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ショートエピソード        邸宅のお客様2


今回も僕の住む邸宅にくるお客さんの話をしよう。


あれは、良く晴れた日のことだったと思う。


朝エクレアがやさしく起こしてくれて僕は着替えをし、朝食をたべに下の食堂へ降りていった。


その後、今日の予定のお客をホーネットが教えてくれた。


今日の客が指名したのはノワールだった。


僕はノワールを応接間の外に控えさせてから中へ入っていった。


応接間にいたのはエリューシオン教会の代表である大司教さまだった。


大司教さまが今日のお客様のようだ。


大司教さまとは以前、魔法学園に在籍していたときにピオニー商業国の第一王子に誘われて教会の総本山で会ったことがある。


その大司教さまがなぜかノワールと話をしたくてこの邸宅にきたのだ。


僕は応接間の外で控えているノワールを呼びお客さまに給仕をするよう伝えた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


わしはプラチナ帝国にあるエリューシオン教会の代表の大司教。


名前?名前などどうでもいいだろう。大司教という肩書こそがわしのすべてなんだから!!


まあ、一応名前はグロリオサという。平民出身なので家名はないがな。


まあそれはいい。


今日は崖から飛び降りるつもり(清水寺の舞台から飛び降りるつもり)で、この邸宅に来たのだ。


何?清水寺とはなにかだと、だ~か~ら~、こまいことはどうでもいいのだ!!


今日、わしがこの邸宅へ殺される覚悟できたのは、エリューシオン教会の本当のトップであり、わしの教育係でもあった大聖女さまから裁きをうけるためなのだ。


半年前にピオニー商業国の第一王子との商談をうけたときになぜか大聖女さまがその場にいた。


わしはあの時思った。


おわった・・・・・と。


5年前に置手紙を置いて出ていかれてから、欲望のままにエリューシオン教会を動かしてきたがその罰をあたえるために姿を現したと思ったのだ。


さいわい、その場では何事もなくおわったが、それからはいつもおびえて暮らしていた。


いつ大聖女さまから呼び出しがかかるのだろうか。


どんな罰が下されるのだろうか。


そして気づいたのだ。


大聖女様はわし自らが足を運び裁きの場へ来ることを待っているのだと。


このままなにもないかもと思ったりもしたが、大聖女さまは神にも等しい存在。


とても無視することなどできない。


なのでこうして断頭台にやってきたつもりでこの邸宅に赴いたと言うわけだ。


たしか、聞いた話だと、最初にこの家の主人と面会しをしてその後に話をしていいと言われてから、メイドと話ができるシステムだと聞いている。


と言うか、大聖女様をメイド扱いするだなどとどんな傲慢な主人なのだ?



「ここか・・・・・」


わしは聞いていた邸宅を見上げてつぶやいた。


門が開けられ、玄関に通される。そして応接間で待つようにこの家のメイドに案内された。


「うう、この待っている間の緊張感といったら」


そう言っている間に扉があいた。


ビクッとしたが、大聖女様ではなかった。


とても若い、そう、少年のような若者が入ってきた。


何者だ??まさかこんな若造がこの家の主人でもあるまいに。


そう思っていると、目の前の少年はびっくりしたような表情で席につき、


「じゃあ、ノワール、こちらのお客様にお茶をお出しして」


なんと、この者がこの家の主人なのか!!


そう思っていると扉があき、あの大聖女さまがものすっごい笑顔で応接間にはいりお茶の準備にとりかかるではないか。


ところが、大聖女様がわしのほうを見ると一瞬スンとした表情をする。


わしはその一瞬を見逃さなかった。


あ~~~~~~やっっぱり、怒ってる~~~~~。


どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。


「あ、それじゃあ、僕はそろそろ用事があるので、大司教様、よかったら、こちらのノワールとお話でもしてください」


と言って応接間から出ようとする。


しかし、とても大聖女様と同じ空間にいて平静をたもてる自信がない。


なので、わしはこの主人らしき少年に、


「お、お待ちを、どうか、一緒にいてくださいませんか!!」


と言って引き留めにかかった。


その様子を「ふ~ん」と言った顔で大聖女様は見ている。


引き留められた主人らしき少年はびっくりした表情をしていたが、さいわいにして応接間から出るのをやめ、元の席に戻ってくれた。


気づくと、わしは全身汗をかいている。きっと顔色も悪いだろう。


そうしているうちに大聖女様が、


「それで?私に話があって来たんでしょう。ご主人さまから許可もでたし、お話したいことがあるならどうぞ」


わしは色々考えてきた言い訳が頭から消え去った。


そして自分でも思ってもみない行動をとったのだ。


「すんませっんしたーーーーーーーーー!!!」


気付けば、大声で土下座をしながら大聖女様に対して謝っていたのだ。


その様子をみていた主人らしき少年は、


「え?」


と驚いている。


しかしわしはそんなことにかかわっていられない。ひたすら土下座で謝る。


「すんませっんしたーーーー!!心を入れ替えて励みますので、どうか、どうかお許しをーー!!」


「どうか、どうか、」


とひたすら謝るわし。


そんなわしを哀れに思ってくださったのか、大聖女様が、


「もう謝るのはお止めなさいな。顔をあげて席に戻りなさい。あ、許したわけではありませんよ。ただご主人様を驚かさないように」


と冷静な声で言う。


わしはその声に最初は許してもらえたかと思ったが後半の言葉にさらに冷や汗をかいた。


「はい・・・」


わしは大聖女様のお言葉に黙って従うしかなかった。


「ご主人様がいるところだと、私が厳しく怒らないと思ったんでしょう。その通りですけど」


「あの、ノワール。よくわからないけど、この方、大司教様だよね。なんだかものすごく顔色も悪いし。穏便に。穏便にしてあげてもらえるかな」


と主人らしき少年が大聖女様に対して言ってくれたのだ。


わしはもう感動して涙がでそうなほど嬉しかった。


人の善意がこれほどうれしいものだとは。


ああ、創造神さま、聖処女神エリューシオンさま、わしが間違っておりました。これからは心を入れ替えて頑張ります。


この地獄のような空間から無事に帰ることができれば・・・・・・・・


わしの心の中の懺悔が聞こえているかのように大聖女様はわしのほうを見ながら、


「・・・承知いたしました。だれあろう、ご主人様の仰せでございます。こちらのものには穏便に済ませたいと思います」


と言い、少年のほうに向かってにっこり笑って


「申し訳ありませんが、ご主人様、少し席を外していただけますか?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


これは逆らっちゃダメなやつだと僕の勘がささやいてきたので、置いていかないでという目を向けてくる大司教様を横目に僕は応接間を出た。


僕は、ギルドへ行く準備をしながら応接間の様子をうかがっていると、汗だくではあるが顔色が少し良くなっている大司教様が応接間から出てきた。


その後、僕と大司教様が同時に外へ出た。


「君は命の恩人だ・・・・・君の一言で首の皮一枚つながったよ。まだエリューシオン教会の大司教を続けられそうだ。もし聖女関係のことで困ったことが起きたら必ずわしを頼ってくれ。必ず力になるから」


そう力強く手を握りしめお礼を言って帰っていった。


大司教様にここまで言わせるなんて、ノワールってよっぽど恐れられているのかな。


僕には甘いんだけど。



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