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魔石が欲しかっただけなのに  作者: かに
難易度はルナティック
33/39

誰か説明して!


「うおおおっ!」


「やあああっ!」


カキーン!


ズガーン!


夜明け前の森に怒号が響く。


僕はミニマップに遠隔監視魔法、結界魔法に土魔法、隠蔽魔法に探査魔法、あらゆる魔法を駆使して徹底した兵士の支援を行った。


戦闘が始まって、どのくらいたっただろうか。


僕は木陰に魔獣を誘い込み、人目のないところで一撃を加えた。



ギャウウウウン!



ふう、倒したのは何体目だろうか。


寝込みを襲われたにもかかわらず、不思議なくらいに兵士たちの士気が高い。そのこともあって、魔獣討伐は予想よりはマトモに進んでいた。


この調子なら、何とか・・・


「先輩、遅くなって申し訳ないッス」


モニターからヒョウの声が聞こえた。ヒョウとリンが合流したようだ。


しかし、さっきからリンが戦っている相手が気になる。リンが手を抜いている様子は見えない。だというのに、彼女とこれだけの時間、戦闘を続けられるとは。警戒するに値する相手だ。


「うおっと!」


僕はビーストウルフの一撃を、間一髪のところで躱した。


あまりにも同時並行的に魔法を使いすぎて、つい自分の周囲への警戒がおろそかになっていた。


「今、忙しいんだよっ!」



グシャッ!!!



「しまった」


目の前でビーストウルフが砕け散った。


イライラして、つい全力で殴ってしまった。あまりに高速の拳を叩き込んだせいで、ビーストウルフの体は砕け散っただけでなく、摩擦熱で蒸発し、跡形もなく消え去っていた。


僕は周囲を見回す。


・・・誰にも見られていない。


「あぶねー」


兵士たち奮戦もあり、ビーストウルフとの戦闘はどうにか有利に進んでいた。


「む?」


リンたちの様子を監視・・・いや、見守っているモニターに、紫色の触手が映りこむ。


・・・あ、この触手、どっかで見た奴だ。


ぬらぬらと光る触手は、いつ見ても気味が悪い。見ると、触手を出しているのは、さっきリンの魔法でビビッて脂汗をかいていた小男だ。


しかし、こいつはさっき仲間に殺されてたような?


死んだのに動くってことは、アンデットモンスター的な何かになったということだろうか。それとも、死体を操るネクロマンサー的な魔法があるのか?


自分で使うのはアレだけど、敵が使ってくることがあるなら把握しておく必要はありそうだ。


「先輩、こいつ『魔人』っスよ!」


ヒョウの声が、珍しく緊張している。


無理もない。彼女も触手にはトラウマがある・・・と聞いている。


「分かってるわ」


二人が怯んでいる隙に、紺色のフードの男がじりじりと下がっていく。


「それじゃ、またね。魔法使いのお嬢さんたち」


男は柱の影へと身を隠し、カメラの映像から消えた。といっても、リンたちからは消えたように見えただろうけど、遠隔監視魔法のミニマップ上には、男の居場所がしっかり光点として表示されている。


このまま追跡してやれば・・・


「クジキリ、無事か!」


少し離れた場所から、テイラーが僕に声をかけてきた。


「はいっ!無事です!」


僕は慌てて剣を構え直す。


「おめえの後ろは崖だぞ、下がりすぎんな!」


「はい、分かっています!」


くそー。この忙しいときに!!


「魔獣の残りはあと少しだ。だが、あと少しというときが一番危ない。油断して下手うつなよ?」


「先輩こそ、気を付けてください!」


「おう!」


テイラーがにやりと笑って見せる。僕も手を振って応える。


・・・って、後ろ、後ろ!


ガツッ!


テイラーの背後に小さな結界を出す。それと同時に、背後から迫ったビーストウルフの鋭い爪が結界に当たり、大きな音を立てた。


「っと!」


気配に気が付いたテイラーが身をよじる。間髪入れず、ビーストウルフが次の一撃を繰り出した。しかし、今度はテイラーが土壁を出して、たくみに攻撃を躱す。


「くそっ、俺としたことが」


・・・しっかりしてくれよ!


まったく手のかかる先輩だ・・・と、ひと息ついた瞬間のこと。


「あの子たちは大丈夫。シュゲン様を信じなさい」


リンの声が耳に入った。


・・・え、何の話?


「シュゲン様がおっしゃったでしょう?『手に余る相手を深追いするな。後は自分が倒す』と」


・・・僕、そんなこと言ったっけ?


「なんだって、新入り。何か言ったか?」


僕の独り言が聞こえたのか、テイラーが近づいて来ようとする。


来ないでくれ!


今、重要なところなんだから!


「何でもないです!!」


ビーストウルフを追いかけるふりをして、僕はテイラーから全力で離れる。そして、モニターの音声に意識を集中した。


「あの男、ゲートを意識的に使っていた。一筋縄ではいかない相手よ」


・・・なんと、そうだったのか。


あまりにこちらでの戦闘が忙しく、僕もそこまで気が付かなかった。そこそこ強い相手だろうとは思っていたけど、それが本当なら危険な敵かもしれない。


リンと戦っていた男を追尾するように、急いで環境探査装置の設定を変更した。


もしゲートを使える人物なら、マークしておく必要がある。ましてや、それがリンたちに敵対する者であるのなら、できるだけの情報を集めておきたい。


「わたしたちの相手はこいつよ。これを放置するわけにはいかない」


リンの言葉がモニターを通して流れてくる。


「でもッス、子供たちは・・・」


「安心なさい、ヒョウ。シュゲン様の『神の目』は全てをお見通しよ。あの者ごときが、隠しおおせると思っているの?」


「『神の目』・・・そういうことっスね!師匠マスターが見ているなら、大丈夫っス!」


視界の端に、二人が同時に「魔人」へと飛びかかるのが見えた。


・・・えーと


ちっとも事情が分からないんだけど。


・・・誰か説明して!


思わず周囲を見回す。



「やあーーっ!」


「くらええええっ!」


カキーン!


ガシャーン!



暗い森の中に喊声が響く。


そうだった。


今更だけど、魔獣相手に絶賛戦闘中なのだった。一人でいくつものタスクをこなしすぎて、何がメインのタスクなのか、もはや分からなくなりつつあるのだけど・・・


バシバシ!


僕は自分の顔を叩く。


改めて、状況を整理しよう。


ここでの魔獣との戦闘は、どうにかなりそうだ。残りの魔獣も少なくなり、皆の余裕もでてきた。僕が魔法的な支援はしなくても、勝利が見えるところまで来ている。


リンたちも、触手のおっさん相手なら負けはしないだろう。例え危なくなっても、リンなら怪我をする前に離脱するはずだ。ま、その可能性は、万が一にもないとは思うけど。


で、残る問題はリンの言っていた「子供たち」だ。


そもそも、彼女たちはこんな山奥で何をしていたのだろうか?


てっきり、火属性の魔獣を探しに行ったものだと思っていた、


ていうか、『神の目』って何だよ。そんな謎のスキル、僕は持ってないんだけど。


「うーん」


ドガッ!


飛び掛かってきたビーストウルフを、軽く小突いて吹き飛ばす。今度はちゃんと手加減した。ビーストウルフは僕から受けたダメージによろめき、そのまま兵士たちに取り囲まれた。


「おりゃー!」


「くらえー!」


ギャウウウン!!


魔獣の断末魔の声が聞こえる。


「・・・うん、分からん」


僕は考えるのをあきらめた。断片的にモニターを見ていただけなので、いまいちあちらの状況が理解できていない。こうなったら、直接現地に行って確認するほかないだろう。こちらの戦況も落ち着いてきたことだし、このあたりが潮時だ。


とにかく、子供を助けたらいいんだよね?


ひとまず、男を追ってみるか。


ここからそう遠くもないし、何とかなるだろう。



グサッ!


「キャウンキャウン!!」


最後に残った魔獣の腹に、こっそりと剣をぶっさしてやった。魔獣は足がもつれてその場にうずくまる


「弱ってきたぞ!」


「この機を逃すな!」


「ひゃっはーっ!!」


その場の全員が、威勢よく魔獣へと飛び掛かる。その中に、テイラーの姿があることも確認した。彼も無事のようだ。


・・・今しかない。


皆が魔獣をタコ殴りする間に、僕はひっそりと崖を飛び越え、戦場から姿を消した。


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