ラストエピソード シルバー王国からの依頼 ~素行調査が正したもの~ 第1話
コパー都市国家。
現在シルバー王国の傘下に入っている国である。
500年前は、コパー農業国という名であった。
200年前までは国王を中心とした王国であったが、昔から身分差別が激しく、平民からの反発が強かったがそれを上手く抑えることに失敗した。
平民が次第に力をつけ、ついに平民が都市を治めるようになった。
名目は領主の代行である。
領主は貴族であったがあまりに首都にいすぎたために代行を務める者が力をもつようになり、貴族領主に従わなくなった。
そして領主代行を務める平民派と、領主ならびに国王や貴族といった身分の高い貴族派が対立をはじめ、その対立構造は長く続くことになった。
それはついに戦争と言う形にまで発展した。
貴族派は王国騎士団2000人を動員した。
対して平民派はたった1000人しか集められなかった。
それも戦いの訓練をしたことがなく畑仕事ばかりの者たちばかりだったと言う。
人数も少なく、さらに戦いの訓練をしたことのない者ばかりで勝ち目はないと思われていた。
そこへ、当時の平民をまとめていた者がその戦いを指揮し、見事倍の王国騎士団を打ち破ったのである。
騎士団の戦死者は半分の1000名をこえようかという記録的な大敗北を喫したそうだ。
この戦いはいまもコパー都市国家では語り継がており、プルシャン川のほとりで勝負が行われたので、プルシャン川の戦いと呼ばれている。
プルシャン川の戦いの結果、貴族派の地位は大きく落ち、平民派の地位は上がった。
自信の源であった騎士団がこれほどまでに弱かったことも原因である。
この逆転劇を演じた者は平民の軍団を束ねる役職として平民軍団長という役職を当時の王国に要求した。
戦争に負けた王族と貴族派はその要求を呑んだ。
これにより、法的には王国の命を受けて平民の軍団を束ねる将軍であるという根拠を持つに至った。
平民たちは、この戦いをきっかけに、100余りある都市とともに王国から独立する。
王族や貴族に従わなくてもなんら害を受けないことが分かったからだ。
しかしそれでは贅沢もできないし国としての体面を保てなくなると焦った貴族派は弱い都市を取り込もうとし始めた。
そうはさせまいと平民派も貴族派の都市の取り込みを妨害した。
さすがに直接、平民が貴族に妨害することはできないので都市間の団結力を高めることにした。
100余りある都市をまとめ団結力を高める為の象徴として選ばれたのが初代平民軍団長であった。
こうして、平民派の代表が初代平民軍団長であり、国王貴族ら貴族派とにらみあう構図ができあがったのである。
形の上では国王が国の顔として存在し、その下に領主である貴族が存在するが、都市の平民は領主である貴族に従わない。
さらにおかしな話だが王国と対立する平民軍団長は王国が王命で任命する役職である。
何も知らない人が見たら王様の命令で任命された平民軍団長が国王陛下と対立するのである。
法的には王国の役職なのに、王に逆らうというとても筋の通らない状態になっている。
また、初代平民軍団長は各都市から税を徴収し、その税で軍団を養う。
本来なら王族貴族に流れるはずだった税をとっているので王族貴族は貧乏になり、困窮していった。
この状況を打開するために、この国の王族は他国へ救援を求めるべきだった。
コパー都市国家以外ではいまだ貴族の支配がつづいているので、この現状を訴えれば他国から支援をうけられただろう。
しかし、この国の王や貴族は他国の介入を嫌い、性格的にはも閉鎖的だったので他国への支援の要求はしなかったのだ。
あと、それを可能にするだけの外交力も無かった。
そこに付け込んで初代平民軍団長は国王ならびに貴族ら貴族派と対等な契約や取引をおこなってきた。
同時に、初代平民軍団長が独自にうごいてコパー農業国はシルバー王国の傘下にはいった。
国王と貴族は最初は平民が勝手にしたこととして無視していたがのちにその有用性を認めざるを得なくなった。
初代平民軍団長は国王側に対して外交面でも優位に立ち、国王と交渉しその地位を確立させ、都市の治安を向上させた。
また、政治面では、都市の商人と農家との争いや商売の法秩序、もろもろを制定させ、土地所有の争いによる裁判の公平性を確立させた。
これによって都市の財界を代表する商会や農業面を支配している大地主、軍団の母体となる冒険者や戦いを専門とする平民の信頼を勝ち取る。
特に、初代平民軍団長がだした治安維持のお触れで有名なものは「一銭切り」と呼ばれており、道に落ちていたお金を自分のものにしたものはその多寡にかかわらず首を斬るという苛烈さだ。
そこまで苛烈なものであったからこそ多くの平民から信頼を勝ち取れたといえるし、これが平民軍団長がコパー都市国家の都市群を統治する治世200年の基礎ともなったのだろう。
100余りある都市の平民たちとその盟主である平民軍団長が形だけの国王を抑えている様子を知った他国は、いつからかコパー農業国と呼ばずコパー都市国家と呼ぶようになったのがこの国の歴史である。
「ふぅ、まだ途中だが、ここまでで理解できないところはあるかな?」
そう言ってジングート将軍は一息ついた。
僕はいま、これから向かう国についての基礎知識の講義をジングート将軍から受けていた。
へんな国・・・・・
僕があきれながらそう考えているとジングート将軍は、
「あ、もう一つ大事なことを言い忘れていた」
とニヤリとする。
「これは大っぴらに言ってはいけないことだが、実はこの初代平民軍団長は大将軍シェーラ閣下なんだ」
「大将軍シェーラ閣下自らが身分を隠して平民軍団長を務めた。その理由としてはコパー都市国家の貴族があまりにも平民への搾取がすぎるからだと聞いている」
「幸い、平民側も貴族に対して怒っていたこともあり、貴族の圧政を止めるために、顔と身分をかくして大将軍シェーラ様が平民派に力を貸したのだそうだ」
ジングート将軍から、コパー都市国家の簡単な歴史を聞いていた僕は、他の国との違いに驚きを隠せなかった。
「なんとも、独創的な歴史ですね」
僕は辛うじて感想を絞り出した。
これから行く国は簡単に言うと平民が治める国なのだ。
国王も貴族もいるにはいるが普通の国では考えられないほど権力を持っていない。
その分、商会を中心とした平民が自由に活動しているのだろう。
ある意味、身分の無い国といえる。
しかし、問題が起きた。
だから僕に行ってほしいのだ。。
ジングート将軍からの説明はまだ続きそうだ。




