第5話
闇ギルドの男は転移魔法で消え去った。
あとに残されたのは偽聖女としてずっと聖女を演じてきた、いや、貶めてきたマーヤだけだ。
「なによ。何なのよ。闇ギルドのやつ、裏切りやがって!!」
「これは使いたくなかったけど、」
そう言いながらマーヤは懐から魔道具を取り出し、起動させた。
「ふっふっふ。この魔道具は困ったときに使えと言われて魔道具なの。きっとあなたたちを殺してくれるわ」
マーヤは笑っていたが、不意に笑い声が悲鳴に変わる。
「ヒィィィィ。痛いぃぃぃぃ。助けてぇぇ」
起動した魔道具が形を変えマーヤの肉体にとりつき、みるみるうちに化け物に変化していったのだ。
それは、持ち主を強制的に魔物に変化させる禁忌の魔道具だったのだ。
グォォォォォオ
叫ぶ魔物が目の前に現れた。
この謁見の間には近衛兵はいるが、あとは国王陛下やカトレア女王など戦えないものが多い。
僕は身体を盾にして逃がせるだけ逃がそうと判断し武器を手に取ろうとしたが、さっと従者のリューシェが魔法を唱えた。
すると魔物は一瞬にしてチリと化した。
事件は終わったのである。
長くフクシア教国を苦しめてきた問題が解決した。
これからは本来の聖女であるプリムローズが新たに聖女としてフクシア教国のために尽くしていくことになるだろう。
これでフクシア教国の聖女に対する「困らせ聖女」などという不名誉な2つ名は消えると思う。
しかし、闇ギルドの者はなぜ魔神具に魔力を貯めようとするのだろうか。
以前にも闇ギルドの者とはウルトラマリン劇団の事件で目にしている。
あのときも魔神具を使用していたのだ。
闇ギルドは魔神具をそんなに集めて一体何をしようというのだろうか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
英明なるご主人様にお仕えし、すべてを捧げ尽くすことが無上の喜びであるメイドのリューシェでございます。
今回の事件はわたくしの至らなさのため、ご主人様に牢屋で過ごすというあってはならない体験をさせてしまいました。
今後このようなことが起きないよう、調査をすることにいたしました。
まず、エリューシオン教会の大司教がなぜフクシア教国の国王の訴えを聞かなかったのかについてです。
これについては大聖女ノワールを派遣して問い質させました。
すると、聖女に関して教会に影響力をもつアマランス公爵家からの強い要望でフクシア教国に派遣した聖女に対して口出しをしないようにと言われたそうです。
それならば大司教に罪があるとは言えませんね。
大司教がエリューシオン教会を代表するとはいえ、プラチナ帝国の公爵家とあえて揉めるようなことはしないでしょう。
ですのでわたくしは大司教を不問といたしました。
が、大聖女ノワールは違うようです。
命を張ってでも聖女を守らないとは何事かと大司教のちょうきょ・・・・もとい教育をし直すと笑顔で言っていましたので、なんらかの教育が大司教に施されるのでございましょう。
次に、プラチナ帝国のアマランス公爵家を訪ねてみました。
あ、わたくしは帝国民には知られていないので、イオニア姉様に来ていただきました。
プラチナ帝国の公爵家であれば大魔導士イオニーア「様」の顔はご存じのはずなので。
用件は、フクシア教国での聖女の取り換えと聖女への不当な扱いについてです。
そしてわかったことは男女関係の情からくるものでした。
かのフクシア教国の王妃のライバルであった令嬢は、王妃に負けた後、こちらのアマランス公爵家の当主に嫁いでいたそうです。
実はこのアマランス公爵はエリューシオン教会と浅からぬ関係があり、聖女の派遣に意見を言える家なのです。
そこでそのライバル令嬢は祖国のフクシア教国に自分と血のつながった聖女プリムローズを派遣するようにしたそうです。
ところが王妃の手によって不遇な目にあったとき、王妃から、
「私の邪魔をするなら夫のフクシア国王を殺す」
とまで言われたとか。
この話を涙ながらに現公爵夫人である王妃のかつてのライバル令嬢は語っていました。
もう公爵家の妻になっていたもののまったく情が無くなったわけでもなくまた、ここまで王妃を追い詰める原因を作った自分の罪深さを感じ、王妃の聖女への虐待を認めてしまったと懺悔をしていました。
公爵家当主からもこの一件に関しては間違った判断を下したと謝罪をうけました。
いえ、わたくしにではなく、聖女プリムローズにしなさいと言いましたが。
今回のけじめとして、アマランス公爵夫人は離縁。
離縁後エリューシオン教会で聖女の世話係という奉仕活動をして過ごすことになりました。
色々な処分がありましたが、責任のある立場の人が責任をとるという結果になりましたので、今後ご主人様にご不便をかけることは無いと願っています。
あ、最後に。
今回事件の発覚したきっかけは、王妃の侍女をしていたマーヤことプリムローズがご主人様の前で倒れたことでした。
本人は風邪のせいだと思っているようですが、本当は違います。
わたくしです。
一目見て、わたくしが認定した聖女であると気づいたので魔力で気絶させてきっかけを作りました。
物語じゃあるまいし、そうそうご主人様の前で都合よく気絶なんてしませんよ。




