メインエピソード7 魔神具と2つのギルドの顛末 第1話
突然だけど僕は甘いものが好きだ。
夕飯にはデザートが出る。
デザートは僕の好みのもので、ちょうどおなかが満腹を感じるよう計算されつくしたかのような量なんだけども。
けども、完璧すぎてつらい・・・・・・・
たまにはこう、なんというか、ハメを外したくなるというか。
「ねえ、この気持ちわかってくれないかな」
僕は目の前にいる友人のナスに力説していた。
ナスは呆れたような顔をしながらも僕の話を聞いてくれる。
「まあ、わからんでもないこともない・・・かな?」
「でも、メイドさんたちがせっかくお前の腹の分量まで計算して作ってくれているんだろう?そんなこと言ってないで感謝しないとな」
「そ、そうなんだけどさあ。でもでもあのデザートのプリンがもう絶品でさあ。一度口にしたらもう天にも昇る心地で味が忘れられないんだよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「え、本当ですか!!俺が商業ギルド本部長に推薦にあがっている!!いえ、そんな滅相も無い。はい、はい、あ~最近の第4支部の功績で、いえ、ありがとうございます!!」
ガチャン、と通信魔道具を切る。
帝都プラチナムに拠点をかまえる商業ギルドプラチナ帝国第4支部。
俺はここのギルド長を務めているシュロ・ラークスパー。
今年40で脂の乗り切った働き盛り。
髪はふさふさだが、ちょっぴり生え際が気になるお年頃。
さきほどは商業ギルド本部からの連絡で俺の功績を認めて総本部の本部長に推薦することに決まったという。
これは大出世だ!!
ああ、ここまで来るのに苦労したなあ。
俺のことを少し話そう。
俺は、ラークスパー子爵家の4男として生をうけた。
4男てなあ、悲惨だぜ。ほぼ平民扱いだ。
家はそれほど裕福といえなかったし。
小さいころから騎士として独立するか、勉強で身を立てるかと親に言われて育ったんだ。
だけど、俺はそのどれも選ばず冒険者として身を立てようとした。
15歳でなけなしの金をもらって家を出て、冒険者ギルドで冒険者を続けること10年。
当時はパーティを組んで魔物退治をしていたが、メンバーをかばってケガをしてしまい、そのまま冒険者を引退することになった。
そこから、家へ戻るわけにもいかなかったが、幸いパーティメンバーのコネで商業ギルドを紹介してもらい、商業人としてランクを積んでいったんだ。
そして信用と実績を積み重ね、貴族の身分ということも合わさって35歳のときに、ギルド長をまかされることになった。
そしてついに、総本部の本部長の座を打診されるまでになったのだ。
そんな俺だが、実はこのギルドで俺を悩ますある案件がある。
商業ギルドは当然商会と連携してその利益を調整する立場にある。
ギルド自体が不当な権力から対抗するために作られたのだから、なによりも信用や契約を守ることがギルドの信頼の元になっているんだ。
なぜ、こんな話をしているかというと、実はいま、うちのギルドの管理下にいる有望な商業人がある疑いをかけられていてこのままうちのギルドで面倒をみることは信用を低下するというリスクがあるのではないかと職員が声をあげているのだ。
俺自身が商業人として下積みをしてきたから若い商業人を守りたいという気持ちはある。
だけどその疑いというのが皇太子宮での補助業務で、あろうことか仕事をせずに怠けてばかりで遊んでいたというのだ。
これが本当ならとても不名誉なことで信用が落ちても仕方がない。
だけどなあ、その商業人は若いのに真面目で文句も言わずこちらが振る面倒くさい仕事を文句ひとつ言わず引き受けてくれるのだ。
それに依頼人から低い評価を受けたことがない優秀な人材だ。
だから皇太子宮での怠けの件も何か誤解か行き違いなのではと俺は疑っている。
しかし、職員はそう考えないようだ。
俺もそうだが、ギルドの職員も平民より貴族の子息が多い。
だから権力には敏感なのだ。
皇太子宮といえば権力のトップに位置する。
そんなところで不名誉なウワサが出たこと自体職員は許せないようだ。
ああそれと、その例の商業人はギルドからみて少々厄介な仕事も文句言わず引き受けてきたもんだから職員が下に見てしまっている状態だ。
たぶん平民だからということも理由にあるのだろう。
ギルドが権力に対抗するために作られたことを考えると矛盾してしまうが仕方ない。
職員たちも生活があるしギルド長である俺はその職員の生活を守ることが第一だ。
それに加えて、最近の出来事である毛生え薬をつくったという嘘をついたことも職員のなかでは理由に挙がるらしい。
罰として彼にはEランクにまで落ちてもらった。
しかし、俺は本物の毛生え薬だったのではないかと疑っている。
だが、本人が否定したのだからこれ以上俺からは何も言えない。
ふう。
先ほどの会議ではその商業人をギルドから追放するという案が出た。
俺は追い出したくないが、職員の意見は違う。
これが今俺を悩ましている案件なのだ。
もちろん俺は抵抗したさ。
職員たちには彼を追い出すことによるリスクを挙げた。
面倒くさい案件を任せられる商業人がいなくなるぞとか。
それに彼を指名する依頼があるのだ。
例えば、さきほど疑いをかけられているという皇太子宮の文官からも彼を名指しで依頼が来ている。
また以前、依頼がきたウルトラマリン劇団からもぜひ警備にきてほしいという依頼が来ている。
ほかには夜会の給仕の依頼をだした貴族からもその商業人にぜひぜひぜひ来てもらいたいという要望が頻繁に来ているのだ。
俺は会議でこれらの声を職員に伝えた。
しかし、職員たちからは
「その程度の内容はほかの商業人でも十分こなせることでしょう。多少、依頼人から信用を得ているのかもしれませんが、そんなことは他の商業人でも時間をかければできることだと思います」
という反論をうけてしまった。
おれは不覚にも「たしかに・・・・・」と納得してしまったんだ。




