第4話
結論から言うと、相手の闇ギルドの者は言うほど強くなかった。
黒いローブの男は炎属性の魔法を使う。
中級魔法から上級魔法の一部を使いこなすが、魔術師は距離を詰めると途端に弱くなる。
だから魔術師は、距離を詰められないようにパーティを組むか、無詠唱スキルを身に付けるかの対策が必須なのだ。
だけどこいつは何の対策もしていない。
力はあるが、実戦経験は少ないのかもしれない。
「くぅぅ、おまえ、弱そうに見えて結構強いな。あの時逃げて正解だったってわけか」
弱そうは余計だよ。
「今回もそうするか。くそっ。こんなはずじゃなかったのに」
そう言って闇ギルドの者は僕の目の前から消え去った。
そうか、転移魔法。
あのときも転移魔法で消え去ったことを思い出した。
経験はなくとも魔力量は多そうだ。
黒いローブの男を逃したことに多少の悔しさを感じていると背後から声がかかった。
「英明なるご主人様。わたくしでございます。リューシェでございます」
「ご主人様があのものと闇ギルドを厄介に感じられるのであればわたしが力を貸しますが如何なさいますか?」
「お望みとあらば魔神具とやらの回収と闇ギルドの無力化にも手を尽くしますが」
そうリューシェが僕に提案を申し出てくれた。
う~ん。
いまは商業ギルドで依頼を受けに行く必要もないので時間がある。
あの聖女の魔力をたくさん吸い取ったという魔神具がどのように使われるかも知っておきたい。
ここは、リューシェの提案にのるべきだろう。
「わかった。よろしく頼むよ。リューシェ」
僕はリューシェに頼んだ。
「承知いたしました。それでは闇ギルドの拠点へ向かいますね」
そう言って顔を赤らめながら「失礼します」と言って僕の手を握る。
転移魔法だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
黒いローブの男が転移したさきは闇ギルドの拠点の一つであった。
ここは闇ギルドでも最大派閥をまとめている幹部のゾーラという者が拠点としている場所だ。
黒いローブの男は、
「ゾーラ様、ただいま戻りました。へへっ。俺たちの目的がこれで叶いますねぇ」
と媚びるような物言いをする。
本当の目的であった暗殺に失敗したからそれを隠したいのだ。
そんな黒いローブの男に無遠慮な目線をむけるゾーラは、
「おまえはもういらん。おまえのような無能はおれの理想とする世界に必要ではない」
「消えろ!!!いや、俺が消してやるわ!!」
そう言ってゾーラは氷属性の上級魔法を無詠唱で黒いローブの男に向けた。
黒いローブの男は殺気を向けられたことには気づいたが無詠唱のスキルがないのでそのまま氷漬けにされてしまった。
「ふん!!ゴミグズが!!」
そうゾーラは言い捨てた。
ゾーラは闇ギルドの幹部の1人としてある目的を持っていた。
もともと闇ギルドの目的は中央平原を裏から支配することである。
政治と経済を思うままに操り、王国を崩壊させ、いけ好かない貴族という身分をこわし新しい秩序をつくることを目的としている。
そのため禁忌とされる魔術やそれを扱うことのできる魔術師をかき集めてきたのだ。
また、強力な魔道具の確保にも血道をあげていた。
その行き着いた先が魔神具である。
魔神具は誰が作ったのかいつから存在しているかはわからなかったが、それらを秘匿しひそかに保管している国、団体をさがしだしたのだ。
闇ギルドが執念であつめた情報。
それは魔神具という存在が現在で3つあるということ。
1つは攻撃力防御力を格段に上げる力をもつもの。
1つは身体のケガや病気を元通りにし、さらには回復魔法も扱えるようになるもの。
上手に操作すれば死者蘇生も可能らしい。
そして最後の1つは転移を可能にするもの。
もちろん通常の転移魔道具も少数ながら存在する。
しかし、通常のものは短距離の移動しかできないし値段も大変高価なものだ。
ところが、魔神具のもつ転移魔法は違う。
長距離の転移が可能なのだ。
ただし、莫大な魔力を貯めないと使用できない。
魔神具を使った転移魔法は使う距離に比例し貯めてある魔力が消費される。。
ところがその転移の魔神具は魔力を極限まで貯めることで1度きりだが、どんな場所でも行けるというのだ。
探している人がいるのならその人の顔を思い浮かべるだけでその人のもとへ行ける。
それ以外のどんな場所でも、それこそ人族が到達できない場所、もしくは次元を超えた場所へも転移することができるのだ。
これが秘められた転移の魔神具の本当の能力である。
闇ギルドは3つの魔神具のうち、1つ目の攻撃力防御力を格段に上げるものと、先程の転移の魔神具の2つを有している。
もともと、500年ほど前に闇ギルドが作られた目的は、ある女性の居場所を探すことにあったらしい。
創設者が死に、その目的が失われて久しい。
闇ギルドの幹部であるゾーラの目的、それは創造神に会うことだった。
先程の転移の魔神具には、創造神のもとへ行くと願いを1つ叶えてくれるという言い伝えがあった。
願いを叶えてもらうために創造神が住むとされる異次元の世界へ行くこと、それがゾーラの目的だ。
そのため、フクシア教国の王妃の欲望を利用し、転移の魔神具に聖女プリムローズの魔力を吸い取らせた。
魔神具の容量は大きく極限まで魔力を貯めるには長い年月がかかった。
途中で邪魔がはいったがなんとか聖女プリムローズから魔力を吸い取らせ、極限まで貯め込むことができた。
これで創造神が住むとされる次元へ転移できるはずなのだ。
「魔力が限界まで貯まっている・・・これでやっと悲願がかなう」
ゾーラは感極まった表情をする。
「これで創造神に会えるのだ。会えば何でも一つ願いを叶えてくれるはずだ」
「俺は神に類まれなる叡智を求める!!魔力?権力?財力?はっ、そんなものを求めるものはただの馬鹿だ!!」
「本当にこの世を支配するには智だ!叡智といっていい。この世に生きるだけでは決してたどり着けない前人未到の叡智だ。この世を創造したとされる創造神にも匹敵するほどの智があれば」
「この中央平原を、3強の国すべてを丸ごと支配することができるはずなのだ!!!」
「ぐっふふふふ」
もうすぐゾーラの長年の悲願が達成する。
ゾーラは長年、幹部として闇ギルドを動かしてきた。
それもこれも野望を叶えるため。
「さあ、創造神のいる世界へ案内しろ!!!」




