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第2話

現在の平民軍団長の回想。



今の平民軍団長は初代から数えて15代目にあたる。


国王ならびに貴族領主たちは平民たちと対立することをあきらめ言いなりになってしまっている。


そのため、平民軍団長として国王に任命され都市へ派遣される騎士は王都の騎士団のなかで一番立場が弱く言いなりになる騎士を選んで送るまでに落ちぶれた。


それゆえか、王都では平民軍団長に着く騎士を、「いけにえ将軍」と呼んでいる。


その「いけにえ将軍」に見事選ばれたのが何を隠そうこの俺だ。


名をカウスリップという。


俺はコパー都市国家の貴族スノーフレーク男爵家に生を受けた。


しかし6男だ。


男爵家は貧乏だった。


その日の食べるものに困るほどに。


この国は貴族は全員貧乏だからそんなものだと思っていた。


次男以下は自分の力で稼でいく必要があった。


兄たちはある者は学者に、ある者は騎士、冒険者となっていった。


俺の場合、幼いころから寄親の貴族の子息が俺をストレス発散の道具として虐めていたという負の過去を持つ。


が、その寄親の子息が自分が騎士になるため騎士養成所へ入ろうと考えると同時に、俺のこともそこへ引っ張ろうとしたのだ。


養成所でも俺をストレス発散の道具にするため。


しかし騎士養成所へ引っ張ってくれたことだけは感謝している。


オヤジも寄親の貴族から言われたためお金を出して騎士養成所へ入れる羽目になったのだから。


俺には、男爵家に居場所はない。


俺と俺の妹は上の兄弟と母親が違うのだ。


俺の生んでくれた人は平民でそのために俺と妹はずっと下働きをさせられていた。


表立っていじめられることは無くてもオヤジの子供という扱いはされなかった。


でもそれでも良かった。


母親は死んだが妹がいる。妹と暮らしいずれは家を出て行こうと思っていた。


転機は寄親の子息だ。


俺を手下扱いにし虐めてくれたが、そのおかげで騎士養成所へ入ることができた。


養成所では俺を虐める時間なんて無い。


時間があれば剣の修行をするか授業の課題をやらなければいけない。


おかげで俺を引っ張った寄親の子息とは次第に疎遠になっていった。


俺はそこで頑張った。


授業も剣術も。


一番楽しかったのは集団戦術の授業だった。


こんな俺の指示で多くの人間が動き、相手を打ち負かすのだ。


その光景を見るたびに俺は悦びに震えていたと言っていい。


どうも俺には集団戦術の才能があったようだ。


騎士養成所での俺は剣術と集団戦術の授業は首席をとるほどだ。


そして養成所を卒業し、騎士として魔物討伐に加わったときのことだ。


先輩である騎士が魔物討伐の団長を務めていたが、経験が不足していたのだろう魔物を見ただけで逃げてしまった。


指示を出すべき団長が逃亡していなくなったのだ。


俺はすぐさま団長の代わりに指示をだし怯える団員たちを叱咤しながら的確な指示をだして魔物討伐を果たした。


養成所を卒業したての新人が逃亡した団長にかわり討伐をはたしたことで俺は有望視された。


だが。


俺はしがない男爵家。それも家の後押しもない6男だ。


騎士団の上層部はもっと家柄も力もある騎士を上の役職につけたがっていたようだ。


そんなわけでおれはめでたく「いけにえの騎士」に任命されたのだ。


俺のたてた手柄に見合う役職はこれしかなかったらしい。


とんだピエロだ。


俺はただ豊かになり妹と不自由なく暮らせる生活をしたかっただけなのに。


だけど才能があり功績を余計に立てたせいで妬みと嫉妬をかってしまった。


おれは平民軍団長として王都の外へ派遣された。


役職としては高いらしいし、給金もそれなりにあるようだ。


だけど、俺の給金はすべてスノーフレーク男爵家に没収された。


オヤジはたとえ俺が王都の外へ派遣されようとも俺に金を渡す気はない。


つけている防具も武器もすべて昔、騎士団から支給されたものばかりだ。


俺にはそれらを買い替えるお金すらない。


そんなみすぼらしい状態で俺は平民軍団長の任命式に出たんだ。


みじめだった。


国王や騎士団の総長らは俺を憐れんだ目で見ていた。


そして平民軍団長を拝命し、受けた命令は


「平民軍団長として平民軍団を王都に従順ならしめよ」


というものだった。


どういうことかはよくわからない。


そういえば平民軍団長とは何のためにできた役職か説明されたことがなかった。


俺はこのあと、騎士団の総長殿から説明を受けて愕然としたのだ・・・・・・・



「やつらをまとめることがお主の役目だ。やつらは不敬にも本来納める税金をわが物にしている。そのため我々は貧しい暮らしを余儀なくされているのだ!!」


そう怒りを発しながら説明しているのがわれらがコパー都市国家騎士団の総長殿だ。


そして「やつら」とは平民たちのことだ。


コパー都市国家には100余りある都市があるがそれぞれを平民が治めている。


それら都市を束ねている組織をエッグプラントとよぶ。


が、王都ではだれもエッグプラントと呼ばず憎々しげに「やつら」と呼んでいるのだ。


その由来は初代平民軍団長が最初に拠点を構えた都市の名前からとっているとか。


俺はそこへ行って200年余りずっと王都に反抗しているエッグプラントを懐柔して、国王と貴族に従わせなくてはならないらしい。


できるわけないだろう!!


俺は剣と集団戦闘に自信があるだけの普通の騎士だぞ!!


そんな政治的なことは習っていないんだ。上は一体何を考えているんだ?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


エッグプラントに派遣された第15代平民軍団長カウスリップのその後。



平民軍団長という役職は王国の法律に定められた役職だ。


だから建前上平民軍団長を受け入れざるを得ないが誰も命令を聞かない。


平民軍団長として派遣されてきたカウスリップはお飾りだった。


しかし、カウスリップが平民軍団長としてエッグプラントに着任しすぐに、宗主国であるシルバー王国が軍を率いて攻めて来るという事件が起きた。


軍の総大将はシルバー王国第二将のアカエール将軍。


武名轟く将軍が20000の軍を率いてきた。


シルバー王国は本気である。


あわてたエッグプラントは急遽、兵を招集した。


30000の兵が集まった。


数は上のように見えるが、中身は違っていた。


シルバー王国軍の兵士は日ごろから訓練を怠らない精鋭中の精鋭だ。


対抗できるのはプラチナ帝国の魔法騎士団や神聖ゴールド聖教国の六武威の軍だけといっていい。


対してエッグプラントの兵士は普段は農業をしたり、家業に従事している戦いの素人だ。


体力だけはあるかもしれないが、素人なのだ。


しかしエッグプラントはお前の役目だと言わんばかりに着任早々の平民軍団長カウスリップを旗頭にし、全面的に戦わせた。


これはエッグプラントの伝統でもある。


徴兵で兵士を集めることや武具、兵糧など物資の準備はするが実際の戦争指導は代々の平民軍団長に任せてきたのだ。


しかし、ここでエッグプラントにとって望外のことが起きた。


シルバー王国軍のアカエール将軍相手に善戦し、限りなく引き分けに近い講和を結ぶことに至ったのだ。


宗主国の軍を相手にこの戦果は歴史的な勝利と言ってもいいほどのもの。


簡単に戦況をまとめると、最初はシルバー王国軍の左翼軍が押しまくっていたのに、急に、統率が乱れ、その乱れをカウスリップは突きまくって膠着状態にまで持って行った。


一応負けはしたがシルバー王国軍も相当な被害が出ており、勝ったとは言えない条件を結ぶことになったそうだ。


この戦争のおかげでシルバー王国軍は名声を落とし、逆にコパー都市国家軍は名声をあげることになったのだ。


その余波で、エッグプラント内でもカウスリップという平民軍団長が名声を大いに上げることになった。


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