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第4話

僕たちはいま、フクシア教国の国王陛下と話をするため謁見の間にいる。


そこには、国王陛下だけでなく、王妃殿下やカトレア王女殿下、そして例の聖女とその御付きの侍女たち、マートルと呼ばれる高位貴族の子息も集められている。


早速聖女が口火を切った。


「一体何だというの?この国で一番、身分が高く、かつ、回復魔法をかけるという治療のために一番忙しい私を呼び出すだなんて。一体、何様?」


おまえが何様だよ。


と心の中で毒づいておく。


「んん。よく見るとお前たちは私が牢屋の中へ入れておくように言った者たちではないか。近衛兵、この国に害をなす者たちが牢屋から抜け出しているわよ」


「即刻、牢屋の中へ入れてちょうだい!!」


しかし聖女の命令を国王陛下が止めた。


「それには及ばん!!そしてこの国に害をなすものはおまえだ!!聖女プリムローズ!!いや、偽聖女マーヤ!!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ことの起こりは、数年前にフクシア教国に派遣された聖女が実はこの国の女性であったことから端を発している。


そして不幸なことに聖女の出身だった家が王妃の国王をめぐるライバルであった女性の家であったことが不幸に拍車をかけたのである。


王妃とそのライバルの令嬢は当時から国王をめぐりその心を射止めんと様々な努力をし、ときにはお互いに妨害や中傷をひろげたりとドロドロした戦いをくりひろげた同士だった。


やっとの思いで国王に認めてもらい、婚約、結婚をして王妃の座をつかんだのがいまの王妃である。


そして王子と王女を出産したのだ。


幸せの絶頂ともいえる時期にフクシア教国に派遣されてきた聖女が幼いときのライバルの家から出された聖女であった。


王妃は聖女を尊い存在として受け入れることができなかった。


王妃はやっとライバルの家に勝ったと思ったのだ。


なのに思いもしない方向から矢が放たれたように感じたのである。


このままではライバルの家の人気や名声が上がってしまうだろう。


ましてやその家から側妃が上がったりしたら自分の王妃としての立場が危うくなるかもしれない。


そう感じた王妃は一計を案じた。


それは、別の女性を聖女に仕立てて、本来の聖女を下女にすることだった。


下女にした聖女が完全に心が折れて言いなりになった頃合いを見計らって自分の侍女にして側に置くことにしたのだ。


そしてわからないように虐待まがいのいじめをしてきたのである。


絶対に自分に逆らうことのないように。


一方、聖女に仕立てられた偽の聖女にはわざとその品位を貶めるような振る舞いをさせた。


非道な言動とふるまいをさせることでフクシア教国に派遣された聖女の評判をおとそうとしたのである。


しかし、偽聖女は回復魔法を使えない。


すると偽物であることがばれてしまう。


その問題を解決したのが魔道具であった。


回復魔法を使えるようになる魔道具を手に入れ、それを偽聖女につけさせて本物の聖女と見せかけて回復魔法を使わせていたのである。


そして本物の聖女には、回復魔法を使えなくなる呪いの魔道具、首飾りをつけさせた。


最後に念には念を入れて、お互いの名前を入れ替えさせたのである。


つまり、偽聖女の本当の名前はマーヤだったのだ。



この真相を僕たちは謁見の間で聞かされた。


あの時牢屋で本当のことを言い当てられたマーヤ、正式には聖女プリムローズは勇気を奮って国王陛下に真実を話した。


その話を聞いて国王は調査に乗り出したのである。


王妃付きの侍女やメイド、そして王妃の実家にまで調査の手は及び真相が明らかになったのだ。


話が終わるころには偽聖女マーヤはブルブルと震えており、カトレア王女とマートル・アンプロシア侯爵子息は王妃と偽聖女マーヤをにらみつけていた。


そしてこの話からして元凶は王妃だ。


ところが、王妃はこの話を聞いた後でも顔色は全く変えずに涼しい表情でいた。


国王は王妃に、


「なにか申し開きはあるか。王妃よ」


「何もございませんわ。ですが、わたしのしたことは罪なのでしょうか。たしかに聖女の身分を詐称させたことはプラチナ帝国では罪になるかもしれませんが、このフクシア教国にはそれを罪とする法律はないはず」


王妃はこともあろうに開き直るような発言を始めた。


カトレア王女は、


「お母さま!!何を言っているの。どう考えても罪を犯したじゃない。正当な聖女様を自分の侍女にして虐待まがいのことをしてきたのよ!!」


「あら、虐待まがいというのは本人の申し出よ。私は淑女たるに相応しい振る舞いができるよう躾けてあげただけよ。見解の相違ね」


「そんな。そのせいでわたしは愛するマートルとの婚約まで解消する危機に陥ったというのに」


「もういい。王妃よ。今を以てお主と離縁することにした。お主は北の塔で幽閉とする。近衛兵、元王妃を北の塔へ連行せよ」


静かに国王は王妃を断罪した。


口では何と言いながらも罪を認めていたのか抵抗もせず、何も言わず連行されていくのを僕たちは黙ってみていた。


すると偽聖女マーヤが突然、口を開いた。


「いやよ。私は!!これで終わりだなんて」


「たしかに、私は王妃様に連れて来られた平民よ。でも魔道具を使ったとはいえ、長年この国のために回復魔法を使って治療してきたもの」


「これで終わりなんて嫌!!」


「そうだわ、この子さえいなくなればやっぱり私がこの国で唯一の聖女よね」


そう言って本当の聖女で王妃の侍女をさせられていたプリムローズを指さす。


「さあ、出てきて!!そしてこの娘を消してちょうだい!!!」


偽聖女マーヤが叫ぶとどこからともなく黒いローブを羽織った男が現れプリムローズめがけて炎属性の魔法を放った。


すると、間一髪のところで防御結界魔法が張られた。


横を見るとリューシェが魔法を使ったようだ。


「チッ。余計なことを」


「なにしているのよ!!はやくこの小娘をけしてちょうだい!!」


そう言って催促する偽聖女マーヤを見て、黒いローブの男はニヤリと笑う。


「残念だったな。ここまでだ。お前さんの役目もおわりのようだ。いままでご苦労さん。じゃあな」


そう言って、黒いローブの男は茫然とする聖女プリムローズの側へ歩いていき、首にかけている首飾りを取った。


「やはりな。この防御結界魔法は敵意に対して反応する。ゆえに敵意の無い行為には結界は作動しなかったな。高度すぎて逆に助かったぜ」


そう言いながら、首飾りをなめるように眺めている。


「うん、十分な魔力が貯まっている。助かったぜ。それじゃあ、あばよ」


そう言って去ろうとするところを僕は呼び止めた。


「待て!!おまえは闇ギルドの者だろう。一体その呪いの首飾りを何のために回収するんだ!?」


「ほう。勘のいいやつがいるな。そのとおり、俺は闇ギルドの依頼でこの魔神具の回収の任務を請け負っている。これはな、魔神具なんだよ」


黒いローブの男はチラと首飾りを見せる。


「ただし、この力を真に開放するには莫大な魔力を貯めないといけない。そのためにここにいる聖女様にこの首飾りの魔神具を魔力吸収モードにしてつけさせたのさ」


「魔力吸収モードにすると聖女様のもつ魔力がずっと吸い取られる。そのせいで回復魔法が使えなくなっていたというわけだ」


「そ、そんな。だから王妃様は首飾りをつけろと。そして突然回復魔法が使えなくり、聖女としての価値が無くなったから侍女にしてあげると恩をきせてきたのね・・・・・」


「ついでに言うと、回復魔法が使えるようになる魔道具という言い方は正確ではない。正確には吸い取った魔力を放出する魔道具なのさ」


「つまり、プリムローズの魔力を吸い取り、その一部をマーヤが聖属性の回復魔法として放出していただけさ。それも吸い取った魔力の何十分の一しか放出していない」


僕はすかさず、


「じゃあ、残りの吸い取った魔力は何に使うんだ!?」


「ふふふ、近々、わかるだろう。吸い取った魔力はこの魔神具の真の力を解放するために使われる。そしてこの魔神具の真の力が発動するときを楽しみに待っていてくれ」


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