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第2話

「これどういうことですか?これですよね。例の問題用紙って。なぜあなたの机の中に入っているんですか?」


そう言ってにらみつけるエリカさんを見て、ニヤリとその補佐官は笑いながら、


「ふふふそうだよ。私が問題用紙を預かり君に試験を延期だと伝えたんだねぇ」


「ところで質問だが、エリカ君はどうして補佐官になろうと思ったの?皇太子殿下のそばで甘い汁を吸おうと思ったからではないのかな」


「この仕事はそんな甘いものでもないし、そのような不心得違いの人物を補佐官にしたくないんだ」


「ローレル殿下は立派な方だ。われわれは権力に目を奪われず、粛々とローレル殿下の手足となり、働くことのできる人物を求めている」


「な、わ、私、そんなつもりありません!!それに誤魔化さないでください。そんな私的な感情で補佐官の試験を妨害するなんて許されるはずがありません!!」


「そうだろうか?私の忠誠は殿下はよくご理解くださっているよ」


「それにね。現に調査をしてくれた影からの報告では君はある記録を調べたいという目的をもっているそうだね。確かブルー王国の記録だったかな」


「ではこうしよう。その記録を私の権限で調べていい。その記録を調べ終われば、君は補佐官になることを辞めるかい?」


僕は黙って聞いていた。


内容はあまりに横暴だと思う。


だけど、そんな提案をエリカさんが受けるとは思わなかった。しかし、


「・・・・本当ですか?本当に調べてもらえるんですか?」


「補佐官を辞めることを承諾する代わりにブルー王国の出来事を調べてもらえるなら・・・・・」


僕はエリカさんのために思い切って口を出してしまった。


「恐れながら申し上げます!!彼女を見くびらないでください!!!」


「確かに最初は目的があったかもしれませんが、今、彼女は補佐官としてこの帝国とその帝国民のために仕事をこなしています」


「補佐官の仕事は、どれも帝国民の幸せと生活の向上に直結するものばかり」


「エリカさんは確かに祖国を失ったかもしれませんが、国民の安全と平和を守ると言うその貴族としての誇りは失われていません!!」


僕がそう勢い込んで言うのを見て、エリカさんははっとして


「そ、そうです。たとえ目的が果たされたとしても、私は補佐官を辞めません。それが私に残された私自身の矜持だからです」


「なぜ私が補佐官になるのを辞めさせようとするのか分かりませんが、私には一切やましい事はありません。お疑いなら調べていただいて結構です。どうか試験を受けさせてください」


エリカさんが言うことを黙って聞いていた補佐官は口元をニヤリとして、一言、


「まあ、合格だな」


え?


僕とエリカさんの心の声は一致したと思う。


そして部屋の扉があき、皇太子ローレル殿下と側近が入ってきた。


「おめでとう。今をもってエリカ君、君を皇太子補佐官に任命するよ」


殿下はにこやかな表情で告げた。


「ふふ。納得いかない顔をしているね。もちろんいまから説明をするよ」


「今回の一連の事件は、補佐官としての最後の試験だと思ってほしい」


「え、一連って、どこからですか?まさか、問題用紙が盗まれたところからですか?」


「そうだよ。盗まれたので筆記試験を延期するという通知を受けた時からだよ」


「そこから、それを聞いて君がどう動くかをわれわれはずっと見ていたんだ。君がどのような行動をとるのか。どのような判断を下すのか」


「人によっては、なぜ問題用紙を盗むのか動機から犯人を捜そうとするだろう。また、自分を補佐官にさせたくないという動機から自分の所属の貴族をもう一度洗いだそうとするものもいるだろう」


いったん言葉を切って、エリカさんの方を見る。


「そして君のように、魔道具や魔法の力を使って盗まれた問題用紙を探そうとすることもあるだろう」


「この場合はその魔法の実力が判断される。補佐官になれば秘密裡に探し出すという仕事も存在するからね」


「また、探知魔道具を用意することもあるだろう。自分が所有しているのか、家が所有する者を借りてくるのか」


「ただ、そう簡単に見つからないようにこの問題用紙には結界を張ってあった。だから相当優秀な魔法か魔道具でないと見つけられないんだ」


そう言ってローレル殿下は僕のほうを見る。僕は思わず恐縮した。


「君は相当優秀な魔道具を持っているようだね。ちなみにその魔道具はどこから?」


「・・・・・家の人から借りました。」


「そう。それなら、その魔道具を作成した方はかなり高名な錬金術師か魔術師だろうね」


「とこのように強力な魔法または魔道具をもっている人とのつながりを活用するか」


再びローレル殿下はエリカさんのほうを見た。


「君は目的を達成するためならなりふり構わず持てる力をすべて使って果たそうとするとても勤勉で優秀なタイプの補佐官だな」


「改めてこれからよろしく。さあ、他の補佐官を紹介しよう」


そう言って皇太子はにこやかな表情で部屋にいる人たちと昼食をとる準備をするよう使用人に命じた。


勿論僕はすぐさま部屋を出たけどね。



あのあと聞いた話では本当に補佐官になったらしい。


また、皇太子補佐官だけではなく皇太子妃のサーラ様からの信任もあつく皇太子妃付きの文官にもなるよう指示をうけたんだとか。


あとで嬉しそうにエリカさんから顛末を聞いた。


その笑顔を見てよかったと思えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


皇太子補佐官の任命式。


補佐官は皇太子の手足として動くものとしてその任命式は決して軽いものではない。


なんと皇帝陛下直々のお出ましで任命を受けるのだ。


そのことを知らされたエリカは極度に緊張していた。


周りを見ると皇帝が来るということからか、補佐官や側近の人も緊張しているように見える。



「皇帝陛下のお越しでございます。」


内務省長官タンジェリン・マゼンタ公爵が執務室にいる者に聞かせるように響く声で言った。


エリカも周りの補佐官、側近、そして皇太子も頭をさげる。


「よい。皆、楽にするように」


という皇帝の言葉でみなは頭を上げる。


「さて、皇太子の新たな補佐官の任命であったな。どの者だ?」


という言葉にエリカは前へ出る。


「わたくしでございます。名をエリカと申します」


緊張を隠し、震える声を必死で抑える。


「うん。良い目だ」


「これから皇太子の補佐官として頑張ってほしい。皇帝ローシェンナ・プラチアーナの名でエリカ、そなたを皇太子補佐官に任命する」


そう厳かな声で伝えられた。


それを聞いたエリカはハンカチを差し出されるまで涙を流していたことに気づかなかった。


それをあたたかな目で見ていた皇帝は続けて


「我々皇族は尊い血筋だから皇帝になったのではない。民を守る。その義務と責任に誇りを持ち、実行してきたから皇帝になれるのだ」


「そして我がプラチナ帝国は創造神様によって存続が許されている」


「創造神様が我々に帝国を治めよ、帝国民を幸せにせよと言う使命を与えたから我々はこの帝国を統治することができるのだ」


「補佐官はその使命をうけた皇族を補佐することが至上の使命となる。創造神様があり、帝国民があって我々が存在する。このこと忘れることのないように」


この言葉を言って皇帝は部屋を出ていった。


先ほどの言葉はプラチナ帝国が建国されたときから変わらず伝えられてきた言葉である。


この国は大魔導士イオニーアを中心に発展してきたのだが、イオニーアは常に創造神の存在を忘れることのないようにと伝えてきたのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


一連の任命式を終えた私エリカは、皇太子補佐官として常に民に寄り添い皇太子の手となり足となって役に立てるよう頑張ろう、そう心に誓った。


胸にあるペンダントを握りしめながら。


・・・・・・・・あ、このペンダント、返すのを忘れていた。


試験のためにといって彼が貸してくれたペンダント。


こうして補佐官になれたんだから返さないとね。


私は大切な宝物を扱うようにペンダントを改めてそっと握りしめた。


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