第4話
コパー都市国家は、国王のいる首都とそれ以外である都市とでその状況が全然違う。
首都は貴族が大多数を占めているのでなによりも爵位がないとなにもできない。
首都以外の都市は平民の割合がほとんどで貴族はほぼいない。
平民でも商会が力を持っているのだ。
今回の旅の従者にはホーネットとガーネットを指名した。理由は特にないけど、この2人とはあまり外出しなかったからだ。
僕は馬車に揺られながらホーネットと今後の動きを相談する。
向かう先はエッグプラントという都市だ。
コパー都市国家の政治の中心と言っていい。
エッグプラントはコパー都市国家の大部分を占める100余りある都市の盟主にあたる地位にあるとか。
だけど「都市の盟主」という制度が他の国にはないものだから僕はいまいちピンとこなかった。
「そうですね。具体的に申し上げますと、たとえ、国王が命令したとしてもエッグプラントの代表者が否定すれば実行に移されないのでございます」
ホーネットは僕にわかるように例を挙げてくれた。
なるほど。なるほど。
・・・・・・うん?
じゃあ国王の言うことよりもエッグプラントのほうが上ということなのか?
だとすれば、他国から見ればコパー都市国家の実権はエッグプラントが握っていると言われても仕方がない。
「ならコパー都市国家の状況を探るなら、国王のいる首都よりこのエッグプラントのほうがいいってこと?」
そう聞くと今度はガーネットが、
「ご明察です。さすがご主人様。この国を動かしているのがエッグプラントである以上、エッグプラントの考えを知ることがコパー都市国家の動きをつかむことになるかと」
さらにホーネットが情報を教えてくれる。
「今現在、エッグプラントを動かしているのは13人の参加者からなるエッグプラント会議だそうです」
「ほうほう。じゃあ、その13人の会議のメンバーを調べればいいんだね」
僕の答えに2人は、
「「そういうことです」」
と肯定してくれた。
「じゃあ、その13人のメンバーの1人が平民軍団長様かなあ?ジングート将軍の説明では平民軍団長が王国と対抗している風な言い方だったけど」
エッグプラント会議で決めるとは言っても平民軍団長が形の上では100余りある都市の軍団の統括者なのだから、エッグプラントのなかでも一番偉い人に思えた。
だけど、
「平民軍団長殿にはなんの権限もないようですよ」
ホーネットの言葉に僕は驚いた。
「ええ!!で、でも・・・・・、軍をひきいてシルバー王国軍と戦ったのは彼なんだよね?」
「それは、はい、さようでございます」
聞けば聞くほど、知れば知るほどこのコパー都市国家とエッグプラントの関係はよくわからない。
国王に権力がなければ軍を率いる者が力を持つのが普通だ。
平民軍団長は名前のとおり軍を率いており実績もあるのに権限がないとは?
なら一体だれが権限を持っているというのか
このコパー都市国家は不思議で仕方がない。
形式上とか建前というものが多すぎる。
困ったがとりあえずは平民軍団長のもとへ行ってみようと考えた。
僕たちはコパー都市国家に着いた。
早速、平民軍団長の下へ訪れてみよう。
平民軍団長とは、権限はなくともコパー都市国家では高名な役職だ。
平民軍団長の住んでいる場所は人に聞けばわかるだろう。
だけど、ここで慌ててはいけない。
影響力のある人物はたいてい監視を受けている。
下手に近づくのは危険なことも多いのだ。
ギルドの依頼で色々な国を回った経験豊富なぼくだからこそ、そのことに気づけたと言える。エッヘン!!
と、思いきや近くの店で軽く聞くと簡単に教えてもらえた。
店の人の態度からは軍団長は非常に親しみやすそうだ。
よく店に狩りで捕った獲物を持ち込むらしい。
売り子の娘とは顔なじみというではないか。
つまり、軍団長は狩りをするのが趣味ということか。武人らしいなあ。
僕はそう考えながら書かれた地図を見ながら歩いていく。
その地図にはエッグプラントでも富裕層ではない者たちが住む地区が示されている。
地図どおり進むと、個人の家が並ぶ通りに出た。
家の大きさから見て平民のなかでも中流ぐらいの層の人が住む家だと見受けられる。
ここを通り過ぎると平民軍団長の家があるのかなと思ってさらに進んでみると、集合住宅らしき家が見えてきた。
集合住宅は中流からもう少し収入が少ない層の人が住む。
ところが、地図が示す平民軍団長の家はその集合住宅を指していたのだ。
何かの間違いかと思ったが、ホーネットやガーネットに見てもらってもこの集合住宅を示していると言われた。
しまった!!騙された!!そんな簡単に会えると思った僕が馬鹿だった。
一瞬そう思ったが、ホーネットが
「まずはご主人様。一度、この地図の通りの部屋に行ってみませんか?しっかり確認した後で考えましょう」
と言うので、僕はこの地図に書かれている部屋へとりあえず行ってみることにした。
「え~とA棟の105番・・・・・と105だから1階か」
ここだ。呼び鈴もある。
ということで一応、鳴らしてみた。
「もしもーし、ここは平民軍団長様のお家ですかー?」
そんなわけないと思いながら声をかけてみたら、扉があき、大柄で筋肉質な青年が顔をだした。
顔の表情からは年若いことがうかがえるが、戦場を経験したのものにしか身につかない独特の匂いがする。
まじか。
この人だ。
この人が平民軍団長だ。
見ただけで強いと分かる。兵を束ねる独特の雰囲気も持っている。
じゃあ、本当に平民軍団長が集合住宅ぐらし?
「何の用だ?俺を平民軍団長と知ってきたようだが、たぶん期待通りのことはできないぞ」
まじか。まじか。
名乗られた今でもいまだに僕の頭は現実を受け入れられないでいた。
エッグプラントの平民軍団長が集合住宅暮らし。
もちろん従者もいないし護衛もいない。
僕はショックで固まってしまった。
「ん。その反応を見るのはずいぶん久しぶりだ。ははは。悪いやつじゃなさそうだ。何もないし、客に出す茶すらないが、話をしたければ中へどうぞ」
「お邪魔します・・・・・・」
僕は平民軍団長カウスリップ様の居宅へ入らせてもらった。
「そんなに畏まらないでくれ。ここアパートだぞ。その中でも一番家賃の安い場所を借りてるんだ」
なんでもないように平民軍団長カウスリップ様は笑っている。
本当に安い部屋かも。だってワンルームしかない。
平民軍団長は権限がないって嘘だ。
権限だけじゃない。収入もないじゃないか!!
さらに、平民軍団長カウスリップ様と話をして驚愕の事実がわかったのだ。




