ショートエピソード 新たな都市伝説
ナスと一緒に商業ギルドの依頼を受けた。
プラチナ帝国のなかでも大手の商会からの依頼で、平民区に新しく支店をだすのでその開店のための準備に臨時の助っ人にはいってほしいというものだ。
その支店の代表者は少しオネエ言葉を使うがとても頼りがいのある人だ。
ナスと助っ人に入っていたのだがどうやらナスだけを気に入ったらしい。
「ナスちゃ~ん。うちはあなたなら大歓迎よ~。どぉうぉ、うちの商会でこのまま働いてみない~?」
と何度か誘われている。しかし、ナスはその都度、
「あはは。お誘いありがとうございます。俺なんかにはもったいないぐらいのお誘いです。だけど、俺は自分というものを弁えているつもりです」
「いまはよくしてもらってもきっと俺のことを知れば嫌になると思います。嫌われるぐらいなら最初からいい距離の関係でいたいと思いますので」
そう言っていつも断るのだ。
「嫌になんかならないのに〜」
と店長はいつも残念そうだ。
商会の支店からナスと出てくると、道路わきで薄汚れた身なりをしたおじさんがいた。
最初おじさんはフラフラした足取りで悩んだ表情をしていた。
だけど、僕たちを見ると人の好さそうな表情を浮かべ話しかけてきた。
「すんまっせん。ちょっとお尋ねしたいんですが、このプラチナ帝国に貴族でないながらも国王より力のある人がいるというウワサを聞いてきたんですが、あんたたち知らねえですかい?」
と変なことを聞いてきた。
一体なんのことだろう?そんな人、聞いたことない。
僕たちの困った表情をみて、おじさんは、
「まあ、そんなとんでもない人の居場所をそこらへんの平民が知っているわけねえか。あはは。はぁ」
「あとお、もう一つ聞いていいかい?わたしの娘がいってたことなんだけど、「プラチナム観光名所」という雑誌に載っているらしいんだが、都市伝説として拝むとごくまれになんでも願いが叶う場所というのがあるとか」
「あんたたち、その場所についても知っていることないかな?」
と聞いてくる。しかし僕たちが返事をする前に、
「まあ、知るわけないわなあ。ごめんなあ。変なことばかり聞いてしまって。はぁぁ」
とまた悩んだ表情に戻ってしまった。
僕もナスもこのままで放っておけず、公園のベンチに誘って話を聞くことにした。
僕が差し出した果実水を飲みながらおじさんは、ポツポツ話をしだした。
「実は、わたしはアイボリー王国から来たんだ。さきほど到着したところだよ」
「アイボリー王国のペチュニア伯爵家の従者としてプラチナ帝国までお供をして来たんだけど、旦那様、ペチュニア伯爵さまが先ほどのウワサを信じてしまってねぇ」
「そのとんでもない人を見つけるか、願いの叶う場所をみつけるかするまで宿に帰ってくるなといわれて追い出されてしまったんだよ。あはは。う、」
ブワッ。とそのおじさんは泣き出してしまった。
それはそうだろう。
そんな雲をつかむような話を一介の従者に押し付けてるなんてひど過ぎる話だ。
「領地の税金もすごく高く、わたしの家族はいつも腹を空かせているんだ。なのに旦那様はそのお金で高価な宝石や魔石を買いあさり貢物にしてプラチナ帝国にコネを作るつもりらしい」
「ウッ、ウッ。わた、わたしの娘は実は難病にかかっていて今も苦しんでいる。本当はこんなところに来たくなかった。せめて娘の側にいてやりたかった。なのに無理矢理、ウッ。ウッ。」
「もし、本当に願いの叶う場所があるのなら、せめて娘の難病を直してもらえるかもと思ったけど、そんな都合の良い話があるわけない」
おじさんはずっと泣いている。
願いの叶う場所っていうと、以前のエリカさんが言ってたことかなあ。
それだと心当たりはあるけど、そこ、僕ん家だから何のご利益もないし。
それならせめてその、「貴族ではないのに国王より力のある人」、と言う人物を見つけてあげればこのおじさんの力になってあげれるかなあ。
だけど、一体、誰のことだろう。
全然思い当たる人がいない。ナスはわかるかな?
僕があれこれ考えていると、ナスがボソッと、
「それって、おまえの屋敷の人のことじゃ・・・」
え?僕の屋敷って、エクレアたちのこと?
たしかに不思議な力を持っているし三国の要人が毎朝面会のために訪問するぐらい人望があるけど・・・・・・国王より力があるということはないでしょう。
そんなことよりも、難病の娘さんのことが気の毒に思えたので、僕はエクレアから持たされていたポーションをあげることにした。
難病に効くかはわからないけどせめて痛みだけでも和らげれると思う。
「あの〜おじさん。これ、よかったらどうぞ。難病が完治するかはわからないけど、身体は楽になると思います」
おじさんは不思議そうな表情で僕とポーションを見つめており、あわてて僕に、
「こんな高そうなものいただけねぇよ。とっても払いきれねぇし。それに娘と同じぐらいの年の子の持ち物をもらうなんて心苦しい」
と受け取らない。
しかし僕は強引におじさんにポーションを押し付けて、
「いやいやいや、これ、家の人が作ったものだから。タダだよ。僕用の薬なんだ。これも何かの縁だし。いま僕は怪我も何もしていないから余っている薬だ。だから娘さんに使ってください」
おじさんは僕の申し出に涙を流しながらお礼を言った。
「ほんとにいいのか?ならありがたく頂くよ。本当にありがとう」
そういって男性はポーションを受け取り、僕と別れた。
その後。
おじさんの主人であるペチュニア伯爵は諦めてアイボリー王国へ帰っていったようだ。
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雑誌「プラチナム観光名所」の人気コーナー
〜〜実際に帝都を訪れた人に聞いてみましたインタビュー〜〜
今日ご紹介する人はアイボリー王国の某伯爵家にお勤めの男性です。
先日貴族の主人のお供で、帝都プラチナムに来られたとか。
以下、インタビューの内容です。
記者「帝都プラチナムはいかがでしたか?」
男性「はじめての都会で楽しみでもあったんですよ。でもね、お供した旦那様からあまりにも現実離れした命令を出されて困っていたんです」
「するとね、道に歩いていた少年たちが声をかけてくれたんですよ。帝都民は平民ですら親切でとても優しいという印象を受けました」
「あとですね。そのとき私、上司の無茶ぶりと、娘が難病で苦しんでいることで色々追い詰められていましてね。その少年たちに愚痴を聞いてもらっていたんです」
「そのときにですね、少年からもらったポーションを娘にのませるとたちまち難病がなおったんです。もうすっごい感激で!!これもプラチナム様様ですよ!!」
「帝都では、平民ですらあんな高価な薬を所持していることに驚きを禁じえませんでした」
とこのように答えています。
本誌記者は早速この話が真実か確かめるべく帝都プラチナム全域を調査しています。
もし、情報をお持ちの人がいれば本誌記者まで連絡をお願いします。
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この雑誌が発売されてから帝都プラチナムでは都市伝説「願いの叶う場所」に続いて新たな都市伝説が生まれた。
それは「出会ったらラッキー。難病を治す薬の少年」と言うものだ。
この都市伝説はすぐに広がった。
理由は、横暴な貴族の主人に仕えている使用人のもとへ現れると言われているからだとか。
そして難病や死の病に倒れていてもたちどころに治る薬を渡してくれるのだそうだ。




