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第3話

ギルド長視点です・・・・・・・・・



商業人への追放を言い渡したあの日は、逆に俺たちギルド職員への断罪の日となった。


いまさら取り消しもできず、追放してギルドへの立ち入りを禁じたのだが、その日を境に第4支部は急に貴族からの依頼が途絶えた。


理由を聞いても、


「信用が無くなったからだ」


としか言ってもらえない。


夜会の給仕がほしいとあれほど男爵家から言われ続けていたのに、急にもう必要ないとの連絡がきた。


それだけでなく、ウルトラマリン劇団からの依頼もなくなったし、皇太子宮での補助業務が欲しいと言われることも無くなった。


全部、あいつ、あいつが受けた依頼ばかりだ。


結局あいつの依頼人に対する態度が評価されたんだろうなあ。


そしてあいつの献身にあぐらをかいて追放を言い渡してしまった俺たちギルド職員の見る目がなかったのだ。


俺も心のどこかでは所詮平民だから、という気持ちもあったんだろう。


そう考えていると、通信用魔道具が鳴った。


「はい、ギルド長のシュロ・ラークスパーです。はい、あ、これは、いつもお世話になっております。はい、は、え、ええ、ど、どういうことですか。あの本部長の件はなかったことにだなんて、あ、ちょっと!!」


ガチャンと切られてしまった。


先日、ギルド本部の本部長に推薦すると言う話が流れてしまった。


そりゃそうか、最近のうちのギルドの実績は下がりっぱなしだもんな。


「ハハハ・・・」


俺の口から乾いた声しか出なかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕は先日、通い続けた商業ギルドから追放処分を受けた。


追放処分を言い渡されたときはそれなりにショックだった。


ショックだったけど、側に控えていたエクレアがそれ以上の精神的ダメージを職員に与えた。


今から思うとあの日、珍しくエクレアが僕の後をついてきたのはこうなることを知っていたからではないか。


そう勘繰りたくなるほどのタイミングだった。


そんなエクレアを出し抜いて、今夜もデザートのプリンを求めて食材庫のほうへ忍び込んでいる。


・・・・・・・・いや、本当にバレてないのか?


ギルド職員の秘密をすべて暴露していったあのエクレアだぞ?


知ってて泳がされているのかな?


そして先日ギルドの職員みたいに暴露で断罪?


そ、そんなのいやだ。やっぱり今日はもうやめよう。


そして明日聞いてみようそうしよう。


翌朝、思いきって僕はエクレアに聞いてみることにした。あくまでもさりげなく。


「ね、ねぇ、エクレア。聞きたいことがあるんだけど。たとえば、たとえばだよ。食材庫の中の食糧が知らぬ間に減っているということは無いかな?」


僕は恐る恐る聞いてみた。するとエクレアは心底わからないという表情で、


「え?そのようなことは存じ上げませんわ。全然、ちっとも、これっぽっちも、わかりません」


僕はその返事を聞いて安心した。


よかった。エクレアから断罪されずに済む。


「食材庫の中の食糧についてご主人様は何か心当たりでもあるのでしょうか?」


と不思議そうな表情で逆に問いかけられる。


「い、いやいや、そんなことないよ。ただ、たとえば。たとえば、そんなこともあるかもと思って聞いてみただけだから。気にしないで。ね。ね」


と慌てた声でいってしまった。


それをきいたエクレアはにっこり笑って、


「さようでございましたか。ならわたくしも安心でございます。ご主人様のお気を煩わせてしまい申し訳ありません」


そう言って僕の前から立ち去ろうとした。


しかし、横切るとき僕の耳元でこっそりと


「あ、今晩はチョコレートケーキを食材庫に入れておきますので」


そして一礼をして去っていった。


・・・・やっぱバレてるじゃん!!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「まあ、元気出せよな」


そう慰めの言葉をかけてくれるのは親友といっていい、ナスだ。


場所は冒険者ギルド。


僕はもう長く通っていた商業ギルドを追放された身だから、建物に入ることはできない。


そしてまだ冒険者ギルドのCランクを持っているのでナスとの話をいつもの商業ギルドではなく、冒険者ギルドの食堂でしていた。


そこで、僕の追放処分を慰めてくれているのだ。


ナスによると、あのあと僕を追放した商業ギルドは大変なことになっているらしい。


実績も下がってきているし、ギルド長は青い顔をして落ち込んでいる。


なにより、職員の仲がギスギスしてうまく回らなくなったと、旧知の商業人がぼやいていたそうだ。


職員の秘密をあれだけ暴露すればギスギスするのはわかるが、実績が下がるのはなぜだろう。


実際に依頼に関わるのは職員ではなく商業人なのに。


それにギルド長がそこまで青い顔をして落ち込むことか?


よくわからないな。


僕はそう考えながら、ナスの話を聞いていた。


「で、どうする?今後の活動は?冒険者ギルドにお世話になるのか?」


それは僕もずっと悩んでいたことだ。


商業人がだめになったのでまた冒険者になるという道を選んでもおかしくない。


だけどなあ・・・・・・・


「う~ん、もう冒険者はしたくないんだよ」


それを聞いたナスは、それ以上何も言わなかった。


「ま、なにかあったらまた相談にのるよ。じゃあな」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


通りを歩く僕。


さあ、これからどうしようか。


冒険者になるか、別の道を探すか。


歩きながら考える僕に、道の真ん中で待ち構えていた男性がいた。


その男性は黒いローブを羽織っている。


僕は顔を上げてその男性をじっくり見るが見覚えがない。


「よう、久しぶりだな・・・・・・と言いたいところだが、どうも俺の顔は覚えていないようだな」


「のんきなもんだぜ、お前たちのお陰で俺はひどい目にあったというのに。俺はフクシア教国で偽聖女に雇われていた闇ギルドの者だよ」


男性は黒いローブをひらひらさせながら言う。


「ん・・・・・・、あ、あああ!!おまえ、たしか、偽聖女マーヤを見捨てて逃げたやつ!!」


僕は思い出して、叫んでいた。


「ふふん。やっと思い出したか。そう、あの勘違いな偽聖女を利用して、本物の聖女プリムローズの魔力をたっぷり吸い取った魔神具を回収したやつだ。やっと思い出したか」


「今日はな。おまえを始末しに来たのさ。俺は闇ギルドの中でも最大派閥に所属していてな。そこで少しでも俺の地位を上げたい。だから少しでも俺に失敗させたやつを生かしておきたくねえのさ」


そう言って男性は懐からナイフを出して殺気を放つ。


そうか。


僕を狙っているのか。


それならば僕も降りかかる火の粉は振り払わないとな。


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