマルト将軍の腹心だ。


少し不気味には思うがスマルト将軍の助力を得たことは大きいだろう。


帰ろうと屋敷の入口へ向かう廊下の途中で10歳に満たない見習いの子が数人歩いていた。用事を言いつかっているみたい。


しかしよく見るとそのうちのひとりは集団から離れて歩いているようだ。


どうも集団から浮いているようにみえる。


僕は気になって離れて歩いている見習いの子に声をかけた。


「こんにちは。君はここの見習いかな?」


声をかけられた見習いの子はビクッとした反応を見せたがおずおずと僕の顔を見上げて


「はい・・・・・このお屋敷で見習いとして置いていただいています。ジオと言います」


小さいがはっきりと聞こえる声で言った。


賢そうだし、その瞳からは強い意志を感じた。


「将軍、この見習いの子も連れていって構いませんか?」


僕は考える間もなくそう口に出していた。


何故だかわからないがこの子を側に置いておかなくてはいけないような気がしたのだ。


ジオという見習いの子は一瞬驚いた表情をしたがすぐに平静を装う。


スマルト将軍はジオと言う少年を僕が連れていくと言った言葉を聞き、すこし顔をしかめたが、


「この子は少し訳ありなのですが・・・・・」


と言葉を濁していた。僕は、すぐさま


「構いません」


と言い切り、ジオという少年を連れていくことを認めさせた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


近くに控えていたホーネットはジオと言う少年を見て気が付いた。


そしてその子を確保しようと動いた僕を称賛する。


「さすがは輝かしきご主人様。このエッグプラントとコパー都市国家の関係を改善する最善の駒を苦もなく手に入れるとは」


誰に聞かれることもない声でつぶやく。


そうホーネットだけは見抜いていた。この少年の持つ秘密を。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕たちはカウスリップ様の屋敷まで戻った。


その道すがらジオと言う少年の話を聞いたのだが、なんとジオ君は記憶喪失で両親のことを憶えていないという。


2年前に気が付くと道で途方に暮れており仕方なく兵士見習いとしてスマルト将軍の屋敷で育てられていたのだ。


しかし平民でも、親のいない子はさらに低く見られてしまう。


記憶喪失ということもあり自分のことは何一つわからないジオ君を相手に周りの人間は冷たく当たっていたそうだ。


ジオ君も仕方がないとあきらめていたのだそうだが、そういう理由もあって今日僕に連れ出されることは嬉しいことだと言ってくれた。


僕もそう言ってもらえてうれしい。


この子はなにか秘密のようなものを持っている。


その秘密はきっとカウスリップ様の役に立つだろうという直感が僕にはあった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「行ったか・・・・・・」


わしは誰に言うでもなくつぶやいた。


さきほどまで平民軍団長に側近として仕えるようになったグリーンという少年と話をしていた。


わしがスマルトだと知っていてなお、土下座をしてまで平民軍団長カウスリップの仲間になってくれと言うのだ。


なんと健気な少年だろう。


こんな純真なものがあの老獪な2人、クロッカス将軍とライラック将軍を討てるはずがない。


おそらくこの2人を討ったのはわしがどうしても調査しきれなかった人物であろう。



わしがこの国、コパー都市国家の将軍職について数十年が経つ。


その間ずっとエッグプラントと国王貴族たちとのバランスをとり続けてきた。


平民軍団長は2人ほど入れ替わったか。


どちらも高位貴族の者で居丈高であり、高圧的だった。


わしに対しても命令ばかりしていたわ。


そんなクズどもを懐柔するため、わしは屋敷へ招いて歓迎の宴を開いてやったのだ。


女と金品を与えると喜んでこちらの言うことを聞く。


そしてしばらく与えた屋敷で過ごすうちに、病に伏せるようになる。


そのまま屋敷から出られなくなるのだ。


こうしてエッグプラントを従わせるために派遣された平民軍団長はなにもできずにその職務を終える。


これがエッグプラントが考えた平民軍団長への扱い方だった。


ところが、今度きた15代平民軍団長カウスリップは違った。


金品にも女にも目をくれず、かと言って実家が裕福と言うわけでもなかった。


狩りをして自分で食い扶持を稼ぎ、下級の平民が住むような集合住宅に入ってしまいこちらの誘いには一切乗ってこなかった。


どうしたものかと考えあぐねていたら、シルバー王国と戦争をする羽目に陥り、これ幸いに、戦争責任を押し付けてしまおうと考えたら、あのアカエール将軍相手に勝ちに等しい引き分けにまで持ち込んだのだ。


そう。カウスリップこそは純粋な軍人といっていい。


政治権力に興味をもたず、ただ軍の先頭で剣を掲げるだけで将兵の心をつかんでしまう。


人をやって調べさせたら、案の定、実家でもひどい扱いを受けており苦労になれているとのことだった。


ただ将軍として天賦の才をもって平民軍団長という職を与えられてしまったのだ。


やっかいな才能だ。


わしの目的に支障がなければいいが。


兵士がいなければ何もできないとはいえ、あのように優秀な側近であるグリーンが現れたのだ。


わしは念のために腹心の部下をつけることにした。


わしにはわしの目的、願いがある。


わしはただその願いを叶えるために動くのみよ。


コンコン。


ドアからノックの音が聞こえる。


「閣下、失礼します。王城から使いの者が参っております」


ん、やっと来たか。


わしの願いを叶るための使いの者が。


わしはエッグプラントに利する働きをしてきたがそれに気づいた王城の者がわしを仲間に引き入れようと交渉に来たのだ。


さてどれほどの条件を持ってきてくれたのか話を聞くのが楽しみだわい。


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